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ホエイルホエル  作者: たろ
三幕

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永遠少年⑰


[ありがとう]


と、ゲンに短いメールを返信する。

ゲンから六度目の誕生日に祝いのメールが来た。

毎年かかさずに送ってくれる。


久々にタコの唐揚げが食べたい。


最近は、和歌山には帰っていない。

ゲンとの連絡も極力とらない様にしているが、やはり、連絡が来ると嬉しくて返信をしてしまう。



カイは自室の姿見の前に立つ。

相変わらず、少年の様な自分の姿がうつっている。


コレはもう疑いようが無いか……


先日、世界管理機構の定期検査を終えた後、主治医に呼び出された。


「カイ君、コレは君に話すべきか、迷ったんだけどね…

長谷川さんとも相談して、君には伝えておくべきだろう。と言う事になったんだ」


医師の口調からして、良い報告では無さそうだ。かと言って深刻すぎる感じもしない。


「僕としては、もう少ししっかりと理由がわかってから説明したかったんだけど、正直な所、原因を解明する糸口すらない状況でね」


カイは黙って医師の言葉を聞く。


「カイ君はテロメアって、知ってるかな?」


「染色体の先端にある部分ですよね」


大学の講義で聞いた記憶がある。

たしか大学の教授は『命の回数券』と表現していた。


「よく知ってるね……ってそうか、君はもうすぐ大学院を卒業するんだったよね。

それくらいは知ってるか。

どうしても、高校生くらいに見えるから、勘違いしちゃうね」


フーッと一呼吸おいて主治医は話出す。


「今、僕が言った事にも繋がるんだけど、カイ君は若く見られるよね?

と言うよりも、昔から変わっていない」


医師が指摘して来た事に、チクリと胸が痛む。

今まで気付かないフリをしてきたが、確かにカイの身体は成長していない。

今までは「若く見える」程度だと誤魔化してきた。

アオや雅には「どんな化粧水使ってるの」としつこく聞かれるし、たまに会う宏美には「本当に若返りの薬をのんでいるだろ」と言われる始末だ。


「カイ君に受けてもらっている検査の中に、テロメアを調べるものがあってね。

君のテロメアの長さは検査を始めた6年前から変わっていないんだ」


「それはつまり……?」


「科学的に見ても、君の体は老化していない」


やはり……

驚きよりも、むしろ今の気持ちは納得に近い。


「あまり驚かないね」


「正直なところ、どこかそんな気はしていたので」


うん。と医師は頷く。


「君自身が一番感じてるよね。

今までして来た検査は、半分は君の不老のデータ解析にあったんだ。

本来、テロメアは細胞分裂をする度に短くなり、細胞分裂ができな来ると死んでいくだ。

全ての細胞がそれを繰り返し、分裂できなくなって行く事で老化がおこるんだ。

でも、逆にテロメアの長さが減らないと言う事は永遠に細胞分裂が繰り返される事にもなる。

ビンの中で細菌が増え続ければ、いずれ溢れるよね?

君の身体でも、本当ならそれが起きる筈なんだ」


医師の話を聞きながら、閃きクイズを思い出した。


『1分毎に二倍になる細菌を瓶に一匹いれておくと、15分で満杯になった。では初めから二匹入れておくと、瓶が満杯になるのは何分後だろうか?』


確か答えは……


そんな事を考えている場合じゃないのに、『細菌』と言う単語に引っ張られたのか、思考がおかしな方向へ向かっている。


「カイ君?聞いてるかい」


「すみません。考え事をしていて」


「うん。それは仕方ないよ。

自分が不老だと知れば、それは驚くよね」


そう言う事ではないのだが、愛想笑いで話をあわせた。


「君の身体に起こっている現象を、多角的に検証しているんだけど、まだ何もわかっていないんだ」


「……そうですか」


暫く沈黙が続き、気まずさに負けたのか医師は次の検査の約束だけ確認し、部屋を出て行った。


カイは一人残された応接室で、天井をみつめる。


ビンが一杯になるのは何分後だっただろう……



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