実習二日目
実習二日目。
朝食を済ませると森の中へ散策にむかった。
観察対象となるスラッジを見つける事と事前に用意されていた食料が無くなる前に、森で食べ物を確保するためだ。
案の定、当初の行動開始予定時刻よりも30分遅れてスタートした。
今回は花音は時間通りに集合したのだが、圭吾が15分遅れてやってきた。それに腹を立てた駿太が圭吾を叱るのに、もう15分、結局30分遅れてしまった。
一番先頭を歩く駿太の背中はまだ苛立ちを収められていない様子だった。
「朝から空気おもっ……」
桜の前を歩く花音が呟く。
それには同意するが、心の中に留めてほしい。駿太に聞こえたら、また苛立ちが爆発するかも知れない。
幸い、駿太には聞こえていなかった様だが、雑談などする雰囲気にもならず、重たい空気のまま森の中を無言で散策した。
1時間ほど散策すると、木の実やキノコ、食べられる雑草などは見つかった。コメカミにはったチップが視野共有情報から自動検索をかけ、AIが音声ガイド食べられるかどうかやその調理方法を教えてくれる。
一昔前に流行った『転生物』の音声ガイドやステータスウィンドは、この世界の技術をレセプターが読み取ったのではないか。とされている。
「ちょっと、おかしくない?」
2時間程散策した所で、花音が立ち止まり皆に声をかけた。桜も確かに違和感を感じていた。
「何が!?
まだ、スラッジ見つかってないんだから、無駄話せずにちゃんと探せよ」
駿太が苛立ちながら答える。
「それよ」
花音は駿太の苛立ちは意に介さず、自分のペースで話を続ける。
「それがおかしいって言ってんの。
2時間探して、スラッジどころか他の動物を1匹もみてない」
「あっ」と駿太は驚きの顔を見せた。朝からの苛立ちで視野が狭くなっていたのかも知れない。
桜も花音同様に違和感を感じていた。
この森の静かさは少し異様だ。
しかし、その異様さに気付いたところで、その答えも解決策も持ち得ない。
結局は注意しながら散策を続ける事になった。
散策から3時間、そろそろ昼休憩を取ろうとした時だった。
「みんな!……これ」
圭吾に呼ばれて、桜たちは圭吾の元へ集まった。
圭吾は森の中の窪地を見下ろしていた。
生ゴミが腐った様な臭いが鼻をさす。
「どうした?」
「アレみて……」
駿太は窪地の中心を指差した。
桜達はその先をみる。
大小の塊が幾重にもおりなっている。全体に黒く変色しており、すぐに何かは分からない。
初めに気づいたのは駿太だった。
「オェッ」
口元を抑え、窪地と反対の森のおくへかける。
「オェエエッエエ」
森の奥から俊太が嘔吐する音が聞こえる。
それと同時に桜もその景色の正体に気がついた。
鹿や猪、ネズミやリス……森に生息しているであろう動物達の死体だった、
その全ての動物の腹は大きく開かれ、腑が引き摺り出されていた。頭が潰れているモノも多い。
そし全ての動物の目玉がくり抜かれ、本来目が収まっていた所は黒く深い穴が空いていた。
桜も我慢できずに木の影に隠れて嘔吐する。
花音は艶で口元を隠して目を背けただけで、嘔吐まではしなかった。
そんな中、圭吾一人だけ、腐臭の漂う穴を直立して見下ろしている。
桜の見間違いかもしれない。
圭吾の口元が薄らと笑みを浮かべている様に見えた。




