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《そういえば何歳なの?》

リヴルーフェとアルフィリアは屋敷を見て回り、再び客間に戻ってきた。

二人が戻ってきた頃にはラルドもタリスもいなくなっていた。各々の部屋に戻ったようだ。

メイドのエマは残っており、紅茶を用意して待っていた。紅茶を机に置いたエマは部屋を後にする。

紅茶の香りが漂う室内でリヴルーフェとアルフィリアは二人きりになった。

リヴルーフェは紅茶のカップを手に取り、口をつける。

先に口火を切ったのはアルフィリアであった。


「そういえば、リヴィって何歳なの?」

「!?」


リヴルーフェは飲んでいた紅茶を吐き出しそうになったのを必死で堪えた。

リヴルーフェは年齢を素直に言うわけにはいかない。"お忍び"をしているのだ。そして、そもそもリヴルーフェは自分が誕生してからどのくらい経ったかなんて覚えていなかった。

リヴルーフェは考える。体の見た目は十代後半にしているので、背を高めにしていることも考慮して十八くらいにするべきだろうか、など。


「あ、女性に年齢を聞くのは失礼だったね、ごめん」


リヴルーフェは難を逃れたようだった。

アルフィリアは紅茶を一口飲んだ。そして顔を上げ、少年の無邪気さの入り混じる笑顔をリヴルーフェに向けた。


「俺は十五だよ」

「十五か…若いね」

「リヴィだって若いでしょ?」

「……まあ、そうだね」

「?」


リヴルーフェは言葉が詰まる。神であるから人間から見たら絶対に若くない。しかもその他の神から見ても最古の神なので決して若くない。なんだか気まずかった。




++++




リヴルーフェはその後、アルフィリアとは別れて庭で洗濯物を乾しているサージェリー伯爵家のメイド長の元へ向かった。

メイド長の名はアメリア。リヴルーフェはアメリアに使用人の仕事を教わりにきた。


「あの、アメリア…さん」


リヴルーフェが話しかけると、アメリアは穏やかな笑みを向けた。


「初めまして、貴女がリヴィさんね。私はメイド長のアメリアよ」

「初めまして」


ラルドとタリスのような初老のメイドであった。


「聞いたわ〜、貴女坊っちゃまの恋人さんなのね」

「違う」

「あら、違うの?」

「違う」


リヴルーフェはこの類のやり取りを今日何回見ただろうと思ったが、よく考えたら今がまだ三回目であることに気づいた。

リヴルーフェはこれ以上、話が面倒くさくならないうちに本題を切り出すことにした。


「私、護衛兼、使用人としてさっき雇われたんだけど何をすればいいの?」

「ああ、それね。貴女の仕事は特にないわよ」

「え、そうなの」


リヴルーフェは思わず目を見開いた。

同時に、雇われて仕事をするというのに興味があったので少しがっかりした。


「この国の法律でね、決まっているのよ。常に護衛を雇っていいのは侯爵家以上から、と」

「なるほど。つまり私は使用人という体で雇われた護衛だと」

「そういうことよ。伯爵以下はみんなそんな感じで護衛を雇っているの。だから、貴女は使用人の仕事はしなくていいわ」


リヴルーフェはがっかりしたが、その分面倒くさい事が一つ消えたということにして納得した。


「だけどいざという時、旦那様と奥様、坊っちゃまのことをお願いね」

「…メイドたちは、守らないの?」


アメリアは目を見開いてリヴルーフェを見る。

だが、すぐに落ち着いた笑顔で、干してある布団の方へ向き直した。


「…私たちはいいのよ。貴女の負担になるもの」

「私、理論的に勝てないものないけど」

「まあ、ずいぶん自信があるのね。なら、私達は二の次で守ってちょうだい」


リヴルーフェは、『貴女達も私が守ってあげる』と伝えたつもりだったが言葉が足りず伝わらなかった。

言い直すのも面倒くさいし、どうしようと思っているとアメリアは次の仕事場所に行ってしまったようだった。

仕方がないのでリヴルーフェは先程案内された自分の部屋に行こうと決めた。




++++




"ルーティリアン王国西部・ナトリート伯爵領某所"




「"鉛のルビー"は居るか」




夕方の人気のない路地に男の声が響く。

その声に呼応し、路地の物陰から半身だけ、フードを被った人の後ろ姿が現れた。その人影は予想より遥かに小さく、声を発した者は戸惑いを隠せなかった。




「______ナトリート伯爵じゃな?」




達観した老人のような口調には似合わない、少女の声がナトリートの元に届いた。

今にも路地の奥に消え、いなくなりそうな人影に、ナトリートは慌てて言った。




「報酬は用意した。金貨五枚だ。私に力を貸せ、"鉛のルビー"」




ナトリートの言葉に、人影もとい、"鉛のルビー"は微笑を浮かべた。

そして、くるっと回りながらフードを脱ぎ、ようやく全身を露わにした。

肩までの癖毛の髪をハーフツインにしている小柄な少女であった。

キツいピンクの髪は毛先に行くまでに毒々しい紫色に変わっている。

瞳の色は綺麗な若葉の色だが、毒草の色ともとれた。




「…要件は、なんじゃ?」




"鉛のルビー"は薄く目を細め、軽く口角を上げたあやしい笑みを浮かべて言った。

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