26
「ビッグスライムは本来無害なモンスターだ」
先日の作戦会議でそう教えてくれたのはジグラートさんだ。スライムが好む環境で稀に発生するも攻撃性が無く、討伐して得られるものは何もない、非常にタフなため放置されているのが常なのだそうな。発生した場所から動くことも無いし得られるものも無いため、沼地などに発生したらランドマーク的扱いになっているような、温厚? なモンスターらしい。
その巨体で通路を塞いでしまう様な狭い場所で発生した場合は、仕方なく討伐される。その場合物理攻撃はほぼ完全に無効化するため、エネルギー系のダメージソースを用意する必要がある。ダメージを受けるとそのダメージ分だけの子スライムを生み出し、その子スライムは酸性の攻撃をするアクティブモンスターなため、子スライムを排除しつつの作業となる。
電撃系が特に有効なため、電気系の範囲魔法で分裂した子スライムごと殲滅することが推奨されている。
説明を要約するとこんな事らしい。
手順通り全員が配置につくとジグラートさんが魔法を詠唱し始めた。大きな魔力がビッグスライムの頭上で渦巻き、みるみる大きくなって傘のように下水道の天井を覆った。
「ライトニングチャンバー」
ジグラートさんが力のある言葉を呟くと、雷の檻がビッグスライムを包み込んだ。
雷の嵐の中で身もだえするビッグスライムは体の至る所が沸き立ち水蒸気を拭き上げた。電子レンジでプリンを温めたらこんな感じになるんだろうか? そんなしょうもない事を考えているうちにビッグスライムの破裂する表面から沸き立つよう零れ落ちる小スライムそれも雷に貫かれて破裂していく。子スライムが沸くたびにビッグスライムが削れてじわじわ小さくなっていく。ビッグスライムが半分くらいの大きさになったところで雷の嵐が収まった。
「エンチャントウエポン・サンダー。マジックシールド・アシッド」
手筈通りに皆の背中に向かって支援魔法を飛ばす×14を2回もやるとゴリっと魔力が持っていかれた。残り3分の1位か。リメインスペル化して維持するのも慣れたものだが、×28ともなると結構重たいな、魔力が0になるまで5分も持たないだろう。魔法維持のスキルも上がるからもう数分余裕が出来るか? まぁ何時ものマイナス魔力コースか。
隣を見るとジグラートさんが真っ青な顔で蹲っていて、視線に気が付くと自嘲気味に笑って見せた。
「魔力切れになると流石にね」
あ、そうなんだ、私の場合だと魔力がマイナスになったら体にダメージが入っていくんだけど、魔力切れってなった事ないな? 死にかけ一歩手前までは行ったことあるけど。
「魔力って使い切ったらどうなるんです?」
「普通失神すると思うが?」
「魔力ってマイナスになったりしないんですか?」
「いや、マイナスになんかならないぞ」
ふむ~そうなんだ、種族的な違いなのかもしれないね。そんなのんびり雑談を交わす私たちを尻目にビッグスライムとの戦いは佳境を迎えていた。




