ソラ・イン・アンダー オブ ユニバース②
自我と呼ぶには、あまりにお粗末な意識の中で、ただ灰色の世界を徘徊していた。
アレと出会うまでは……
悍ましい存在の筈の自分ですら、悍ましいと感じる。
ボンヤリとした意識が、アレと出会う事でハッキリと自我を取り戻していく。
そうだ、オレは酒呑童子だ。酒呑童子だったのだ。
肉体をなくし、この世界の底に澱み溶け合うまでは、オレは酒呑童子だったのだ。
「おまえ……なに……」
思う様に言葉が出ない。
むしろ未だ言葉を覚えていた事に驚きだ。
世界に溶けていた自我が輪郭を取り戻す。
「なんだ。お前、喋れンのかよ」
悍ましく感じたアレは、よく見ると人の形をしている。
ここに何故、受肉体がいるのだろうか。あり得ない。が、そんな事はどうでもいい。
本能が教えている。
従う以外の選択肢は持ち得ない。
アレより自身が格下なのだ。
「お前、名前は?」
「……しゅて……」
「シュテ?
お前、あれか?悪魔かなんかか?」
酒呑童子と伝えたかったが、シュテでも何でもいい。
この後、オレはアレに取り込まれるのだから。
「まぁ、いいや。
シュテ、お前ボクと来い」
「一人で暇だ」
気まぐれなのだろうが、何でもいい。
自分には従う以外の選択はない。
「喰わせろ」と言われれば食われるし「ついて来い」と言われればついていく。
「おや?シュテが仲間にして欲しそうにこっちをみている」
そう言うと、アレは一人でに笑いだした。
相手を服従させる為の儀式なのだろうか。
「ソラはシュテを仲間にした!」
そう言うと、アレは一人でまた笑った。
ソラと過ごすうちに自我は輪郭をより鮮明にしていった。
今では言葉も流暢に話す事ができる。
もともと喋っていたイントネーションも戻ってきた。
「何で、ソラはこんなとこにいてはるの?
こんな事、普通はありえへんねんでぇ」
「じゃぁ、フツーじゃ無いって事だろ」
ソラは手頃な『澱』を見つけては、殴りつけては取り込んでいる。
酒呑童子はソラのこの行為を、食事の様な物なのだろうと考えている。
たまに酒呑童子の様に自我を取り戻す『澱』とも出会った。ついてくる者も居れば、ソラにのまれる者もいた。
いつしか、ソラの周りには数十体の『澱』が集まっていた。
「ソラはどこ目指してますの?」
ソラは常に何処かに向かって歩いている。こんな灰色の世界に目的地がある様に思えない
ソラは「ンッ」と顎を振り方向を示した。
酒呑童子はソラが指した方を見る。
相変わらずの曇天が続いている。
特に何か目的になる様な物は見当たらない。
もう一度、ソラが指した方角をまじまじと見るが、特に変わった物は見当たらない。
相変わらずの曇天を、いつも通りケートスが泳いでいるだけだった。




