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「ふ~なかなかいい出来なんじゃないかな?」
ギルドホールの片隅でチクチクとマスクを縫っていた。
ギルドは討伐クエストを発行したものの集まりが悪かったそうだ、対象エリアが特殊過ぎる、なんせ下水道、生理的嫌悪感を催す汚染エリアだ。集まりはハッキリ言って悪い。
「騎士団に支援要請を出したら、衛兵隊に押し付けたそうだよ」
騎士団が領主の施設軍だとすると、衛兵隊は警察隊だ。戦う事よりも喧嘩の仲裁や物取りといった治安活動が主なお仕事だ。戦力としては物足りないけど……ん~まぁ誰も下水道なんか好き好んで入りたくないよな、毒エリアだし。弱い立場に押し付けられる悲しい現実だなぁ。
あまりやる気の無さそうな10人の衛兵の皆さんと作戦会議を昨日した。やっぱり問題は下水道という汚染毒の対策だった。私たちのパーティーは下水道に一ヶ月潜り続けたという実績があるため、対策の準備を担当することとなった。といっても、浄化の魔法と病気治療の魔法を使って見せただけだが。後マスクを人数分準備すれば十分という事になった。衛兵さんとかだと任務で動くから採寸とかも予定通り進んでその点は楽でいいね。そんなわけで人数分のマスクを縫い縫いしているわけである。
技能と言うのは不思議なものだ、ゲーム内でスキルと表記されている技能もあるが、リアルで出来る事もゲームの中で再現できる。私は簡単な縫物なら自分でやる方だ、一人暮らしの男の悲哀ともいうが。裾上げボタン付け、疫病が流行った時なんかはマスクを自分で縫って作ったりもした。それをゲームの中でやってみようと思ったのだが、やってみたら出来た。ノーラには裁縫スキルなんて無かったのにだ。そして縫い続けているうちに気が付けば裁縫技能が生えていた、スキルポイントは払っていない。
「リアルで出来る事はこちらでスキル認定されたとして、その逆は……?」
「そのリアルと言うのは精霊界と言う認識でよいのかな?」
私の独り言にちょいちょい合いの手をいれてくれるのは、図書館の偉い人事、ジグラートさんだ。
「あ、いえ、その何と言いますか」
「ああ、言えないのであればかまわない、忘れてくれ」
そう言ってジグラートさんは優雅にお茶を飲んでいる。なんでこの人ここに居るんだろう? まぁビッグスライム討伐に参加してくれるらしいからギルドに来るのはまぁ分かるとして、私が内職している机でお茶をしている意味が分からない。
「今日は、図書館のお仕事は大丈夫なんですか? ミーティングは終わりましたよ?(帰ってくれないかなぁ)」
「討伐依頼を受けてから待機扱いになってね、暇なんだ」
「そうなんですか~」
ちょっと集中力が切れちゃったのでお茶を飲んで一息つくことにした。
「この頃、羽ばたく鳥停の方で働いていないんだね」
「アルバイトをしなくても良い位の貯えができましたので」
「それは残念だ」
心底残念そうな顔は辞めてもらえますか。
「え、何々、その話し興味ある」
何でお前もずっと居るんだよ、この人はプレイヤーで参加表明をした稀有な人、サスタさん? 大柄でムキムキマッチョマン職業はバーサーカー、所属しているパーティーは別にあるので、たまたまタイミングがあっての参加らしい、スペシャルクエストのボーナスもあるしね。
「噂を聞いて羽ばたく鳥停に行ったんだけど、キャノーラさんは不定期だって言われてさ、ウエイトレスすがた見たかったなぁ」
「かなり凄かったぞ」
「もうウエイトレスはやらないかなぁ……」
アハハハと、乾いた愛想笑いをしつつ、この発言はセクハラで運営に報告したらギリ行けるんじゃないか? と思わなくもない、まぁやらないけど。
ちょいちょいとマスクを仕上げて、ジグラートさんに差し出す。
「ありがとう」
そう言って受け取るジグラートさんはマスクではなく私の手を取ってスリスリと手を撫でる。うわぁっとおぞけが走って私は手を引っ込めた。
クツクツと笑うジグラートさんと、俺のマスクまだー? 止まっているサスタさん。
なんだろう、めっちゃ居心地が悪い、二人とも早く帰ってくれないかなぁ。




