ソラ・イン・アンダー オブ ユニバース①
トプトプと身体の中で波打っている。
黒くドロッとした液体に身体が満たされる。
ソラは目が覚めた時、黒い塊が何なのか理解した。
世界の『澱』
中心世界の下に隔絶された別の世界。
そこに沈み溜まった澱み。
肉体を持たない『負』あるいは『陰』
それが黒い塊の正体だ。
ソラは灰色の世界を見回す。
相変わらずハリボテの様な景色が広がっている。
ここはきっと『地獄』だ。
根拠はない。ただ確信があった。
ソラの中に溜まった『澱』が溶けて馴染むにつれて、『澱』達の感情が流れ込んで来た。
それをソラはよく知っている。ソラが慣れ親しんだ負の感情だ。
それと共に複数の記憶も流れ込んできた。
遠い遠い、まだ世界が隔絶される前の記憶。
断片的に流れ込む『争い』の記憶。
混沌とした世界が冷靜されて、隔たるまでの記憶。
記憶の波に飲まれ、ソラは嘔吐と気絶を繰り返した。
目が覚めるとまた別の記憶が流れ込み、耐えきれなくなると気絶した。
何度も繰り返す内に記憶の波に耐えられる様になった。嘔吐はするが意識を保つ事は出来る。
記憶の波を乗り越える度に、今までに無かった感覚が溢れる。
「あーぁ……
これ、アレだ。」
パパパッ パッパ パッパッパー
頭の中でファンファーレがなる。
よくやったRPGの効果音。
「レベルアップだ」
身体に入れた『澱』の分だけ、経験値が溜まっていく。
「ふはっ……
はははっ……
はははははハハハハはハハハ」
謎の笑いが込み上げてくる。
この感情はなんと呼べばいいのだろう。
笑いながら空を見上げる。
ずっと曇天が続いている。
地獄にも空はあるのか……
ボンヤリとそんな事を考えていると、見慣れた姿を空にみつけた。
「マジか……」
ソラの目が捉えたのは、半透明の鯨だった。
地獄の空にも鯨が泳いでいた。
鯨のあとを追いかけて歩いた。
他に目的も無い。鯨に届く事などあり得ないが、それ以外にやる事も無かった。
途中、いくつかの黒い塊に出会ったが、見つかると殴りつけた。ビチャと崩れた後ソラにまとわりついてくる。
ソラは口を開けてそれらを受け入れた。
その度にファンファーレが頭の中で鳴り響く。
「ほら……ボクは……
オレ……ワタシ……」
定まらなくなる一人称を、グッと押し込み自分を定める。
気を抜くと『澱』に侵食されそうになる。
溶けて混ざり合うまで、自分を保つ。
嘔吐をしながら鯨を追いかける。
何日も、何日も同じ事を繰り返した。




