悪魔
うすら笑いを浮かべながら駿太が近づいてくる。
もう悪意を隠すそぶりも無かった。
「どうして…….!?」
にじりよって来る駿太から距離をとりながら、桜は臨戦体制をとる。
「ん?あぁー
魂と融合した澱は、経験高いんだよ」
「死体を見て、吐いてたのは演技だったの!?」
「ちがう、ちがう。
喰った『澱』がまだ馴染んでなくてさ。
もとの宿主見つけて興奮したみたいなんだよね。
腹の中で動き回るから、気持ち悪くて」
楽しそうに笑いながら、駿太は獲物を値踏みするように桜を頭から足先まで眺め、舌なめずりをする。
「どうして、こんな事……」
桜はこの一件の犯人は圭吾だと思っていた。
駿太は自分勝手な面はあるものの、五班のなかではまだ協調性がある方だと感じていたが……
「スラッジに成って、初めてわかったんだけどさ。
オレって結構欲深いの。
やっぱ、何でも一番じゃないと気に食わないし、クソみたいな下のヤツが調子のるも許せないんだよね。
……圭吾とか?お前とか!」
駿太が手を突き出すと、また地面から岩の棘が突き出してくる。
桜は自身はポケットから魔法陣の描かれた紙を取り出して「飛べ」と唱える。
紙に書かれた魔法陣が光り、桜の体は風を纏って空中へと浮かぶ。
しかし、突き出た岩の棘は浮いた桜の足をかすめた。
「へぇ、浮遊の魔法陣か。
授業じゃまだ習ってないはずたけど?」
浮遊の魔法陣は、アオおばさんから直接教えてもらった魔法陣の一つだ。
浮くことはできるが、まだ空中で思うように体勢を取る事は難しい。
浮遊をつかってこの場から逃げ切る事は難しいだろう。
駿太はそれを分かっているのか、ニヤニヤと笑みを浮かべながら余裕をもって桜を見上げている。
近くの木の枝につかまり、よじ登る。
ポケットにてを入れて残りの魔法陣を確認する。
ポケットの中には6枚の魔法陣があった。
その中で攻撃で使えそうな物は半分くらいだ。
この状況を切り抜ける案がみつからない。
「二人はどうしたの?」
焦りのせいで声が震えてしまわないように注意しながら駿太に話しかける。
時間をかけて、状況の把握をしなければ……
「まだ、殺してないよ。
事故に見せかけないと、後々面倒だしさ。
お前もまとめて、スラッジにやられた事にしないと」
「学校が調査したら、そんなの直ぐにバレるわ」
その言葉をきいて、駿太はさらに歪んだ笑みを浮かべる。
「本当に、そう思う?」
駿太の自身に満ちた言葉に、桜はハッとする。
何の後ろ盾もなく、こんな大それた事を一介の生徒ができる物だろうか。
桜のメッセージに学校側から返事がなかったのは、そう言う事なのでは……
「まぁ、もう詰みだよ」
駿太はケタケタと笑う。
「あなた……
何のスラッジと融合したの……」
駿太は、悍ましい歪んだ雰囲気を放っている。
よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりの嬉しそうな表情を浮かべ、嬉々として駿太が答えた。
「マルファス」
三年前、鯨が鳴き、世界が統合され、アンダー オブ ユニバースの存在が世間に知れ渡った。
そこに存在していた『澱』の存在、それは地獄と称され、伝承されてきた者達の世界だった。
おのずと、危険度が高そうなものも理解できた。
それは、教典、小説、ゲーム、漫画、アニメ……様々な形で慣れ親しんだものなのだから。
『マルファス』はソロモン72柱の悪魔の中の一人。
生贄を好み、その姿は烏の様だったと言う。




