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ホエイルホエル  作者: たろ
五幕

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野外実習


「はじめまして……て言うのも何か変だけど

改めまして、小鳥遊(たかなし) 桜(さくら)です」


伊豆諸島にある四畳半島に、桜と同じ年の男女があつまっていた。


高等部パラレルワールド科の二年生は夏休みに10日間の野外実習を行う事が恒例行事となっている。

ここ四畳半島は、桜の通う『慶明大学附属高校』が管理する無人島だ。

島はそれ程大きくはないが、山や川もあり、自然に溢れている。動物型のスラッジが多種生息していることも特徴だ。

学校の管理により、危険度の高いスラッジは事前に討伐され、実習に適した強さの初級スラッジが様の中で独自の生態系を作っていた。


スラッジはこの三年間で多く確認されている。

危険度の低い順番から『初級』『中級者』『上級』と分類された。

更に、知能を有しその危険度を推し量ることの出来ない『特級』が存在している。


今回の野外実習はパラレルワールド科の学生21名が5班にわかれ、キャンプをしながら初級スラッジの生態観察や実戦にての対処法を学ぶフィールドワークを行う。

教師は島に入らず、沖に停泊した船で待機している。

AIの活用は認められているが、教師は基本的に関与しない。学生だけで10日間の野外活動を行う。


スラッジが出現する前はキャンプを通し、今後のパラレルワールドでの活動を見越した技術を身につける事を目的としていたが、スラッジが出現せてからはその様相をかえていた。



「僕は高木駿太と言います…」

桜の自己紹介が終わり、次の人の自己紹介が始まっていた。

普段はメタバースに存在する教室に家からアクセスする為、ここにいるクラスメイトと実際に顔を会わすのは一年生の時の親睦会依頼二度目だった。

メタバースのアバターはかなりリアルだとは言え、こうして実際に対面すると、不思議な緊張感があった。


「高木 駿太」「橋本 花音」「林 圭吾」「小鳥遊 桜」がこの10日間を過ごす班メンバーだ。


「じゃぁ、僕が班長を務めさせて貰いますね。」


話合いの結果、聡太がこの班の班長という事になった。副班長は桜がつとめる。

パラレルワールド科を選択する学生は、将来従事したい職業を既に決めている人が多い。そのせいか、こう言った班決めの際は、班長をやりたがる者が多くなりやすいのだが、この班は少し様子がちがっていた。

班長をやりたいと手を挙げたのは駿太と桜だけで、残りの二人は無関心だった。

花音は班決めの間、長い髪にかけたウェーブをくるくると指に巻きつけていた。指先は長いネイルが光り、とても10日間野外活動を行う出立ではない。

圭吾は落ち着きなく、オドオドとしている。集団行動は苦手な様だった。見た目も細く、花音とは別の意味で野外活動に適さない様に見える。

聡太は自身に満ち溢れており、自分こそが班長に相応しいと疑わない。あまり人の意見に耳を傾ける様にはみえない。

なかなか癖の強いメンバーに桜は一抹の不安を覚えた。


「じゃぁ、まず、テントを張るベースを決めよう」


早速、駿太がリーダーシップをとりだす。駿太は山の方を指差し「あの山の麓にキャンプをはろう」と提案した。特に誰も反対しなかったので、一同は山の麓を目指す事にした。


各自学校から支給された小さなリュックをそれぞれ担ぎ移動をはじめる。

リュックの中には3日分の固形栄養食が入っていふる。それ以外は現地調達だ。


「そのピアス、かわいい」


移動中、花音が話しかけてきた。桜がつけているピアスに興味を持った様だ。


「ありがとう。お母さんから貰ったんだ。

かなり古いんだけど、お守りみたいな物なの」


桜は髪をかき揚げ、耳たぶについたピアスを花音に見えやすくする。


小さなオパールのピアスが耳元で色を変えながら光っていた。








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