2
青瓦付きの白塀に囲まれた伯母さんの家
は都内の住宅地にあった。
豪邸と言う訳ではないが、和風モダンの
外観で庭もわりと広い。
建物自体は古かったが、伯母夫婦がメンテ
ナンスを怠らず、近年大規模なリフォーム
を行なったせいで新築の様に見えた。
アラフォーになってもアパート暮らしだっ
た僕が叔母さんの家に引っ越すと、紗英は
物凄く喜んだ。
彼女は僕の十歳年下の恋人で、今年二十七
歳。転職する前の職場で知り合った。
でも厄介だったのは、あのフレンチ・ブル
ドッグだ。
◇◇
紗英を初めてこの家に連れて来た時なんか
ビューティーが吠えまくって大変だった。
元もと伯母さんが家犬として育てたので、
あまり社交性が身に付かなかったのかも
知れない。
僕もこれまで年に数回しかこの犬に会った
ことがなかったので、この家で再び暮らし
始めた当初は、馴れるまでが大変だった。
臆病で人懐っこい面はあるのだが、知らな
い人間が来ると煩く吠え立てる。
紗英は怖がって、玄関に立ち尽くしてた。
そういう時は、芝生の庭に出して遊ばせて
あげるしかない。
彼女はその日の訪問を以前から楽しみにし
ていたのだが、犬を恐れてあまり寛げない
様子だった。
まったく厄介な犬だ。
ある時などはリビングでわざとオシッコを
漏らし、僕と紗英を困らせたことがある。
「まったくもう、せっかく良い雰囲気だっ
たのに!」
僕は毒づきながら、リビングの床を雑巾掛
けしたものだ。
一時は里親に出すことも真剣に考えた。
でも伯母さんの顔が浮かんで来て止めた。
紗英は根気よく、餌やりの段階から徐々に
ビューティーを馴らして行った。
四〜五回目の訪問で、ビューティーはよう
やく彼女に気を許した様だった。
その日、紗英がソファーに寝そべって雑誌
を読んでいると、ビューティーがいつの間
にか、彼女の足元にちょこんと身を寄せて
眠っていたのだ。もっとも、恥ずかしそう
に後ろ向きだったが…。
「うわー、このワンちゃんやっぱ可愛い」
紗英が嬉しそうにスマホで写真を撮って
いるのを見て、僕は内心ホッとした。




