《恥ずか死ぬっっっ》
「死神、様…」
アルフィリアから小さく声が漏れた。
リヴルーフェは完全に諦め、自ら名乗る。
「うん。私、死神・リヴルーフェ」
アルフィリアはリヴルーフェのことを見て固まってしまった。蒼い瞳を満月のように丸くして。
リヴルーフェも驚くのは無理もないと理解していたため、何も言わず、アルフィリアが動き出すのを待った。
「……!!??!?!!?」
すると突然アルフィリアは顔をとてつもない勢いで紅潮させた。
そして勢いよく後ろを向く。
「リヴィ!!服!!!着て!!!!!!」
リヴルーフェは、そういえば今全裸だったな、と思い出した。
リヴルーフェはまず湯船からあがり、神の力で風を起こして一瞬にして髪、体を乾かした。
アルフィリアは見ていないし、見ていたとしても、もう神だということはバレてしまったのでリヴルーフェは遠慮なく風を吹かせた。
乾かすのと同時に、髪の色は藍に戻った。
服を着て、眼帯は今は必要ないのでポケットにしまう。
「着たよ」
「ほ、ほんとに……?」
「うん」
アルフィリアは恐る恐る振り返る。とても真っ赤な顔をしていた。
「その、ごめんなさい!!!」
アルフィリアはリヴルーフェに向かって勢いよく頭を下げた。
「え、なにが?」
「は、裸の女性をまじまじと見つめてしまって……」
リヴルーフェは驚いた。今まで頭を下げられることは沢山あった。
だが、そのほとんどは"死神様"という言葉と共に行われてきた。
(女性……か)
リヴルーフェはなぜか上がる口角を必死に戻そうとするができない。
自然と目尻も下がる。
「いいよ、そんくらい別に。頭上げて」
「いや、本当にごめんなさい。嫌な思いをさせて……」
リヴルーフェは考える。正確には感じた。
「嫌ではなかったよ」
「でも……」
申し訳なさそうに頭を上げないアルフィリアに痺れを切らしたリヴルーフェは、アルフィリアの顎に手を当てる。
そして、くいっ、と頭を上げさせた。俗に言う顎クイというやつである。
アルフィリアの顔は鼻先まで真っ赤になり、ラズベリーのような鮮やかな色になったが、顔が上がったことで自然と体も起き上がった。
アルフィリアが見たのは優しい微笑みを浮かべたリヴルーフェだった。
体を見られてとても嫌な思いをしているだろうと考えていたアルフィリアには予想外であり、その微笑みもアルフィリアの顔を紅潮させた理由である。
「"死神様"って呼ばないんだね」
「え、あ、確かに!?無礼を働いてしまい申し訳ありません、しにがみさ…」
"死神様"と言いかけた時、リヴルーフェの細長く綺麗な人差し指がアルフィリアの口元に触れた。
驚いているとリヴルーフェの顔はアルフィリアの目の前にあった。
まさしく世界最高峰の美しい顔の女性が至近距離に来たアルフィリアは驚き、照れ、混乱などの感情が渦巻き、訳のわからなくなっていた。
「そのまま、言わないで」
止まったままの自然の音の中で、リヴルーフェの囁く声が響く。
アルフィリアは目の前の美しい顔に、反射的に瞳と口をぎゅっと閉じた。
閉じた瞳と唇、そして赤くなりながらこちらを見上げる顔。
(……これって、キス待ち顔?)
もちろんそんな訳ではないし、リヴルーフェもそれを理解していた。が、アルフィリアの反応が面白かったので、今の本来の目的である神がなぜここにいるのかの説明は後にして彼で遊んでみることにした。
リヴルーフェはアルフィリアの唇に添えていた右手の人差し指と共に、中指、薬指、小指をするっ、と彼の左頬にすべらせるた。
そして、頰を撫でられる感覚に少し震えるアルフィリアに容赦なく追撃をする。空いていた親指で彼の唇を端から端までそっと撫でた。
するとアルフィリアの口がほんの少し開いた。震える口から小さく、ひゅーひゅー、と息が漏れていた。
混乱状態のアルフィリアは薄く、瞳を開けた。
その時リヴルーフェが見たものは、薄く開けた瞳、小さく開き落ち着きのない呼吸をする口、耳まで紅潮したアルフィリアだ。
世間知らずなリヴルーフェもなんとなく思ってしまった。
(この表情って、えっちなことしてる時のやつじゃね)
自分がこの表情にさせたのに、何か見てはいけないような気がしたリヴルーフェは、顔を横に背け、アルフィリアの顔から手を下ろした。
するとアルフィリアが顔を隠すように頭を覆って勢いよくしゃがみこむ。
小さく声が聞こえた。
「死ぬ………むり、綺麗すぎる……死神様に殺される………恥ずか死ぬっっっ」
(この人"恥ずか死ぬ"とか知ってるんだ………)
リヴルーフェは大層驚いた。




