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ポルター 死亡フラグと騒霊騎士  作者: めざしと豚汁
使命3.『仕事を終えたら求婚するハンター』

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鬼気森然

ポルターは斜面を降りかけたが、一度戻って、目印として短剣を幹に突き立てた。


「救ってやったんだから借りを返せよ、ハーブ」


ポルターは先程の窪地に着いたものの2人の姿はない。代わりにフィルを呼ぶリーズの声が聴こえた。


「フィル。隠れても無駄だよぉ」


ポルターは舌打ちして、声の方角に走った。


「ねえ、フィルってばあ、お話の続きしようよ」


やがて、リーズが森の中を歩いているのが見えた。右手に持った解体用のナイフをゆらゆらとさせながら。


「ああ、クソッ!」


確信はなかったが、キャンプ中に個別に接触する時間を作っていたのはリーズだけだ。その消去法だけで来てみれば、悪い予感がしっかり的中していた。


ここでリーズを始末すれば、恐らく使命は終わるだろうが、天使様は暗殺者にするために力をくれたわけではないだろうし、ポルターが考える正義は、ダメだと囁いている。

ポルターは溜め息をつき呟いた。


「フィルが説得する方に賭けて、最悪にだけ備えよう。ハーブ、早く来い」


ポルターはリーズの居る辺りからさほど離れていない場所でフィルを見つけた。脚を痛めているのか這いつくばるように動きながら隠れる場所を探しているが、ハンターのリーズが、その痕跡を見逃すわけがない。


「フィル、そこにいるのね」


リーズが物騒なものを片手に嬉しそうに駆けてくる。フィルは、その足音を聴いて諦めたようだ。


「なんだ、おしっこじゃなくて鬼ごっこがしたかったのね」


「リーズ、お前はわざと俺を落とした」


「そだよ?ちゃんと下見して危なくないと思ったんだけど怪我させちゃってごめんね」


悪びれもなくリーズが応じた。


「それで、なんなんだよこれは。俺を殺すのか?」


「どうだろう…でもまだクライマックスじゃない。ゆっくりお話しようって言ったじゃない」


「?」


「なんにしてもこんなジメジメしたところは相応しくないなあ。肩を貸すからついてきて」


「嫌だと言っても無駄か、分かったよ」


「さあ、どうぞ。好きなだけ触っていいけど、暴れるのは止めてね?」


リーズはナイフを背嚢にしまってフィルに手を差しのべた。


「正念場だぞ、フィル」


ポルターは再び傍観者になり、二人に続く。リーズのクライマックスとはなんなのだろうか。


※ ※ ※


二人は会話もなく歩き、やがて木立を抜け見晴らしの良い草地に出た。


「ここが良さそう。見て、滝があるよ!」


リーズは見晴らしのいい岩棚にフィルをそっと座らせた。


「断崖絶壁…良くないぞ」


悪い予感しかしないが、ポルターは見守るしかなかった。


「待ってて、火を起こす」


「それより…水はあるか?」


「どうぞ。お酒もどう?痛みが紛れるよ」


「…」


「狂気のピクニックの始まりだ」


ポルターは緊急事態の連発に疲れきっていた。諦めに近い状況に気が緩んだか、いつもの軽口が溢れている。

焚き火が落ち着いたところでリーズは盃をフィルに手渡し一方的に「乾杯」を宣言した。


「ハーブやモエのこと心配じゃないのか?」


「全然。もうとっくに食べられてるでしょ」


「まさか…それも仕組んだのか」


「そだよ。パーティが蛮勇で全滅、私だけが奇跡の生還者ってね」


「一体何の目的で!」


「はいはい、落ち着いて。全部話してあげるから慌てないの」


「メスがいつ来るかも分からないのになんでそんな余裕なんだよ」


「多分、しばらくは大丈夫よ。オスが死んでるから巣を離れられない」


「…」


「まあ、色々間違ってるけど、来ないのは当たってるぞ」


―ポルターは野次を覚えた


「じゃあ、まずは想い出話でもしよっか」


「そんな気分じゃねえ」


「そういう態度良くないよ。ちゃんとつながるから、ね?」


「分かったよ。聞いてやる」


「じゃあ、私達の出会いをどうぞ」


ニシシとフィルを覗きこむリーズが言った。


「娼館に居たお前を俺が買い受けて狩人にした」


「そうだったね。私ったら牧場の豚親父から逃げたのに、よりにもよって娼館に逃げこむなんて馬鹿だったよね」


「身寄りのない子供なんてできることは限られるからな」


「とにかく私は、フィルに感謝した。フィルも変わらず優しくしてくれた。そのうち感謝は恋慕なのか依存なのか分からない気持ちに変わって今日まできた」


「俺がマーラと付き合うのを喜んでたから、そんな風に思ってたとは知らなかった」


「そりゃ私は選ばれたかったけど、少しの間とはいえ娼婦やってた負い目もあったし」


「しかし、なんで今更牧場に嫁ぐ話になったんだ?」


「見合いの建前で私を呼び戻そうと父から手紙が来たのよ。住込みの使用人一家が雇い主には逆らえないし、父は豚親父が私に何をしてたか知らない」


「息子まで利用するなんてとんでもない執念だな。大丈夫かこの世界は…」


これは、ポルターだ。


「なるほど、それでリーズは再び俺が救うことを期待したわけだ」


「はっきり言うわね。でも今はその方がいいわ」


「だが、それには応えられない」


「でも私は自分を諦めない」


「みんなを巻き込んで無理心中は救いじゃないだろ」


「心中?さっき言ったでしょ。私は奇跡の生還者になるんだよ?」


「話が見えない。憂さ晴らしにしても俺だけ殺せば済むのに大掛かり過ぎる」


「あのね、ハーブが、ずっとマーラから奪い取れって私をけしかけてたの。あいつはいつもパーティ存続しか頭になかったし、終いにはモエまで味方につけて、フィルがいない時はその話ばっかで…うんざりだったわ」


「殺すほどの理由には聞こえないな」


「生かして返したら、私のフィルへの気持ちをベラベラ喋って、ギルドに色々疑われるからってだけ。ついでよ、ついで」


「ついで…リーズ、何がなんだか分からない」


ポルターとフィルが同時に言った。


「フィル、分かるわけないよ。だって、私は想像以上に狂ってるのよ」


リーズはニッコリとしてフィルを戦慄させた。



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