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ホエイルホエル  作者: たろ
四幕

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ドラクエかファイファン、どっちなんだよ。

 

「ほな、また」


朱天童子は背を向けて、階段を降り始めた。

唐突に現れ、唐突に帰ろうとする。


「お前……

何しに来たんだ……」


カイは朱天童子を思わず呼び止めて、直ぐに後悔した。今はもう一戦かわす体力など残っていないのだ。


朱天童子は振り返ると、カイを見上げた。


「何て……あれ?何しに来たんやったかなぁ」


「茨木童子は、キミ等を喰うつもりやったみたいやけど、ボクはキミのお陰でぎょうさん頂いたから、今日の所は、もぅ満足やわ」


「『喰う』って、お前等人を食べる様になったのか」


喋る様になっただけでなく、鬼は人の肉を食べる様になったのか……


「何言うてますの。元からずっと、キミらはボク等の飯やんか」


朱天童子は、カイの質問の意味がわからないと言った調子で答え、少し思案して「あぁ!」とまのぬけた声をあげた。



「そうか、そやね。そらそやわ。

キミ等、なぁんも知らんのやったね」


「何の事だ?」


「何って、そらぁ全部やんか。

ソラも何も知らんかったもんねぇ」


「ソラ……?」


ソラとは、ロッズ帝国から国境に進軍し、カイに捕まった後にフォレス王国の牢屋から姿を消した、あのソラの事をいっているのだろうか。


ソラと雫はあの後行方知れずのままだった。


何故、朱天童子の口からその名前がでてくるのか。


「キミに説明するのも面倒くさいから、また会う機会があったらその時までに、勉強しとき」


朱天童子はカイを見上げてニヤァと笑う。


「見逃してあげるんやから、『命、大事に』やで」


そう言うと、カラン、カランと乾いた下駄の音を響かせて朱天童子は消えて行った。


カイは緊張がとけたせいか足の踏ん張りが効かず、その場にドサッと座り込んだ。


「ドラクエかファイファン、どっちなんだよ」


緊張がほぐれて一番に出た意外な自分の言葉に、思わず笑った。


空を見上げると、鯨が遠くを泳いで行く。


ボンヤリと鯨を眺めていると、カイのブレスレット形の携帯端末がなりだした。フォログラム通信も行えるモデルだ。

世界の統合がおきてから、今までつながらなかった通信電波がパラレルワールドにも届く様になった。


カイはブレスレットをタップする。

フォログラムは使わずに、骨伝導通話のみ使用した。


「カイ君、無事ですか」


電話の相手は長谷川だった。


「良かった。至急、PW23に向えますか!?」


長谷川の口調は切羽詰まっている。

何か良く無い事が起こったに違いない。


「何があったんですか?

pw23にはタケさんのチームがいた筈ですよね?」


「……」


長谷川は少しの沈黙の後、意を決した様に大きくいきをはいた。



「松竹梅が全滅した可能性があります」





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