永遠少年⑤
ちゃぶ台を挟んで4人は対峙していた。
「ほんで、世界管理機構の方が、どんなご用でお越しになられたんですか?」
ぶっきらぼうにゲンが話しの口火を切る。
「改めて自己紹介をさせていただきます。
私は世界管理機構・準備室室長の鎧塚と申します。
彼は私の部下の…」
「世界管理機構・準備室の長谷川と申します。」
長谷川は短くハキハキとした口調で自己紹介をした。
鎧塚よりも、この若者のほうが好感を持てる。
だが、話は上司である鎧塚主導で進められていく。
「本日、伺いましたのは、カイ君に是非ご協力いただきたく、お願いに上がった次第です。」
ゲンの右眉がピクリと動く。
長谷川が、持っていた革の鞄からタブレットを取り出す。
ゲンと鎧塚が話している時に触っていた端末だ。
画面を何度かタップとスクロールさせて、ちゃぶ台の上にタブレットを乗せた。
そこには「田中カイ・調査資料」と言う表題の下に、身長や体重など身体情報のほかに趣味趣向など、カイに対する事細かな情報が記載されている。
「勝手ながら、田中カイさんについて、独自に調査させていただきました。」
長谷川の言葉を鎧塚が引き取る。
「我々、世界管理機構は世間的にはジパングへの対応の為に設立された事になっておりますが、実はそれよりも前から存在しております。」
鎧塚が話し始めると、長谷川はタブレットをスライドさせ、機密保持同意書とかかれた画面を映し出し、タブレット用のペンを差し出した。
「ここからのお話は、重要機密にあたりますので、こちらの同意書にが署名いただけますでしょうか。」
ゲンはペンを受け取り液晶画面へサインをした。
気に入らないが、サインをしない事には話が先に進まない様子だ。
サインを一瞥し、鎧塚は話をつづける。
「実は、皆さんがモビーディックと呼ばれる、空飛ぶ鯨が現れた頃から、その実態の調査の為に我々は活動を始めておりました。
今、ジパングの調査に当たっています調査室を皆さんは世界管理機構とご理解されていると存じますが、我々、準備室も世界管理機構の一員でして、むしろ我々の方が中核を担っているのです。」
その言い方には、自分こそが世界管理機構の中枢なのだと言う、自尊心が見え隠れする。
「鯨に対して、調査は難航しておりまして…
何一つ分からない。と言うのが正直なところです。
そこで我々は、鯨が現れた時期に起こった、どんな些細な事象も調査する事にしたのです。」
カイと出会った時の事が思い出される。
確かに鯨の事で騒がしかった事を覚えている。
この男達は、カイを保護した日が鯨が現れたという事だけで、こじつけているようだ。
なんとも暇な事だ。
フンッとゲンは鼻を鳴らす。
「カイ君は剣道をされているとか。」
鎧塚が急にカイに話をふる。
「はい。」
「ここ最近、急激に上達された様ですね。
顧問の先生も誉めておいででしたよ。」
何故、そんな話をもちだして来たのか分からず、カイは曖昧に「ありがとうございます。」と答えた。
この男達は一体何がしたいのか。
ゲンはいよいよイライラを抑えられ無くなってきた。
「あんたらよ?カイに協力して欲しいって、一体どんな事らよ?」
鎧塚が、また満足そうに頷いた。
「カイ君を是非、我々に預からせて頂きたい」
予想外の真っ正面からの提案に、ゲンは動揺した。
「何言うたらぁ!?」
カイを連れて行く?この男は一体何をいっているのか?
「勿論、今すぐと言う事ではございません。
高校を卒業されてからで、結構です。
東京にある我々こ施設にて生活して頂き、定期的に検査を受けて頂くだけの事で、かまいません。」
鎧塚は、また両方の掌を上にむけ、ゆっくりと話す。
「日常生活を制限する様な事は、何一つ御座いません。
本当に週に1、2回検査を受けて頂くだけの事なのです。」
「そうだっ。」とわざとらしく大きな声で言った後に胸のまえでパンと手を合わせ、またピエロの様な笑顔を浮かべる。
「カイ君は、東京の大学への進学を希望なさっていますよね?
事前に確認させて頂いた学力も申し分ありませんし、私共から推薦させていただける所が、幾つかございますよ?」
その言葉にあわせて、長谷川はタブレットを操作し、幾つかの大学の載ったリストをだす。
どれも国内トップクラスの大学だ。
こんなリストが用意されている事からも、事前にこの提案をするつもりだった事は明らかだった。
ゲンはカイを見る。
何も言わずに、鎧塚と長谷川を見ている。
少なくとも大学のリストに興味を示している様子はない。
「大体、検査ってなんよ?
何を検査する必要があらぁよ!?」
コイツらはカイを実験動物みたいに扱うつもりなのか?
到底許せる訳がない!
「帰れ!」そう言おうとした瞬間、カイが先に口を開いた。
「わかりました。お受けします。」
驚いたゲンはカイを見る。相変わらずカイは目の前の二人の男を見据えている。
その目に迷いは見られない。




