再会
「やっと、見つけた」
蝋燭の火がチラチラとゆらめく。
大広間の壇上に座る鎧塚は広間に現れたソラを見下ろした。
あれから二十年以上経っているが、ソラは5、6歳、歳ををとっているだけに見えた。
ブラックホールに囚われている期間の問題なのだろう。
鎧塚は満足そうにうなずく。
ここまでは、鎧塚の計画通りに事は進んでいる。
ここから盤上をどう動かすか……
予定とは違った選択肢が頭をよぎった。
「ボクはアンタを信じてたんだぞ!」
ソラは荒んだ瞳で鎧塚を睨みつけた。
「よく戻ってきてくれた」
鎧塚はわざとらしく、憂いをおびた表情でソラに語りかける。
「君が成長して、私の元へ戻ってくる事はわかっていた。
しかし、随分大変な思いをした様だ……
君の成長の為とはいえ、辛い思いをさせてしまった」
鎧塚はゆっくりと階段をくだり、ソラの前に立つと両肩に手を置く。目には涙を浮かべてみせた。
涙は流れるか流れないか位に留めておくのが「抑えきれない感情」が込み上げてきている様に見せるのに効果的だ。
「ボクが今まで、どんな思いをしたのか分からせてやる!アイツをだせ!
ボクをあんな所へ送ったアイツを!!」
「……ヤツか。
ソラ君。君があちらへ行っている間にいろいろあってね。ヤツは今はもう……」
何か言おうとしたソラを鎧塚は抱きしめた。
今、抱きしめるのもまた効果的だ。
久しぶりに感じる人の温もりは、ソラを懐柔するのに必要な要素だろう。
「立派になった」
本心が口をついて出てしまった。
そんなトーンで囁く。
ソラは鎧塚の事を振り解こうとはしない。
ソラは元々鎧塚に心酔していた。する様に仕向けていた。それは今でも変わらない様に根付かせておいた。
何年たっても芯の部分は同じだ。
自尊心が強く、しかし自分に自信が持てず、理想と現実の差を手に入れた力で埋める。
去勢をはり、横暴な態度と言葉遣いで自身を大きく見せようと必死だ。
目の前のソラはそれなりに容姿は成長していたが、中身はそれ程変わっていない。
ソラを認め「必要だ」と求めやる。それだけで良い。
「あんな世界で、よく頑張った。ホントによく頑張った」
「うぅっ」とソラが啜り泣く。
本当に御し易い。
それでも、この男は大切な石の一つだ。ソラを起点に幾つ布石を置いている。
さて、ソラの掌握も無事に終わった。
ここからは必要な事をいくつか確認しておかなければならない。
鎧塚の『レセプター』としての能力は他と違い、特殊だった。そのお陰で今の地位『三本足』まで上り詰められた。
どのルートを辿って、ここに至ったかを確認する必要がある。
「今までの話を聞かせてくれるか?」
鎧塚はソラを別の部屋へと誘う。
ソラが語った内容は鎧塚の望むものだった。
鎧塚は満足そうに頷く。
「そうか。ソラ君。
君がアンダー オブ ユニバースで出会った『澱』は、きっとこれから君の役に立つはずだ」
鎧塚は「君の」と言った部分を心の中で「私の」と置き換えて、満足そうに頷いた。




