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ホエイルホエル  作者: たろ
三幕

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永遠少年⑮



「ブラックホール」



カイの周りが突如として真っ暗な空間に変わる。


「知ってるかい。

超重力の圧縮が起こるとその中心に向かう程、光さえも速度を落として鈍化し、中心では止まってしまうんだ。

光の速さとは、つまり時間なんだけど、光が止まると言うことは、時間が止まるって事なんだよ」


姿は見えないが、聞き覚えがある声だ。


「ペタ……か?」


「あぁ、君たちの前では、そう言う事にしてたっけ」


突然、暗闇の中に一人放り出されたが、カイはなぜか

落ち着いていた。海に漂う前の微かに覚えている、あの白い空間に似ているからかもしれない。


周りを確認する。


アオはいない。ここに連れてこられたのはカイだけの様だ。居酒屋で座っていた椅子は無いが、魔女の本とそれを入れていたリュックは一緒にもっていた。

リュックの中にはジュロンから買い取ったシミターがはいっている。世界管理機構にパラレルワールドから持ち帰った物は鑑定に出す事になっている。今日、長谷川に確認してもらい、銃刀法違反にならない様に許可証を発行してもらった所だった。

この状況で役に立つかは分からないが、無いよりは良い。


「ブラックホールの面白い所はね、吸い込むだじゃ無く、吐き出す事なんだ。

超重力で時空の歪みが生じた後、別の何処かへ吐き出すんだよ。降着円盤って呼んでたかな?」



光と闇の精霊の話を魔女とした時の直感が呼び起こされる。

あの時言葉に出来なかった答えを声の主が語っている。


「カイ……

君って何か、特別だよね。

鎧塚とも話したけど、ちょっと邪魔かな」


「あれ?

何も言わないの?

ソラはここに連れて来た時は喚きちらかして、五月蝿いのなんのって……

アレはアレで鬱陶しかったけど、何もリアクション無いのもしらけるなぁ」


カイはリュックの中でシミターを握り、状況を確認する。

周りの見えない中で無闇に動くのは得策ではない。

声の主、ペタと思っていた人物の目的もまだ分からない。


「まぁ、いいや。

暫くしたら、何処かに吐き出されると思うから。

直ぐかもしれないし、何年も先かもしれないし……

ここでは時間止まってるからあくまでも体感なんだけどね。

それじゃぁね」



「…」


「……」



暫く待ってみたが、何も反応は無い。

声の主はこの場を去ったのだろう。

この暗闇の中に一人カイは取り残された様だ。


暗闇に目が慣れると言う事がない。

本当の闇の中だ。

地面があるわけでもなく、ただ暗闇に浮かんでいる。

強いて言うなら、濃度の濃い液体に浸かっている様な感覚だ。


取り敢えず、シミターを取り出して振り回してみる。

動きに合わせて、小さな粒が流動的に動く感覚がある。光と闇の精霊だ。

この空間は光と闇の精霊で埋め尽くされている。


声の主の言う通り、何かが起こるのを待つしか無いのだろうか。


カイは目をつぶる。

今までの経験が、繋がりそうな感覚がある。

『光と闇の精霊』『魔法』『シミター』『剣術』

……『断空』


そこまで思考を回した時、魔女の本が光だした。

この暗闇の中で自ら発行している。

カイは本を手に取るとページをめくった。

見開きに魔法陣が一つ描かれてている。


カイが先程思い至った答えがそこに描かれていた。



カイはシミターに魔力を込める。

光と闇の精霊達が集まってきた。


意識を集中する。


重力をさらに圧縮し、シミターの刃に纏わせるイメージを繰り返す。


もっと……


まだ足りない……


圧縮を繰り返す為に魔力を込める。

限界まで研ぎ澄ます。


もっと……


もっと……



「次元断空」


カイの一閃が暗闇を切り裂いた。



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