《死神様、使用人となる》
いろいろ作品を読んでみたら、三人称視点の方が読みやすいので、今までリヴ様一人称視点で書いていましたが、三人称視点にしようと思います。
タリスと、ラルドは目の前で仲睦まじく話しているリヴルーフェとアルフィリアを見て、こそこそと話していた。
「ねぇ、あなた。私やっぱりこの二人が恋人じゃないとか信じられないのだけれど」
「私もそう思う。アルフィリアがここまで他人に心を開いているのは初めて見た」
「そうね、なんせあの子は数週間前まで…」
タリスが全て言い終わる前にアルフィリアが切り出した。
「失礼しました。では本題です。リヴィは今、寝泊まりできる場所を探しています。そして、凶暴な魔獣を傷つけず追い払うことができるほどの実力者であります」
「まあ!魔獣を!?すごいのね」
先ほどまでとは打って変わって冷静な口ぶりで話を進めるアルフィリアと、応じるタリスをリヴルーフェとラルドは静かに聞いていた。
華奢で青年と少年の狭間の様な見た目のアルフィリアからは、その見た目とは少し不釣り合いな頭がいい人特有の言葉の重圧さを感じられた。
リヴルーフェは"思ったより大人なんかな"と考えアルフィリアは十七歳ぐらいではないかと予想を立てる。
「__、____。なので、こちらからは寝泊まりできる場所をリヴィに提供します。その代わり彼女にはサージェリー伯爵家の護衛兼、使用人として働いてもらう。というのはどうでしょうか?」
しばしの沈黙が訪れる。
その後、春の穏やかな風が吹いてきた様に、優しい声でラルドが口火を切った。
「…うむ。とても良い提案だ、アルフィリア。成長したな」
「ありがとうございます」
父親に褒められたアルフィリアの口角は少し上がった。その反応は少年の無邪気さを感じさせる。
リヴルーフェはアルフィリアの先ほどの大人の様な口ぶりと今の少年の様な反応を比べて再び彼の年齢を予想し始めた。十四くらいではないかと予想を立てる。
ラルドはそんなリヴルーフェに向き合い、口を開いた。
「リヴィ殿。貴女が大丈夫ならば私達は貴女を歓迎する。どうかね?」
リヴルーフェは迷いなく答えた。
「じゃあ、よろしく」
斯くして、最古の神、死神様を使用人にした家が誕生した。
++++
アルフィリアがリヴルーフェをつれて屋敷内を歩く。
屋敷内の所々にいるメイドや執事は皆、感慨深そうな顔をして二人を眺めていた。おそらく家のお坊ちゃまに初めての恋人ができたと勘違いしているのであろう。祝福ムードが広がっていた。
アルフィリアはそれに気づいていたが、どうせ訂正しても信じてもらえず、質問攻めされるので素通りしていった。
一方のリヴルーフェは、周りの視線がどうとかいうのを気にするのは面倒なので何も考えていない。
「ここが今日からリヴィの部屋になるところ!」
リヴルーフェは屋敷の二階奥の角部屋へ案内された。
「普通の使用人は使用人用の別館があるんだけど、リヴィには護衛もやってもらうから、本館だし少しだけいい部屋なんだ」
部屋には、割と大きめのふかふかなベッド。そして机、ソファまであり、壁や天井の所々には宝石が埋め込まれていた。
宝石は窓からの光をキラキラと反射していたが、チカチカするわけでもなく、華美でもなかった。調和が取れていると言える。
使用人の部屋、というのはとても質素なものを考えていたリヴルーフェは少し驚いた。
そんなリヴルーフェの横顔をアルフィリアは穏やかな眼差しで見つめる。リヴルーフェはその眼差しに慈愛のような、尊敬のような、よく分からないものを感じた。
視線を感じたリヴルーフェはアルフィリアに顔を向けた。
「…なに?そんなに見て」
「ううん、なんでもないよ」
アルフィリアは命の恩人に激しく脈打つ心臓に従った。無意識に恍惚の表情となる。
細められた目には、熱く、蕩けそうな感情が込められていた。
(これからリヴィと暮らせるんだ……!)
喜びが滲み出た顔のアルフィリアは、ハッとして次の場所の案内を始めた。
++++
サージェリー伯爵邸は至る所に宝石が散りばめられている。宝石ではなく正しくは魔法晶石と呼ばれる物、通称魔石。
だが、どれも先ほどのリヴルーフェの部屋と同様、華美ではなく調和を取っていた。
多くの魔石があるのはサージェリー伯爵の領地は代々鉱山を所有し、それを財産としている貴族だからだ。サージェリー伯爵はルーティリアン王国国内の鉱山の六割を占めている。
サージェリー伯爵を、ルーティリアンの鉱山事情をちゃんと知っていれば宝石の多さは何も疑問には思わない事だ。
「ここ、やたらと宝石が多いね」
だが、リヴルーフェは元引きこもりの世間知らず働き詰め死神であった。そんなことを知る由もない。
アルフィリアは何も知らないと言う口ぶりのリヴルーフェに少し驚いたが笑顔で答える。
「サージェリー伯爵は国内の鉱山の六割を所有してるからね。国内で宝石とか鉱石といったらここなんだよ」
「ふ〜ん、綺麗だね」
「興味ある?石に!!」
アルフィリアの突然の大きめの声にリヴルーフェは肩をビクッと跳ねた。
そんなのお構い無しにアルフィリアは続けた。
「ここに付いてるのは、エメラルドっていって、インクルージョンが起きやすいからここまで綺麗なのはものすごく貴重で、あとエメラルドの元の物質にクロムか鉄かマンガンのどれが混ざるかで色が変わってね、これはクロムが混ざって鮮やかな緑色になってて、とある東の国では『翠玉』とも呼ばれていて……」
「ちょ、ストップストップ…。」
リヴルーフェはアルフィリアを制止する。
何を隠そうアルフィリアは石オタクであった。石をこれでもかと言うほど愛している。石についていくらでも語れるのだ。
「あ、ごめん…つい…。」
しおらしくなったアルフィリアにリヴルーフェはいつもと変わらぬ様子で口を開いた。
「石、好きなの?」
「…うん!」
捲し立ててしまったのを気にされていないと分かったアルフィリアは、ぱあっと笑顔になった。
太陽のように眩しくて、無邪気な笑みはとても絵になる物だった。
その笑顔にリヴルーフェは何かを感じた。具体的に言葉に表すのは難しい、何か。
(私、疲れてるのかな。神なのに?)
リヴルーフェの、形だけのはずの胸の奥が鼓動した。
初めての感覚に戸惑ったリヴルーフェをアルフィリアは心配そうに見つめる。
「…リヴィ?大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫」
リヴルーフェは戸惑いで少し歪んだ表情筋を元に戻す。
リヴルーフェはやはりアルフィリアは変な人だと再び認識した。
この時、リヴルーフェとアルフィリアは同じ鼓動を感じた事を、二人はまだ知らない。




