スーパーヒーロー
まだ桜が小さい頃、変身ベルトをつかって変身し、戦闘スーツを身に纏い、悪と戦うスーパーヒーローに憧れていた。
思春期になり、流石に周囲の友達に隠すようにはなったが実は今でも憧れている。
父と母はそんは桜の事を否定する事は無く、何なら昔に撮影されたシリーズ全て見せてくれた。
祖父とはなかなか会えなかったが、たまに会うと熱心にスーパーヒーローについて語ったものだ。
そんな桜の姿を優しく微笑んで見守ってくれている祖父の笑顔を思い出す。
いつか、スーパーヒーローが活躍する世界が拡張される時が来るのを心まちにしている。
それを祖父に伝えた時、初めて祖父が少し困った顔をしたのを覚えている。
「ヒーローは確かにカッコいいけどね、それは懲らしめる悪いヤツが居るって事だからね。
ジィちゃんはヒーローがいない世界がいいなぁ」
幼い桜にはその言葉の意味は良くわからなかった。
桜は諦めと共につむった瞼をもう一度開く。
覚悟していた痛みが、いつまで経っても訪れないからだ。
土人形が宙をまっている。
その中心に見慣れない少年が一人浮かんでいる。
桜の位置からは背中しか見えない。
その後ろ姿はスーツは纏っていないけれど、子供の頃から憧れたスーパーヒーローと重なった。
40体の土人形は空中で互いにぶつかり合い、土塊に戻って地面に落ちていく。
数分の間に全ての土人形は唯の土となって地面に落ちた。
駿太、もしくはマルファスは予期せぬ介入に戸惑っている。少なくとも向こう側という訳では無さそうだ。
宙に浮いていた少年はゆっくりと地面に降り立った。
ようやく桜の位置からでも横顔が見えた。
年齢は桜と同じくらいだろうか、眉にかかる位の長さの髪が風のせいで乱れている。
中性的な整った横顔を桜は何処かで見た気がするのだが、どこで見たのか思い出せない。
土人形に刺されたふくらはぎがズキズキと痛み出した。
先程まで絶望の中にいて気付かなかったが、今少し安堵してしまったせいか痛みが意識にのぼってきた。
桜は少年を注視しながら、深い呼吸と浅い呼吸を繰り返す。
今のうちに氣による治癒を行っておかなければならない。
「誰だ?お前!?」
駿太が少年を睨みつける。
少年はその問いに直ぐに答えず、右手の親指いがいの指をたてて4を示す。
「4人一組で五班つくりました。4かける5は?」
「はぁ?何言ってんだ!?」
「小学生の問題だよ?4かける5は?」
駿太は相手のペースにのまれたのか「20」と答えた。
側から見ている桜には少年がこの場のペースを掴んでいく様が見てとれる。
「じゃ21ひく20は?」
21と言われて桜は思い出す。
この島に集まった生徒は21人居たはずだ。
一人あぶれている事にどうして今まで気付かなかったのだろう。
「あまり1。のクラスメイト、田中カイです。
自己紹介遅くなりました。」
少年は振り返り、桜を見上げてニコリと笑った。




