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ホエイルホエル  作者: たろ
四幕

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ソラ・イン・アンダー オブ ユニバース②




自我と呼ぶには、あまりにお粗末な意識の中で、ただ灰色の世界を徘徊していた。


アレと出会うまでは……


悍ましい存在の筈の自分ですら、悍ましいと感じる。

ボンヤリとした意識が、アレと出会う事でハッキリと自我を取り戻していく。


そうだ、オレは酒呑童子だ。酒呑童子だったのだ。

肉体をなくし、この世界の底に澱み溶け合うまでは、オレは酒呑童子だったのだ。


「おまえ……なに……」


思う様に言葉が出ない。

むしろ未だ言葉を覚えていた事に驚きだ。


世界に溶けていた自我が輪郭を取り戻す。


「なんだ。お前、喋れンのかよ」


悍ましく感じたアレは、よく見ると人の形をしている。

ここに何故、受肉体がいるのだろうか。あり得ない。が、そんな事はどうでもいい。


本能が教えている。

従う以外の選択肢は持ち得ない。

アレより自身が格下なのだ。


「お前、名前は?」


「……しゅて……」


「シュテ?

お前、あれか?悪魔かなんかか?」


酒呑童子と伝えたかったが、シュテでも何でもいい。

この後、オレはアレに取り込まれるのだから。


「まぁ、いいや。

シュテ、お前ボクと来い」


「一人で暇だ」


気まぐれなのだろうが、何でもいい。

自分には従う以外の選択はない。


「喰わせろ」と言われれば食われるし「ついて来い」と言われればついていく。


「おや?シュテが仲間にして欲しそうにこっちをみている」


そう言うと、アレは一人でに笑いだした。

相手を服従させる為の儀式なのだろうか。


「ソラはシュテを仲間にした!」


そう言うと、アレは一人でまた笑った。




ソラと過ごすうちに自我は輪郭をより鮮明にしていった。

今では言葉も流暢に話す事ができる。

もともと喋っていたイントネーションも戻ってきた。


「何で、ソラはこんなとこにいてはるの?

こんな事、普通はありえへんねんでぇ」


「じゃぁ、フツーじゃ無いって事だろ」


ソラは手頃な『澱』を見つけては、殴りつけては取り込んでいる。

酒呑童子はソラのこの行為を、食事の様な物なのだろうと考えている。

たまに酒呑童子の様に自我を取り戻す『澱』とも出会った。ついてくる者も居れば、ソラにのまれる者もいた。

いつしか、ソラの周りには数十体の『澱』が集まっていた。


「ソラはどこ目指してますの?」


ソラは常に何処かに向かって歩いている。こんな灰色の世界に目的地がある様に思えない


ソラは「ンッ」と顎を振り方向を示した。

酒呑童子はソラが指した方を見る。


相変わらずの曇天が続いている。

特に何か目的になる様な物は見当たらない。


もう一度、ソラが指した方角をまじまじと見るが、特に変わった物は見当たらない。


相変わらずの曇天を、いつも通りケートスが泳いでいるだけだった。



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