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異世界を知った悪役令嬢、転生者を捕まえます  作者: 生ハム


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6/19

縁談を受けてみようかと思います

気球の実験成功から数日後。

私は上機嫌で過ごしていた。ナアマさんから引き出した異世界の知識で、これから更に有用な技術を手に入れられると思い、心を踊らせていた。


空を飛ぶことができたので、更なる異世界の知識を私は求め始めた。


監禁している離れの部屋に連日通い、ナアマさんに、次なる知識や技術を話すように求め続ける。ナアマさんも死にたくないのでしょう。必死に要求に応えようと口を割り続けてくれた。


しかしながら、私を満足させる様なお話は出てこなかった。何故なら、ナアマさんが話す異世界の道具や乗り物の作り方を、ナアマさんが説明できなかったからだ。


「ナアマさんが話すジドウシャやデンワは非常に魅力的なのですけれど」


「雷や“がそりん”という未知の液体で動くというが、よく分からんのぉ」


私はレメク男爵と共に、ナアマさんが口にした異世界の知識を纏めた記録を前に、唸っていた。


「ナアマさんは異世界で平民であったので道具を使っているだけだった、とも言っておりました。彼女の記憶頼りだけでは、もう限界なのではないでしょうか?」


道具を使ったことがあっても、作り方を知らなければ聴取を続ける意味がないのではないかと、私は思い始めていた。


異世界からの転生者と名乗っても、彼女は研究者のような職では無かったと言っていた。贅沢を言うなら、魔法研究局の様な専門知識を彼女が持っていたのならば良かったのだが。


彼女の様な転生者で研究者や専門知識を持つ者がいればよかったのに。



……いや待て、居るのではないだろうか、彼女の様な転生者は。


彼女は癒しの加護を持っている。この世界に加護持ちが彼女だけと言うわけではない。数こそ多くはないが加護を持ったものは居る。


加護を持つ者が生まれるように、前世の記憶を持って生まれる転生者も彼女だけではないとしたら?


「レメク男爵、私閃いてしまいました。もしナアマさんだけが転生者と言うわけではないとしたら、どうでしょう?」


「うぬぅ?何を言うておるんじゃ、お嬢さん」


「簡単な事です。加護持ちが生まれるように、転生者が生まれるなら、ナアマさん以外にも転生者が居る可能性があると言う事です」


「……そりゃ有り得るのぉ!」


レメクは大きく目を見開き、異世界の技術への糸口が見つかったと大喜びした。


そして2人で今後の転生者の捜索方法などを検討していると、ハガルが部屋に入って来た。


「お嬢様、ハダール公爵がお呼びになっておられます」


父からの呼び出しとは何かあったのだろうか?レメク男爵に断りを入れ、部屋をハガルと共に退出する。


離れから庭を通り本邸へ向かう。父の書斎へ到着し、入室の許可を求める。


「お父様、お呼びに応じ参りました。入室いたしてもよろしいでしょうか」


「入れ」


父の短くもハッキリとした低い声が返ってくる。しかし普段の声より声色に苛立ちを感じとれた。何か気に触る様なことをしてしまっただろうか?


説教の一つくらいは真面目に聞こう。そんな心構えで、一人書斎へ入る。そこには眉間に大きな皺を作っている父が座っていた。


「ごきげんよう、お父様。本日はどの様なご用件でございましょうか」


父は大きなため息で、愛娘の挨拶に返事をした。


「……サラ、そこに座りなさい」


促されるまま書斎に備え付けられているソファへと腰掛け、父を正面から見据える。机の上には封を解かれた上等な手紙が広げられていた。


「サラよ、婚約破棄をされ早数ヶ月。そろそろお前の婚姻のことを考えなければならない。お前の事だ、ある程度は見通しを立てているのではないか?」


婚約話をするために呼び出したのか?それにしては様子がおかしい。何かを焦っている。無駄な会話はやめにして本題に入っていただこう。


「お父様、何を隠しているか知りませんが、ハッキリおっしゃってください」


娘からの一刀両断で観念してくてたのか、机に広がっていた手紙の封を持ち上げ────


「サラ、お前に王家から婚約に打診が届いている」


押印されていた王家の紋様を見せて来た。


「正直に言おう。我輩はこの縁談を受けるべきではないと考えている。あれだけの失態を起こしておいて、虫が良すぎると思わないか?」


父は不愉快だと言わんばかりの顔で、持ち上げていた封を机へ投げ捨てると言う不敬を働いた。


「この縁談を断るために、早急にサラの婚約者を見繕おうと思い、今日は呼び出した」


なるほど。父は一度トラブルがあった家への婚姻などあり得ないと考えている。貴族同士の婚約話であれば至極真っ当な考えだ。


だが今回の相手は王家。こちらから一方的に断ることは不敬である。王家も断らないと踏んでの手紙だったのだろう。


しかし父はこれ以上のいざこざは面倒と考えて、私に婚約者を据えることで、王家からの婚約話を断ろうと考えたのか。


「さて、今から我が家に届いている釣書と、我輩の知り合い達の息子の釣書を吟味するぞ」


父の執務机には山の様な書類が鎮座していた。あれを今から一つずつ見ていくのか。時間がかかりそうで面倒だ。


「お待ちになってください。お父様」


「ん、どうした?気になっている者でもいるのか?この際だ、どんな者でも構わん。言ってみろ」


「肝心の王家からの婚約話、一体誰との縁談なのかをまだ見ていませんわ」


父は期待を裏切られた様子で、ため息を吐きながら封筒の中身を差し出して来た。受け取った封の内容を読んでみると、


「第二王子との縁談……?」


そこには婚約破棄した男の弟と婚約の誘いが書かれていた。


「国王と王家は何を考えているんだ……」


なるほど、父が焦るわけだ。しかしこれは好都合かもしれない。順当に考えれば次の国王は、第二王子になるはず。


次期国王の妃となれば、自由に動かせる財と人の量が増える。そうすれば先ほどレメクと悩んでいた、転生者探しを国家規模で行える。


多少の派閥争いなどもあるだろうが、王妃になれる以上のメリットなんて他の者達では、提示できないだろう。なら王家との縁談を進めた方が絶対的に得だ。


「お父様、私この縁談を受けてみようかと思います」


父の顔が一気に老け込んだ。その心労、察するに余りますわ。



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