転生者の報告書
再び報告書が上がって来るまでにそう時間はかからなかった。
届いた報告書を紅茶を片手に、目を通し始める。
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監視報告書
監視地域 バベル村
監視対象者 ニム・ロド
年齢 23歳
職業:冒険者
冒険者ギルドに在籍記録アリ。現在休業届を提出中
出身 クシュ村
身分 平民
経歴
15歳で冒険者ギルドに登録
5年間の活動で多数の討伐実績アリ
別紙に討伐記録を記載
20歳で休業届を提出
直後にバベル村へ移住
現在に至る
討伐に魔法を使った目撃情報アリ
クシュ村の規模で魔法学習は不可
村には過去に魔法使いが滞在した記録ナシ
魔法局等に所属した経歴ナシ
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転生者の疑いがある者の名前は二ム・ロド。23歳という若さで数々の実績を上げて来た平民の冒険者である。
その他の事も書いてある報告書を信じるなら、彼は魔法を独学で修めている。ゴーレム作成という非常に高度な魔法をだ。ただの冒険者が覚えているような魔法ではない。それに経歴を見ると魔法を正式に学んだことはないという事になる。つまり非常に転生者という疑いが高い。
二枚目の報告書に目を通すとそこには、影が商人キャラバンとして潜入した際に、設置した盗聴石で盗み聞きした発言と指示した食事名がまとめられていた。
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指示いただいた食事の名前を調査
ラーメンという名前の料理が提供された。
暖かいスープの中に麺と豚肉を加工した肉が入っており、ハシという二本の棒をカトラリーとして食した。
発案者は二ム・ロド。
盗聴記録
隠語を使用した発言を抜粋。別紙に全記録を記載
自宅内発言
「スローライフできるかと思ったら意外と忙しいとは。......でも悪くないな。前世の過労死寸前のブラック企業よりずっと達成感がある」
・夜に帰宅し、ベッドの上での発言
「異世界にない料理を再現しようにも材料がないし、それに知識もないなぁ」
・自宅内キッチンにて料理をしつつの発言
「転生してから一番楽しいな」
・村民と共同作業の後にささやいた発言
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二ムは転生者で確定だ。家では気を抜いて口を滑らせるだろう、と踏んでいたがうまくいった。盗聴石も活躍できたようだし、影の装備として正式採用されるように働きかけてもいい。
マナさんを呼び出しての最終確認もする。間違いで転生者の存在が外部へ漏れるのが最も危険だ。マナさん以外の転生者を確保できるかもしれない絶好の機会だからこそ、慎重に何度も確認し、万全を期したい。
「マナさん、これが今回の報告書です。重要な部分は抜粋していますのでこの二枚に目を通しなさい」
受け取った報告書を隅から隅まで読み込むマナさん。彼女は二枚の報告書を時間をかけて読み解いてから顔を上げた。
「確実に転生者と言えると思います。料理の名前は前世の出身国のものですし、同じ国の人間特有の言い回しも見受けられますね。この『過労死寸前のブラック企業』ってとこです」
マナさんは報告書の該当箇所を指し示す。
「過労死寸前のブラック企業とは何ですか?」
「えっ......あ、確かに知らないか。ブラック企業というのは、えーと過酷な労働環境で無理やり働かされる会社……つまりこの世界だと過労死するまで働かせる商会やギルドみたいな感じで、過労死は文字通り働きすぎて急に死んじゃうことです」
「死ぬまで働くというのは、老人まで働いて死ぬという意味ではなく?」
「働きすぎて、体を悪くして寿命を迎える前に死ぬことですね」
働き過ぎて死ぬ。異世界とはなんと恐ろしいところなのか。私の働く時間を改めて考えた方がいいかもしれない。私はまだ若くして死にたくはない。
過労死について考えを巡らせるが、後に回して転生者を確保する方法を考えなくては。前世の出身国が同じマナさんに何か良い助言はないか聞いてみる。
「マナさん、先ほど同じ出身国と言っていましたが、彼の考えなど想像することができるでしょうか?」
マナさんは顎に手を当てながら、考えを巡らせている。
「同じ日本出身って言っても......あ、報告書にあるスローライフって部分から分かることがあるかもしれません」
「それは一体?」
「前世で異世界転生して、田舎で農業とかしながらゆっくり生活するっていう小説が流行ってました。彼は多分、働き過ぎていた反動で冒険者業を休んで、この村に移住したんだと思います」
なるほど、マナさんの考察は非常に参考になった。つまりこの二ム・ロドは冒険者として働くのが嫌になったという事か。自身の才能でこの国に貢献するわけではなく、自己利益のためだけに使うことを決心して、辺境の村へと移住したというのか。
全く度し難い。加えて言えば、なぜこんな国境近くの村に移住したのか。もし国境をまたぐ商人などがいたら転生者の技術が他国にわたる可能性だってある。今はまだ問題になっていないが時間の問題だ。早急に手を打たなくてはならない。……余計な仕事を増やしてくれたものだ。
マナさんと意見交換しつつ、転生者確保の計画を立てることに、その日は時間をすべて費やした。
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