永遠少年⑯
「ちょっと……
カイ、何してるの??」
アオの声と共に居酒屋のざわめきのが聞こえる。
カイはシミターを鞘に戻した構えで立っていた。
周りには酔った若者が演劇の小道具を使い悪ノリしてる様に見えるだろう。
「……ごめん」
倒れた椅子を戻し、座り直す。
今起こった出来事をアオに話すか躊躇われた。
アオはカイの表情から何かが起こった事は察している様だった。
『ブラックホール』と言う声が聞こえてから、あの真っ暗な空間にいた。と、言う事は、あの魔法を使った奴は、この居酒屋にいたのでは無いか……
カイは振り返り店の中を見渡す。
黒いパーカーのフードを被った男が店から出て行く所だった。
「ゴメン!直ぐ戻る!」
カイは席を立ちフードの男を追いかけた。
居酒屋はビルの二階にある。エレベーターは動いていない。階段だ。
防火扉を開けると、踊り場にフードの男が立っていた。
「驚いたぁ。
あそこから、自力でとどってくるとか、スッゴ」
上から見下ろす形なので目元は見えない。口元が笑っているのはわかる。
声はやはり聞き覚えがある。
ロッズとフォレスの国境であった男に間違いない。
しかし、今見ると写真で見たペタの口元とは似ても似つかない。
「いいね。面白い!
今の手札じゃ、君に嫌がらせはできないなぁ」
「何が……目的だ」
「それは、今言っちゃうと面白くないな
君とはもっと遊びたくなったし、また今度ね」
そう言うとフードの男は階段をおりていった。
おかしい。
何故か追いかける気が失せている。
ロッズの時もそうだ。あの時も何故、逃しても良いと思ったのだろう。
おかしい。と思う反面、追いかけても無駄だと言う思いが思考を遮ぎる。
「レベェイユッ!」
アオの声で我にかえった。
頭のモヤが晴れた感じがした。
振り返ると、階段の入り口にアオがたっている。
手には魔女の本が握られていた。
「カイ、今、魔法で攻撃うけてる!」
アオはカイの近くに駆け寄ると「アーリア・パロワ!」と唱えた。
風の壁が二人の周りにできる。
すると風に押し除けられて密度を増した霧が、風の壁の周りに現れた。
「これ『幻霧』って言う魔法みたい。
この霧を吸った人は、軽い催眠にかかるんだって」
アオは、魔女の本をめくる。そこには魔法陣が描かれていた。
どうやら魔女の本は危機を救う魔法を教えてくれるらしい。
「ありがとう。もう大丈夫!」
カイは急いで階段を駆け降りた。
ビルは前は人の往来が多く、思う様に進めない。
カイは左右を見回すがフードの男は何処にもいなかった。




