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ホエイルホエル  作者: たろ
四幕

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ソラ・イン・アンダー オブ ユニバース⑤


一騎打ちを仕掛ける時は、他の者達は黙って成り行きをみまもる。

それが群れのルールだ。

例え優勢であろうと劣勢であろうと、それは何も変わらない。


酒呑童子はラードーンとソラの戦いを観戦している。

ソラが勝とうが負けようが、特に何も変わらない。

ただ、戦いを観戦している13体の『澱』達は、ソラの勝利を微塵も疑っていなかった。


ソラは今上空にてラードーンと交戦を続けている。


先程はまた「黒雷」を撃ち、ラードーンの腹に大きな穴を開けた。

穴の周りはまた液体状に波打ち、失った箇所を埋めて行く。


ラードーンは蛇の頭をムチの様にしならせ、四方八方からソラに向かって打撃を繰り出してくる。


「ノア ミュール」


ソラは避ける事なく、体の周りに黒い壁を作り出す。

壁にぶつかって、蛇の頭は次々に弾け飛んでいく。

はじけとんだ首は、波打ち、また直ぐにソラにむかって飛びかかってくる。


「単調だな」


ソラは手をかざし、ソラの周りに浮遊している黒い壁をソラとラードーンの間に並べる。


「ピケ」


黒い壁の前面から、無数の棘が飛び出すと、それぞれがラードーンの蛇の頭に刺さった。

ラードーンの動きが止まり、羽ばたきをやめた巨体は地面へと叩きつけられた。


戦いが始まってから、終始ソラの優勢だ。


裂け目の下に感じた悍ましい感覚は、勘違いだったのだろうか。


地面に落ちたラードーンはかろうじてその姿を保っていてるが、もう少しダメージを与えれば、その姿を止める事もできず液体化するだろう。

そうなれば、ソラはそれをのみこみ糧とすれば良い。


そうして、また一つアンダー オブ ユニバースの王へと至るのだ。


「灯れ」


止めを刺そうと右手に冥府の炎を宿す。


これを打ち込めば、それで終わりだ。

それは、それで面白く無いかもしれない。

今回は見逃してやるのも悪く無い。


ソラはそう思い直して、冥府の炎を吹き消した。


違う。

こいつはボクに仇なした、紛れもない敵だ。

見逃すなどあり得ない。


ソラはもう一度右手に炎を宿しラードーンへと掌をむける。が、ラードーンに打ち込む気にならない。


おかしい……


感情が上手く定まらない。

ここで敵を見逃すなどあり得ない……筈なのに、止めを刺す気になれなかった。



……いや、この感覚をソラは知っている。


「幻霧か」



人の意識を惑わす魔法だ。

ソラは自分の周りが薄い霧で覆われている事に初めて気づいた。


「アーリア・パロワ」



ソラの周りに風の壁ができ、周りの霧を吹き飛ばす。

それに従って頭の冴えのもどってきた。

周りを見回すと酒呑童子達はボンヤリとこちらを向いている。その視線はソラとラードーンからは外れた、遠くを眺めていた。


崖の下からクスクスと言う笑い声がきこえる。


ラードーンの身体が崩れ黒い液体になると、液体は崖の下の笑い声の元へと流れて行く。


「そうだ……

アンタの得意技だったよな」


崖の下から見慣れた顔がゆっくりと現れた。

随分の外見は変わっているが、顔は昔のままだった。

あの「私は何でも知っています」と言わんばかりの、人を見下したその顔は、今でも変わらず気に食わない。

その口元はうっすらと笑みを浮かべている。


「久しぶり」


相変わらずため息をつく様に話す。


「久しぶりだな。雫」


昔、行動を共にし女の姿がそこにはあった。


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