戮力協心
ポルターは作戦を練る4人を嫌そうに見ていた。最初は慎重だったフィルも、案まで出し始めて陥落、モエは作戦の要と持ち上げられ、ハーブの要求に次第に目を輝かせながら、応えようとやる気になっている。
「あー、もう。こうなったら今夜のうちに俺が番いを仕留めに行こうかな」
ただ、聞く限りリスクはともかく、罠はないのだ。
四人は、メスが狩りに出掛けるのを待ち、フィルとハーブが高台から挑発、モエとリーズは巣を大きく迂回して森の風上から魔獣避けの香を焚き離脱、その後リーズは付近でメスを警戒、モエが戦場から退避したら仕留めにかかるという作戦を立てた。
「モエは、香で鼻を潰し、オスと幼体を巣から逃さなければ、上出来だ」
「大丈夫。任せて」
「俺が先に出て強毒を塗ったジャベリンを食らわせ、混乱させたところでフィルが乱入し、2人で前肢の急所を突く。フィル、いいか?」
「ああ、そこまでしたら、ささっと撤退だよな」
「メスが戻ってきても、即撤退だからね」
皆がチームワークを信じて高揚している。
滾るというやつだが、唯一滾らないポルターは複雑な表情で見守った。
「うまくいくかどうかは運次第なんだよなあ。だからって俺が始末したら、プライドの高いハーブは納得しないだろうから、まあ…とりあえずやらせるか」
ポルターは、ハンターの武功に興味などないから冷めてはいるものの、実際のところやらせてしまった方が、フィルを護りやすいという結論を出した。いざとなればポルターが、急所を突けば済む話なのだ。
「天使様、方針は決まりました。ただ、万一使命に失敗したらどうなるかをお教えくださいませんかねえ?」
ポルターは、明らかに伝え忘れだろうと、大声で呼びかけたが、返事はない。
「ダメか。知ったら知ったで手抜きするとでも思われているのかな」
翌朝、フィルとリーズが黒地竜の監視と周辺の下見に出掛け、キャンプで薬の仕込みをするモエをハーブが護衛することになった。
「実質4人バラバラか。こいつらなんだかんだ優秀だから調査で死ぬようなことはないだろうし、今日はハーブを見張ってみるか」
しかし、ポルターのアテはまた外れた。ハーブは丹念に森との境を歩き、おかしな点は全くなかった。午後になってフィルとリーズが戻り地形についてやりとりをしていたが、作戦に支障はないようで、こちらの疑いも空振りに終わった。
「できた。準備万全」
モエの調合が終わったようだ。リーズとフィルは手頃な木を削ったジャベリンを数本仕上げ尖端に毒を染み込ませた。
「食い付かせるだけなら十分だな」
「危ないから鞘を作って」
モエが言うと、フィルが頷き、すぐに動いた。
「編めそうな草を取ってくる」
「じゃあアタシはまた、水汲みに行く」
「一緒に行こうか?」
「モエと行く。ついでに水浴びするから男はここで編み物よろしく」
「へいへい」
ハーブが戻って作業に加わり、何事もなく時間が進み、夕陽を背に川から戻ってくる二人が見えた。
「今日も大漁だよ」
鞘を編むフィルとハーブに、リーズが自信たっぷりに魚を見せた。
「モエはバター焼きで食べたい」
「いいね、こっちももう終わるから始めてくれ」
ハーブのゴーサインでモエはテキパキと魚を捌き、リーズは適当な香草を摘みにいく。
「何も知らなきゃ理想のパーティだな」
ポルターは鞘を括りつけるフィルとハーブをぼんやり眺めながら、明日の立ち回りを考えている。
「バター焼き。焼けた」
「よし、乾杯するぞ」
「これが別れの乾杯にならないように」
ポルターは、軽口を叩いて反射的に電撃に身構えたが、何も起きなかった。
その後、4人は作戦の最終確認をして就寝した。ハーブが昼間に念入りに魔獣避けの薬を撒いたらしく、今夜は見張りもそこそこに眠りについた。
「まあ、見張りくらい任せてくれ」
やると決まった以上、ポルターも作戦の一員なのだ。
続




