《温泉》
リヴルーフェたちの食事が終わった頃には、星が満天の夜空が広がっていた。
それぞれが部屋に戻り、過ごしている。
これといってやることがなかったリヴルーフェは窓辺から夜空を見上げる。夕暮れ時の空と同じく"神の国"では見られないものに、少し違和感のようなものを感じた。
(でもまぁ、眩しい太陽がギラギラしてるより、こっちの方が好きだな…)
窓を開けて、夜風に当たる。涼しい風が部屋に吹き抜け、リヴルーフェの髪をゆらした。
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そのまま、三時間ほど過ごした。リヴルーフェにとって三時間はあっという間ですらないが、初めての場所にいたからか少し、ほんの少し三時間の時間の流れが感じられた。
部屋の時計は十一時過ぎを指している。
リヴルーフェは一度廊下に出てみることにした。
「あ、リヴィさん!」
「貴女は…エマだっけ?」
「はい、エマです!リヴィさん、お風呂ってもう入りました?」
リヴルーフェは食事の時と同じく、人間は体を洗わないといけないことを思い出した。
そんな面倒くさいことできればしたくないし、神は体を洗わなくても臭ってきたりしないので大丈夫だが、断って不自然に見えるのはまずかった。
リヴルーフェが考えていると、エマは再び話し始めた。
「このお屋敷から少し進んだところに、鉱山から湧き出た温泉があるんです!」
「温泉」
「はい!数代前のサージェリー伯爵様が発見されたようで、そこから大規模な工事をして、特殊な魔法石で温泉を作られたんです」
「特殊な魔法石?」
「触れた人の髪の色に色が変わる魔法石です。旦那様や奥様をご訪問なされる貴族の方はお髪を整えていらっしゃって、とても綺麗な色になるので人気なんですよ!今なら多分旦那様たちも、入り終わってると思うので、よかったら行ってみてくださいね!」
リヴルーフェが元の姿に戻る零時に、誰もいない、皆、入り終わっていて誰か訪ねてくる可能性が自室より低い温泉はちょうどよかった。
先ほどの夕食の後、リヴルーフェが何も持っていない事を見かねたアメリアがメイドの寝間着や下着などをひとしきりをくれた。
それらはリヴルーフェにとって必要ないものである。服なんていくらでも作れてしまう。
だが、初めて人からの優しさというものを少し感じることができて嬉しかったので、せっかくなのでもらうことにした。
着替えを持ってリヴルーフェは温泉へ向かった。
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夜空に点々と光る星がリヴルーフェの上で輝いていた。
屋敷の裏の林の小道を歩く。"神の国"の最果ての森は、リヴルーフェが仕事のため飛び回らないと風は起きないので、自然と夜風が吹いて木がざわめいているのは不思議な感覚だった。
数分歩いて目的の温泉まで着いた。
色が変わると噂の温泉は、誰も入っていないからか普通の色、透明だった。湯気濃くが立ち上っていて熱いことが見てとれる。
リヴルーフェは服を脱いで温泉の脇に置いた。
(顔を洗うのに邪魔だし、眼帯も置いていこう)
マジリーノからの眼帯も脇に置いた。眼帯に隠されていたジルコンのような白い左眼があらわになった。
リヴルーフェは足の先を湯につけた。
その瞬間、水の波紋と共に湯に光りが広がり、ベニトアイトのような色に遷移した。
リヴルーフェは驚かなかった。
(予想通り。でも、綺麗だな)
足から、ふくらはぎ、太もも、と体を湯に入れていく。
湯に付いた髪は、同じ色の湯に溶け込んで、どこまでが髪か分からなくなっていた。
湯の部分まで全てが繋がった長い髪のような姿とリヴルーフェの整った顔立ちと体型、全てが美しいその瞬間には自然の音すら足を止めた。
ちょうど満月の月は静かに佇んでいるが、リヴルーフェから目が離せないように見えた。
その時、リヴルーフェの背後の小道を歩く足音が聞こえた。




