人と鬼
短い呼吸を独特のリズム繰り返す。
『氣』を全身に巡らせ身体能力の向上を行う。
さっきは茨木童子の力量を見誤った。
相手も何か特別な力を使っている。
侮ったつもりはない。
それでも力を尽くさなければならないだろう。
茨木童子はその巨体から生まれる膂力は桁外れだ。
正面から受けずに相手の力を逸らすように捌く。
茨木童子は己の肉体を駆使して戦う。
そこにあるのは単純な暴力だ。その単純な暴力が異常なまでに強かった。
4メートルはある巨大、その腕もまた長く、なかなか懐入り込む事は出来ない。
謎の黒いモヤのせいで魔法の力は打ち消されてしまう。
茨木童子の後ろには鬼達が控えている。
侍達は怯えてしまっている。
援護は期待できないだろ。
殴りかかってくる茨木童子に疲れの色は見られない。
そもそも鬼達の目的は何のだ。
「どうして、お前らは人を襲うんだ!」
殴りかかってきた拳を捌きながら、茨木童子を問いただす。
言葉が通じるなら、何か違う道もあるかもしれない。
「あん?そんなモン、理由もクソもあるかい!」
茨木童子は拳を捌かれた勢いを利用して、後ろ回し蹴りを繰り出してくる。
屈んでくぐり抜け、鬼達の群れの方に抜ける。
刀身に纏った炎を伸ばし、鬼達を薙ぎ払う。
少しでも相手の戦力を削いでおきたい。
「ほらなぁ、キサマもそうやんけ!」
茨木童子はゲタゲタと嬉しそう笑う。
「なにが!?」
「キサマも、そうやって殺すやろが!」
「それは……」
「お前達が襲いかかってくるから」と言いかけて、ふと思い至る。
本当にそうだろうか。
鬼に襲われるから仕方なく、鬼を殺していたのだろうか。
だとしたら、鬼を殺す事に何の罪悪感も覚えないのは何故だ。
『鬼結晶』を得る為に鬼を傷つける事をさも当然に行っていた。
鬼は人間を襲うもの。人間もまた同じなのだ。
そこにある隔たりは決して埋まる事がないのだろう。
世界がどれだけ統合されたとしても……
「エェやんけ!それで!」
「鬼は人を殺し、人は鬼を殺す!
それでエェ!
とことんまで殺ったらエェやんけ!」
「それが!人と鬼やろがぁ!」
何故か、その言葉で先ほど生まれた迷いが消えた。
そうだ。人と鬼はそうなのだ。
カイは「ふぅ」と深く息を吐き整える。
決着をつけよう。




