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ポルター 死亡フラグと騒霊騎士  作者: めざしと豚汁
使命5.『こっちが近道なんだぜ』

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捨全救己

ポルターの意識が戻ってくると、木樵が二人をあやしていた。


「心配ないよ、ミルトさんは、友達だ。おじさんがうまく話してやるから、一緒に帰ろうね」


どうやら兄妹と同じ村の木樵らしい。やがて兄妹は泣きやんで、木樵が妹を背負い、兄の手を引いた。


広場から声が聴こえる。木樵が降りてこないから3人が戻ってきたのだろう。


「おい、どこ行って…なんで子供連れてんだよ?」


「迷子だよ。ミルトさんちの子だ」


木樵仲間の1人を見て妹が指をさす。


「あ、ビチョビチョおじさん!」


「おお、嬢ちゃん。久しぶりだな」


「ビチョビチョってなんだよ」


「釣り大会で川にはまったのを嬢ちゃんに見られたんだよ」


一同が思い出して笑った。

ビチョビチョおじさんは兄の頭を撫でて、


「坊主も災難だったな。あっちは道が嵐で変わっちまったから無理もねえよ」


「ボクが妹の言う事を聞いて戻れば良かったんだ…」


「それだけ反省してんなら立派なもんだ。とにかく、よく頑張ったな」


また泣き出しそうな兄を見ておじさんはガハハと笑い、元気出せと励ました。


「それにしても、あの音はなんだったのか」


二人を助けた木樵が呟く。


「音?よく分かんねえが、急いで送ってやろうぜ」


「そうだな。きっと山の神様だ、ありがとうございます」


木樵は、山に向かって頭を下げた。


「行くぞ、坊主もおぶってやるよ」


「…いい」


「子供が遠慮すんなよ。さあさあ」


おじさんの押しに負けた兄は従い、一同は無事村に戻り、家族は再会を果たした。


「怪異を意外と簡単に受け入れたものだな。天使様もお赦しになっているようだし、これからは臆さず力を使うか」


ポルターは、現世との繋がりを見出して少し浮かれていた。山の神様ではないが、木樵の感謝は紛れもなく自分に向けられたものだったからだ。


「それで、ここは何処なんだ?」


村の外へ続く道はあるが、それがどこに向かうのかなどポルターに知りようがない。

山を駆け上がり高台から四方を眺めたが、山が連なり見渡せない。そうこうしているうちに村は寝静まり、村人から情報も得られなかったため、道なりに街道を探そうと考えたが、思い直して村に戻った。


「ダメだ。下手に動くと国中を彷徨かねないぞ…」


巌公の到着は明日だ。王太子との対決を見逃すわけにはいかないのに、王都に戻る手掛かりがないポルターは、天に向かって神頼みを始めた。


「天使様、どうかお助けを!」


しかし、ポルターに聴こえたは静寂の中に時折響く獣の啼き声だけだった。


「参ったなあ。迷子を助けて俺が迷子とは天使様の使命も意地悪だよなあ」


不敬で釣ろうとしたが、やはり天使様は応えず、ポルターの孤独な不安を高めただけだった。


「もう、どうすりゃいいんだ」


ポルターは本格的に袋小路に陥った。


※ ※ ※


結局、身動きを取れないまま朝が来た。昨日の木樵達は山に入っていく。村には大きな牧場があり、沢山の村人がそこへ吸い込まれ、村の外れの製材所に男たちの一団がそこに向かっていくのを観察した。製材所に近づくと、見渡す限り薪が積まれ、鉞で木を悪く軽快な音があちこちから響いている。


「ここは薪で生計を立てる村なのか」


ポルターは、王都から薪を仕入れにくる商人がいないかと事務所に張り付いていたが、誰も王都とは口にせず、出入りする荷馬車から読み取れるものもない。


「もう昼かよ。これは詰んだな」


ポルターは、事務員が昼休みに出た隙に伝票を漁ったが、目印になるようなものはなくへたり込んだ。


何の案も浮かばないまま、午後になって事務所の隅で不貞腐れていると、ようやく手掛かりがやってきた。


「あるだけ寄越せって?困るなあ、そういうのは」


「そういうと思って、持ってきたぜ」


「何々…おい、勅命じゃないか!」


「そういうことだ。馬車を集めて4日以内に逐一うちに届けてくれ。これは支度金だ」


ドン、と革袋を置いた男に事務員は何度も頷いてすぐに手配すると商人の手を握った。


「じゃあ、頼むよ」


「ああ、ところでお茶はどうだい?」


「日暮れまでには戻りたいから、今日は遠慮するよ」


「そうかい、気をつけてな」


男は馬にまたがり走り去る。


「待ってくれ!」


ポルターは、全力で追う。だが、山あいが続く道ではショートカットもままならず、じわりじわりと離されていく。


「クソッ、諦めないぞ!」


幽霊が全速力で追いかけてくるのを知ったら心臓が止まりかねないだろうが、男に知る由もなく、ペースを保ちながら山あいを駆けていく。


ポルターは必死に追いかけたが、別の道と合流した辺りでとうとう見失ってしまった。


「ダメか。だけど方角だけは分かったぞ」


だが、ポルターの勘は次の分岐を誤ったらしく、日暮れになっても王都は見えてこなかった。


「こっちじゃない、戻ろう」


追いつけないにせよ、男は日暮れまでにと言っていたから王都が遠目にも見えないのは間違えた裏付けなのだ。


「もう焦っても仕方ない、朝までに確実に着けるよう落ち着いて行くぞ」


雨が降り出し、遠くから雷鳴も聴こえる。


「嫌な天気だ」


ポルターは最近取り戻した記憶に重ねて憂うつな気分になったが、気を取り直して来た道を戻るべく駆け出した。


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