転生者二ム・ロド 前編
「うわああ~~~~~ん!」
(いたいよぉ!いたいよ、ぉ……?あれ、なんか忘れているような……俺は確か死んだはず……って何だこの体!?)
俺、二ム・ロドは転んだ拍子に頭をぶつけて前世の記憶を思い出した。
確か俺はブラック企業勤めで、帰り道に子供を車から庇ってぶつかって......そこから記憶がない。多分この時死んだんだと思う。そして今、前世を思い出した。
死んだ後に子供の体になってるってことは俺転生したのか!?しかも周りを見た感じ異世界っぽい!夢にまで見た光景だ!
「転生したはいいけど、どんな異世界なんだここ?」
ひとまず落ち着き、今の状況を整理しよう。ここは周りを山で囲まれた村でみんないつも畑仕事と家畜の世話をして細々と生活している。
おいおいまずいぞ、このままだと大人になった後もこの村で農民生活することになる!せっかく転生したんだしそれだけは嫌だ!異世界なんだから剣と魔法くらいあれよ!
と思っていたが、どうやら魔法はあるらしい。今日村に冒険者パーティがやって来てたのを思い出した。
剣と魔法の世界ならやることは一つ、冒険者になる!そう目標を立てた五歳の俺は、冒険者の中にいた魔法使いに「魔法を教えて!」とねだってみたら使い古された魔導書を買わされた。ちくしょう。
でもお古でも魔導書だ。その日から魔導書片手にこっそりと山の中で修行を始めた。
◇
十年後。
十五歳になった俺は村を飛び出した。理由はもちろん冒険者になるため。同じ領地の冒険者ギルドがある町に俺は向かった。
初めての村の外で色々あったがどうにかギルドにたどり着き、冒険者として登録を終え、ここから俺の本当の異世界生活が始まると思うと、胸が踊りまくる。
早速クエストを受けようと思ったが、あっさり二度目の死を迎えるなんてまっぴら御免だ。ここは慎重に、難易度の低い採取クエストから一歩ずつ進んでいこう。
◇
冒険者になって一か月。俺は一文無しで出て来たから金がない。だからここら辺で一発、報酬の大きいクエストを受けてみようと思い立った。
俺はクエストボードにあった、いつもより少し報酬の高い大量発生した雑魚モンスターの討伐を受注。大量発生という状況のせいで他の冒険者達が討伐に参加していた。
報酬は倒したモンスターの数が多ければ多いほど高くなる。俺は魔法で一掃して大儲けしようと考えた。大量発生している場所に着いてすぐに魔法で全てのモンスターを一掃した。
周りの冒険者は全員、目を丸くしていたが俺何かおかしなことをしたか?
魔法で範囲攻撃とか前世のゲームじゃ普通だったし......。あ、全部討伐したら他の冒険者の分け前がない。それで皆俺のこと見て来たのか......。
(やべぇな空気最悪じゃん.....あ、そうだ!)
「全部討伐しましたし、報酬山分けしましょう!」
山分けを提案したら気まずい空気は生き返った。その夜、ギルド内の酒場では俺の評判がうなぎ上りに。魔法が使える冒険者はそんなにいないらしい。あの時魔導書を売ってくれた魔法使いに感謝だな。
(何なの、あの威力......おかしいでしょ。一応ギルドには報告しておきましょう)
少ない魔法使いたちからは怪訝な顔で見られ続けたが問題なし。
でも今日魔法を初めて実戦で使ってみた感想は「味気ないな」と思った。
せっかく剣も鍛えたのに魔法を使うとあっさり終わりすぎて、冒険のロマンを感じることができない。当分は剣メインで冒険者を続けよう。
そう決意した次の日に俺は冒険者のランクが上がった。
ランクが上がってからはどんどんクエストをこなすためにマグナテラ王国の西へ東へいろんなモンスターを討伐していった。
◇
そんな日々が五年続いた。
気づけばベテランとも言えるような冒険者に俺はなっていた。だけど毎日が何か色あせているような、心の中がもやもやする。
ある日、いつものようにクエストを受けようとしている時に気づいた。
「今日もこのクエストでいいか......あれ?」
俺、昨日も同じこと言ってなかったか?それどころか最近はいつも「これでいいか」という気持ちじゃなかったか?俺はいつからこんな気持ちで冒険してた?
