MPKとの遭遇
俺たちが街の外―――『コアード平原』に出て、初の戦闘は白桃にやって貰った。
その技量を見て、俺もしっかり役に立たないとな、と俺の倒す獲物を探そうと辺りを見たとき―――
「―――ん? なんだあれ……」
ズダダダダダダ……!
少し遠くから、様々なモンスターの大群を引き連れ、こちらに向かってくる1人の男がいた。
兎、狼、石、蛙……が十匹、二十匹と。
総勢五十体程度は居るな……一体何が目的なんだ?引き連れている人物は笑っているようにも見えるが……どっちにしろ、あんなものに巻き込まれたらタダじゃ置かなさそうだ。
「ちょ!?カガミ!あれトレインだよ!」
「トレイン…?……列車……運ぶ……モンスターを引き連れて、え~っと……そうだ、PKをするって事か?」
「そう!だから早く逃げよう!」
トレイン……確かに、今もこちらに向かってきて、モンスターの大群を引き付けている姿は見方によっては列車……要するにトレインをしているようにも見える。
PKとやらはこれまたチュートリアルで学んだ。
読んで字の如くプレイヤーキル―――要するに人殺しだ。
今回の場合は、『モンスター』による間接的な『プレイヤー』『キル』———MPKだと言えるだろう。
……ゲーム内であるといえ、人殺しをする意味が分からない……若いって凄いな、血気盛んだ。
まあ勿論そんなことはこの世界でも、この世界の法律によって裁かれる。
流石に現実では死なないというのに、それに現実の法律を用いるのは無理があるしな。
行き過ぎた行為は現実でも裁かれるらしいが、今の生活は気に入っているし、態々それを壊してまで豚箱に入るつもりも無い。
閑話休題。
それは兎も角、そのトレインをした男は、白桃が慌てた声で発言をしていた時にはもう目前まで来ていた。恐らくかなりのステータスポイントを移動速度……AGIに振っていることだろう。
そして、男が目前まで来ているという事は、モンスターもこちらまで来ているという事だ。
男がこちらに向かって一言。
「頑張れ~!」
……何なんだこいつは。
煽る様な顔と口調で、そうこちらに言い放った。そして何かしらの―——固有スキルと思われる詠唱をした直後、走る速度が格段に上がり、俺たちの後ろを突き抜けていった。
それに白桃が苦情を言う様な声を上げる。
「むぐ……ウザイ……!」
「俺もそれには同意見だ。それは兎も角、出来るだけ抗わないとだな……」
「確かに……私たちがここで逃げたらあの人と同じことになっちゃうだろうし……」
俺は胸中で再び同意の言葉を挙げる。
その通り、俺たちが———既にモンスターの標的にされた俺たちが、この大軍を引き連れて逃げたとしたら、それは―——癪ではあるが―——最早私たちの責任となるだろう。
なぜなら俺たちが被害者だという証拠がないのだから。もしもあちらが全否定で構えたら、それ以上はどうしようもない。
それに、こんな些細な事ではGM———ゲームマスターは対処してはくれないだろう。まああくまでそれは恐らく、の話ではあるが本当に反応してくれない可能性があるので、そんなリスクは背負うつもりも、背負うまでの理由もない。
―――その刹那、一番先頭に居たモンスターが威嚇の声を上げる。……それを開戦の合図と言わんばかりに―——




