―ええええええええええええ!!!
――どこ…だ…
闇の中にうつ伏せに横たわるポルターは意識が朦朧として動くことができなかった。
やがて人の声が聴こえてきた。
「……はあ、はあ…よくもやってくれたな…はあ…はあ…大した蛮勇だったが…お姫様のお守りは…地獄でやれ…」
―これも…記憶…?
重いものを引きずるような足音が遠ざかり、雨が木の葉を打つ音だけが世界を支配した。
意識が途切れ、再び人の声が聴こえた。
「酷えなこりゃ…おい、あんた!まだ生きてんのか?待ってろ、薬を…」
ポルターの視界に光が戻った。目の前にハンターらしき出で立ちの中年の男が覗き混んでいる。
―ああ、そうだったっけ…
「済まんな、手持ちの薬じゃ助けられん。ん…?何て言った…?!」
「…手紙を…姫様に渡す…」
「姫…?よ、よし!任せろ。どこの姫様かは知らんが必ず叶えてやるからな」
ポルターは胸当てを外そうと弱々しく動くがうまくいかない。
「………鎧…調べ、て………頼む―――」
意識が途切れた刹那、白い空間に居た。
目の前には天使様が浮いている。
「すみません、天使様。これはどういう状況なのでしょうか?」
ポルターはいつものように現世には戻らない違和感と、悲しい顔をして佇む天使様の様子から絶望のようなものが襲ってきた。
「俺は、何か間違えたのでしょうか?」
『いいえ。あなたはやり遂げたのです』
「あの、これで終わりなのですか?」
『いいえ』
ポルターは、わけがわからないと言った顔で天使様を見つめて先を促す。
『主よ、お赦しください』
「はん?」
途端に風景が出現した。どこかの貴賓室…
「ここは、王太子の私室……?」
「好きなところにお掛けなさい」
「は?」
ポルターが振り返ると、一目で高貴な御方と分かる贅を凝らした紫のドレスを身に着けた貴婦人が立っていた。
「えっと、あの…」
平民出身であろうポルターはどうして良いか分からず、立ち尽くした。
『不敬ですよ』
ピシャリという音と共に小さな雷がポルターを咄嗟に跪かせた。
「痛たたっっ!…天使様、ちょっと厳し過ぎません?」
「天使様はもう止めにしましょう、うふふ」
「え………?まさか、あなた様が天使様?」
「はい。そして、あなたは…今はポルターと呼んで構いませんか?」
その名を知る者など天使様以外にはいない。
「ちょ、ちょっとお!天使様、悪戯が過ぎませんか?」
「まだ、信じてもらえていないようですね。天使は私の偽りの姿、そして私はかつてこの国で王妃と呼ばれていた者です」
人間らしい不敵な笑みを携えた王妃の告白にポルターは腰を抜かした。
「!?………………………ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
続




