ソラ・イン・アンダー オブ ユニバース⑤
一騎打ちを仕掛ける時は、他の者達は黙って成り行きをみまもる。
それが群れのルールだ。
例え優勢であろうと劣勢であろうと、それは何も変わらない。
酒呑童子はラードーンとソラの戦いを観戦している。
ソラが勝とうが負けようが、特に何も変わらない。
ただ、戦いを観戦している13体の『澱』達は、ソラの勝利を微塵も疑っていなかった。
ソラは今上空にてラードーンと交戦を続けている。
先程はまた「黒雷」を撃ち、ラードーンの腹に大きな穴を開けた。
穴の周りはまた液体状に波打ち、失った箇所を埋めて行く。
ラードーンは蛇の頭をムチの様にしならせ、四方八方からソラに向かって打撃を繰り出してくる。
「ノア ミュール」
ソラは避ける事なく、体の周りに黒い壁を作り出す。
壁にぶつかって、蛇の頭は次々に弾け飛んでいく。
はじけとんだ首は、波打ち、また直ぐにソラにむかって飛びかかってくる。
「単調だな」
ソラは手をかざし、ソラの周りに浮遊している黒い壁をソラとラードーンの間に並べる。
「ピケ」
黒い壁の前面から、無数の棘が飛び出すと、それぞれがラードーンの蛇の頭に刺さった。
ラードーンの動きが止まり、羽ばたきをやめた巨体は地面へと叩きつけられた。
戦いが始まってから、終始ソラの優勢だ。
裂け目の下に感じた悍ましい感覚は、勘違いだったのだろうか。
地面に落ちたラードーンはかろうじてその姿を保っていてるが、もう少しダメージを与えれば、その姿を止める事もできず液体化するだろう。
そうなれば、ソラはそれをのみこみ糧とすれば良い。
そうして、また一つアンダー オブ ユニバースの王へと至るのだ。
「灯れ」
止めを刺そうと右手に冥府の炎を宿す。
これを打ち込めば、それで終わりだ。
それは、それで面白く無いかもしれない。
今回は見逃してやるのも悪く無い。
ソラはそう思い直して、冥府の炎を吹き消した。
違う。
こいつはボクに仇なした、紛れもない敵だ。
見逃すなどあり得ない。
ソラはもう一度右手に炎を宿しラードーンへと掌をむける。が、ラードーンに打ち込む気にならない。
おかしい……
感情が上手く定まらない。
ここで敵を見逃すなどあり得ない……筈なのに、止めを刺す気になれなかった。
……いや、この感覚をソラは知っている。
「幻霧か」
人の意識を惑わす魔法だ。
ソラは自分の周りが薄い霧で覆われている事に初めて気づいた。
「アーリア・パロワ」
ソラの周りに風の壁ができ、周りの霧を吹き飛ばす。
それに従って頭の冴えのもどってきた。
周りを見回すと酒呑童子達はボンヤリとこちらを向いている。その視線はソラとラードーンからは外れた、遠くを眺めていた。
崖の下からクスクスと言う笑い声がきこえる。
ラードーンの身体が崩れ黒い液体になると、液体は崖の下の笑い声の元へと流れて行く。
「そうだ……
アンタの得意技だったよな」
崖の下から見慣れた顔がゆっくりと現れた。
随分の外見は変わっているが、顔は昔のままだった。
あの「私は何でも知っています」と言わんばかりの、人を見下したその顔は、今でも変わらず気に食わない。
その口元はうっすらと笑みを浮かべている。
「久しぶり」
相変わらずため息をつく様に話す。
「久しぶりだな。雫」
昔、行動を共にし女の姿がそこにはあった。




