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ホエイルホエル  作者: たろ


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10/12

永遠少年⑥

夜の浜辺で、カイは宏美と季節外れの花火をしていた。


夏に売れ残った花火を商店街の駄菓子屋のおばちゃんが「湿気る前に」と、くれたのだ。


繊細な話しをする時に線香花火をしたくなるのは何故だろう。


カイには花火をした記憶はなかったが、今の心情を宏美に相談しようと思った時、自然と線香花火を手にしていた。


「そらぁ、ゲンさんはショックらよ?」


機密保持同意書にサインしているので、世界管理機構の事は話せない。

宏美には遠縁の親戚が見つかり「一緒に東京で住まないか?」と言う事になり、ソレを受ける事にしたと。と説明している。


嘘をつく事になるが、それでも宏美に話しを聞いてもらいたかった。


「ゲンさん、カイの事めっちゃ大事にしてるの見とったら分かるよ?」


カイもその事は痛いほどわかっている。


カイは線香花火を見つめながら呟く様に話す。


「仏壇に、奥さんの写真があるんだ。

前に教えてくれた。

ゲンさんの奥さん、子供を産む時に亡くなったって。

…子供も助からなかったって。」


生まれてくる予定の子は女の子で名前は美しい海と書いて『ミウ』とするつもりだったと教えてくれた。

自分に海からとってカイとつけたゲンさんの気持ちが、カイの胸を熱くさせた。


「ゲンさんがオレの事、実の子みたいに思ってくれてる事は…わかってる。」


「だったら…」そう言いかけて、宏美はその先を言うのをやめる。

以前から、カイの気持ちを聞いていたからだ。

カイは東京への進学を希望していた。

だが、それ以上に『自分が何者なのか』ずっと悩んでいた事を、宏美は知っている。

カイは言わないが、東京に行きたいのは、その答えを探す手掛かりを見つけたいからなのではないか、と感じていた。

だから東京へ行くと決めたカイに、引き止める様な言葉をかける事も違うと思うのだ。


二人は、どちらが長く線香花火をもたせる事が出来るか。と言う定番の勝負をしながら、話の核心は話さないままにした。


カイにはその時間が心地よい。


記憶がないだけなら、多分、鎧塚からの提案は受けなかったと思う。

きっかけは誕生日のあの日、鯨が鳴いたからだ。

鯨が鳴いてから、自分の中に、今まで無かった感覚が流れ込んできた。

透明な水の中に、水溶性のインクを流し込んだ様に、明らかな異物が流れ込んで、拡散し、同化して行く。

その感覚が何なのか、次の日までわからなかった。

だが、次の日、竹刀を持った瞬間にハッキリとわかった。

昨日のあの感覚は、自分ではない自分の経験が流れ込んだのだ。

そして、そのキッカケが間違いなく、鯨が鳴いた事に関係してしているのだ…と。


だから、鎧塚達は明言こそしなかったが、剣道の上達の話題を振られた時、世界管理機構はその事に気がついているのだと確信した。


彼等の提案を受ける事で、答えに近づく事が出来ると言う予感があった。



ゲンさんにちゃんと話そう。


カイは、線香花火のパチパチと弾ける火花を見つめる。

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