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ビューティー  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
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3/6

3

馴れてしまえば、フレンチ・ブルドッグ

は人懐っこくて飼いやすい犬だ。


好奇心旺盛で遊び好き。大きな黒い瞳を

濡れた様に輝かせ、ハアハア言ってる姿

には癒される。


伯母さんの躾が良かったので、トイレに行

きたい時は、犬専用の水洗トイレで勝手に

用を足してくれる。


夜になるとリビングの隅にある小さな犬

小屋に自分から入って寝てくれる。


知らない人が来た時以外は、あまり無駄

吠えもしない。


もっとも、吠えてもそれほど声が響かない

ので、ほとんど近所迷惑にもならない。


ただ遺伝的に闘犬の性質を持っている為か

唸り声だけは獰猛だったが…。



◇◇



ビューティーと仲良くなると、紗英は結婚

を視野に入れ、僕の家に越して来た。


同棲した方が家賃もかからないし、将来に

向けた貯蓄も出来る。


この家の相続税や固定資産税は父が払って

くれるので、僕等は光熱費と犬の餌代を含

めた食費等を負担するだけでよかった。


僕たちには、喫茶店を開業するという共通

の夢があった。


紗英はこの家とビューティーをとても気に

入ってくれた様だった。



二人と一匹の楽しい生活が始まった。


休みの日などはビューティーを散歩に連れ

出した。


これまで、あまり外出したことがなかった

ビューティーは、警戒しながらも興味津々

で外の世界を眺めてた。


困ったのは、他の犬に遭遇した時だ。


例の獰猛な唸り声を上げ、他の犬と睨み合

うと、なだめて引き離すのが大変だった。


ビューティーは小柄で、体重は十二キロ程

しかないが、筋肉質でガッチリとした体格

をしている。とても力が強いので、僕等は

なるべくリードを短く持ってビューティー

をコントロールしやすくした。


散歩が終わると、庭にある犬用の洗い場で

ビューティーの体を丁寧に洗ってあげる。


彼は気持ち良さそうに、


「バウ、ワウ!」


と吠えた。



とても幸せな生活だったが、ただ一つの

難点は、伯母さんが生前に使っていた衣

装室に入ろうとすると、ビューティーが

吠え立てて中に入れないことだった。


だから僕等は、伯母さんの衣服だけは整理

出来ずにいた。


「あの衣装室には、きっと伯母さんの匂い

が染み付いてるのよ。だからビューティー

はあの部屋に誰も入れたくないの」


と紗英は呟いた。

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