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《死神、様……………》

リヴルーフェとエマが話していた頃、アルフィリアは自室で勉強をしていた。

アルフィリアは数ヶ月後に国立魔法学院の高等科の編入試験を受けることが先日決まった。


(小さい頃から本をたくさん読んでいたし、この試験の範囲なら五歳の頃には解けてるな。でも……)


アルフィリアはとても頭が良かった。幼い頃からの努力の結晶で、編入試験の内容の理解は余裕だった。復習もそこまで必要ではないほどに。

だが、ここ数週間は、より勉強に励んでいる。


(俺に、サージェリー伯爵家の未来を託してくれた、兄さんのため。できることは何でもやらないと…)


アルフィリアには兄がいた。正確には"先日まで"兄がいた。さらに正確に言うのなら今、兄はアルフィリアの"体の一部"となって存在してはいる。

アルフィリアは右手を胸に当て、静かに瞳を閉じる。


(この心臓を託してくれた、兄さんのため)


だが、勉強のしすぎで体を壊しては意味がない。体調管理も努力の内だ。

時計を見るともう少しで零時になる時間だった。

休憩にもちょうど良いので、温泉に入りに行くことに決め、アルフィリアは立ち上がった。


(この時間なら誰もいないだろうし、一人ゆっくり入れそうだな)


服をまとめて抱え、温泉に向かい始めた。




++++




アルフィリアは木々が夜風でざわめく道を進む。


(さっきの時間からして、後一分くらいで零時になるかな)


と、考えていると開けた場所が見えてきた。

同時に、人影が見えた。




++++




リヴルーフェは背後に気配を検知した。

今、この時間に人と会うのはまずかった。

まだ髪の色は藍色だがもう少しで、零時でマジリーノの髪染め"プレミアムシンデレラ"の効果が切れて金髪に戻ってしまう。

しかも、今のリヴルーフェは眼帯を付けていない。姿を見られた瞬間、正体がバレてしまう状態だった。


(瞬間移動とかできるけど、下手に人知を超えた力を使って誰かに見られたらやばい)


リヴルーフェは必死に考えた。

だが、後ろから声が聞こえてしまった。


「リヴィ…?」


リヴルーフェは後ろにいる人を声と"源"で判断する。アルフィリアだ。

リヴルーフェは一瞬迷ったが振り返ることにして、体を捻り始めた。

まだ、あと数分ぐらいなら時間があるだろうと。




その時、王国のすべての時計塔の、零時を告げる鐘が響いた。


リヴルーフェの髪の色が、振り返る反動で揺れる髪に呼応して移り変わる。

頭から毛先へ、夜空の藍が日の出の金に変わるように。


温泉の湯の色も、リヴルーフェを中心として、水の波紋と共に金が広がっていく。


「…………なに?」


リヴルーフェは諦めて、気だるげに返事をした。

アルフィリアは目を丸くして固まっている。

目の前には、金髪、白と黒のオッドアイ、目を疑うほど綺麗な顔の女性。

この姿が誰か知らないものはこの世にいない。犬や猫、庭の草花ですらその姿の前では無力になる。

オーラや覇気のどれにも形容できない絶対的な存在感がその存在を証明していた。




「死神、様……………」




アルフィリアから小さく声が漏れた。







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