U of U-仮説
「さて、おさらいをしようか」
エヴァ博士は、カイと長谷川を丸椅子に座らせた。
面白いもので、これだけ技術が進歩しても、座るものは昔と然程変わっていない。
「君達は、私の説を何処まで理解しているのかな?」
エヴァ博士は目で長谷川に「続きをしゃべれ」と促した。
「中心世界と『同期』『拡張』を行っている世界は全て『地球平面説』の世界である。と言うのが、1番の肝になる部分だと理解しています」
「つづけて」
「今まで、現れたパラレルワールドは、全て海上に大陸として現れています。コレは偶然では無く、必然です。」
「その理由は?」
「何故なら、パラレルワールドは球体では無く、海の終わりがある『地球平面説』の世界だからです。
拡張されたパラレルワールドは、海の外に対して殆ど興味をしめしません。
あれだけ科学が発達した『マキナ』でさえそうでした。
それはつまり…」
「少し、訂正を入れよう」
エヴァ博士は長谷川の言葉を遮り、人差し指で上を指した。
「彼らは宇宙にも興味を示していない。
彼らの世界は大陸で完結しているんだよ」
「まだ私が話しますか?」
長谷川はうんざりした表情で問いかける。
「いや、もう結構だ」
長谷川をおざなりにあしらうと、エヴァ博士はカイの方に目を向けた。
その口調は長谷川と話す時より穏やかだ。
「私はね、何故、鯨が、この世界に現れたのかには、あまり興味は無いんだよ。
なので、コレは何の立証も確証も無い、ただの戯言なんだけれどね……
まぁ、科学者が夢想家だってイイじゃないか。
ねぇ、カイ君」
カイは話しの腰を折らない様に頷く。
「宇宙だよ。
私達の世界には宇宙がある。
コレこそが、この世界を中心たらしめる理由なのさ。
まさに、センター オブ ユニバース だ」
エヴァ博士は自分の言葉に陶酔しているのか、まるで舞台でシェイクスピアの演劇を披露しているかの様に語る。
「私達の世界を中心に、パラレルワールドは横並びに広がっているのさ。
そして、更に言うならば、この世界はパラレルワールドと、未だ完全に一つになっていない。
ここで科学的な根拠を並べても、長谷川君、君に理解出来るとは思えないので、わかりやすく端的にその根拠を提示してあげよう」
エヴァ博士は何かと長谷川につっかかる。
二人の相性は悪い。
長谷川は言葉にせず、ジェスチャーで「どうぞ」とエヴァ博士に続きを促す。
先ほど目で促された意趣返しだろう。
この二人は似ているのだ。
二人の相性が悪いのだとしたら、それは同族嫌悪なのだとカイは思う。
エヴァ博士は勝ち誇ったかのように「フフン」と鼻をならし、少し間を溜めた。
「パラレルワールドの空に鯨は泳いでいないだろう?」
「あっ」
つい、声が漏れてしまう。
何故、指摘されるまで気付かなかったのだろう。
これまで、拡張して来た23のパラレルワールド全ての空に、確かに鯨は泳いでいなかった。