というか俺前世ではのんびり生活がしたいって思ってなかったっけ?これじゃ前世のブラック企業勤めの時と変わらないじゃん。
気づいてからの行動は早かった。働き過ぎたと反省した俺は休業することをギルドに伝えて、貯金していた報酬を引き出し、宿泊していた宿の荷物をすべてまとめた。
そうだ、俺は田舎でスローライフしてみたかったはずじゃないか。今ならそれができる筈だ。そうと決まれば田舎に引っ越そう。
引っ越し先の目星は既に決まってる。前に討伐クエストの通り道で立ち寄ったバベル村。そこでの景色が今でも思い出せるくらいには住んでみたいと思った場所だ。早速バベル村へ向かう。
◇
バベル村に移住してからは初めての連続だった。
街じゃないから不便の連続だったし、農作業なんて子供の頃以来で、重労働だと改めて知った。
スローライフしようにも毎日やる事が多くて、クエストしてた頃より疲れることが多い。
だから俺は魔法を使って、不便なことを解決していった。
面倒な水やりは水魔法で、畑や自宅の庭は土魔法で整備したり、収穫が面倒になってゴーレムを作って自動化してみたりもした。
その後、村人達に魔法を使った生活がバレて、村の整備をしているうちに何でも屋と呼ばれるように。
そんなこんなで俺は魔法を使って理想のスローライフを送ることに成功した。
◇
俺がバベル村に移住してから三年が経った。
この三年でバベル村は見違えるほど発展した。
土魔法で建てた害獣よけの防壁、ゴーレムを使った自動収穫作業、綺麗に整備された道と畑。この三年間で村人たちと協力して、作り上げた新しいバベル村の姿がそこにはあった。
最近はこの村の噂を聞きつけた商人キャラバンや、宿屋も整備したので、滞在する旅人や冒険者たちも増えた。
名物として前世で大好物だったラーメンを再現して作ってみたら見たことがない料理として大反響を呼ぶことができた。
なんなら移住者も増えて、村長とツァイルが大喜びしていた。ツァイルは村長の娘さんで、移住当初から俺によくしてくれた子だ。
献身的で、最初にこの村の住人として認めてくれた女の子で、彼女がいたからこそ俺はこの村で生きていけると思ったくらい心から互いを信じ合っている。
そんな彼女とちょっと前からはいい雰囲気で、周りやツァイルもまんざらではないのを俺は感じ取っていた。
それに最近越してきたライラという美人なお姉さんも俺に気があるのかもしれない。俺は今世でモテ期が到来したことで人生の春を謳歌していた。
◇
そんないつもの日常を過ごしていると三人の兵士がやって来て、こいつらはふざけた事に「発展した分の納税がされていないから追加で払え」と言ってきた。
俺たちは「今頃になって急に税が増えるなんておかしい」と抗議した。
それに今年の納税は済ませていると訴えても奴らは聞く耳を持たなかった。それどころか強引な手段で村人たちの家にある備蓄を奪い出す始末。
村の皆は抵抗する術を持ってないから、兵士たちに好き放題、家や畑を荒らされた。
この三年間で建てた家や畑を荒らされても、立場は兵士の方が上だから俺は見ていることしかできなかった。
(今は耐えて、すぐに元通りにしてやる)
そう固く決意を固めていると、ツァイルが真面目そうな兵士にしがみ付いていた。
(何やってるんだツァイル!)
「やめてください! お願いですからやめてください!」
よく見るとツァイルは何かを必死に守っていた。
「あれは……」
彼女が兵士へ飛び付いても守りたかったものは、彼女の母親の形見である白いドレスだった。
以前ツァイルから母親が結婚式に着たという話を聞いた俺は、彼女が必死になっている理由を理解し、彼女の元へ走って向かうとライラもツァイルの家から出ようとする真面目そうな兵士の前へ立ち塞がっていた。
「女の子相手にやりすぎじゃないです?それとも兵士さんの理想がそれなんですか?」
「貴様!俺の理想がこれだとでもいうのか!?」
「きゃっ!」
「ライラさん!」
煽られた兵士の奴は、ライラを殴りつけた。それを見ていた軽薄そうな兵士が口を挟む。
「おいおい、何ムキになってんだよ。折角の上玉だぜ、殴るより他にヤる事があんだろ。それにそこの必死になってるお嬢ちゃんも悪かねぇ。二人で分け合おうぜ」
「いやっ……!」
その兵士の最低な発言に、俺の堪忍袋の緒が切れた。
「お、なん……だ?……ぐぎゃああああ!!」
気づいた時には、軽薄そうな兵士を、いつも持ち歩いている冒険用の剣で斬りつけて戦闘不能にしていた。
「貴様何をしている!?ぐあっ!!」
真面目そうな兵士に一太刀を入れて無力化する。騒ぎを聞きつけたのか三人目の兵士がやってきた。
「何の騒ぎ、だ……これはっ!?貴様がやったのか!? ぐおっ」
少し離れた場所に立っていたせいか、一太刀で戦闘不能にできなかった。
「至急応援を呼んでくれ!襲撃を受けた!殺され、ぎゃっ──」
兵士が何か言っているのを聞き、直ぐに意識を刈り取った。
「何だこれ?」
血まみれで気絶した兵士の拳の中には、魔石のようなものが握られていた。一先ず兵士たちに、最低限の治療に魔法をかけて村の入り口に簀巻きにして置いておいた。
村人たち、ツァイル、ライラから感謝の言葉をかけられて、皆で村の復興作業に取り掛かった。
しかし残骸を片付けて数時間後に異変は起こり始めた。
明日と明後日にも話を投稿します。お楽しみに
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