永遠少年⑮
「ブラックホール」
カイの周りが突如として真っ暗な空間に変わる。
「知ってるかい。
超重力の圧縮が起こるとその中心に向かう程、光さえも速度を落として鈍化し、中心では止まってしまうんだ。
光の速さとは、つまり時間なんだけど、光が止まると言うことは、時間が止まるって事なんだよ」
姿は見えないが、聞き覚えがある声だ。
「ペタ……か?」
「あぁ、君たちの前では、そう言う事にしてたっけ」
突然、暗闇の中に一人放り出されたが、カイはなぜか
落ち着いていた。海に漂う前の微かに覚えている、あの白い空間に似ているからかもしれない。
周りを確認する。
アオはいない。ここに連れてこられたのはカイだけの様だ。居酒屋で座っていた椅子は無いが、魔女の本とそれを入れていたリュックは一緒にもっていた。
リュックの中にはジュロンから買い取ったシミターがはいっている。世界管理機構にパラレルワールドから持ち帰った物は鑑定に出す事になっている。今日、長谷川に確認してもらい、銃刀法違反にならない様に許可証を発行してもらった所だった。
この状況で役に立つかは分からないが、無いよりは良い。
「ブラックホールの面白い所はね、吸い込むだじゃ無く、吐き出す事なんだ。
超重力で時空の歪みが生じた後、別の何処かへ吐き出すんだよ。降着円盤って呼んでたかな?」
光と闇の精霊の話を魔女とした時の直感が呼び起こされる。
あの時言葉に出来なかった答えを声の主が語っている。
「カイ……
君って何か、特別だよね。
鎧塚とも話したけど、ちょっと邪魔かな」
「あれ?
何も言わないの?
ソラはここに連れて来た時は喚きちらかして、五月蝿いのなんのって……
アレはアレで鬱陶しかったけど、何もリアクション無いのもしらけるなぁ」
カイはリュックの中でシミターを握り、状況を確認する。
周りの見えない中で無闇に動くのは得策ではない。
声の主、ペタと思っていた人物の目的もまだ分からない。
「まぁ、いいや。
暫くしたら、何処かに吐き出されると思うから。
直ぐかもしれないし、何年も先かもしれないし……
ここでは時間止まってるからあくまでも体感なんだけどね。
それじゃぁね」
「…」
「……」
暫く待ってみたが、何も反応は無い。
声の主はこの場を去ったのだろう。
この暗闇の中に一人カイは取り残された様だ。
暗闇に目が慣れると言う事がない。
本当の闇の中だ。
地面があるわけでもなく、ただ暗闇に浮かんでいる。
強いて言うなら、濃度の濃い液体に浸かっている様な感覚だ。
取り敢えず、シミターを取り出して振り回してみる。
動きに合わせて、小さな粒が流動的に動く感覚がある。光と闇の精霊だ。
この空間は光と闇の精霊で埋め尽くされている。
声の主の言う通り、何かが起こるのを待つしか無いのだろうか。
カイは目をつぶる。
今までの経験が、繋がりそうな感覚がある。
『光と闇の精霊』『魔法』『シミター』『剣術』
……『断空』
そこまで思考を回した時、魔女の本が光だした。
この暗闇の中で自ら発行している。
カイは本を手に取るとページをめくった。
見開きに魔法陣が一つ描かれてている。
カイが先程思い至った答えがそこに描かれていた。
カイはシミターに魔力を込める。
光と闇の精霊達が集まってきた。
意識を集中する。
重力をさらに圧縮し、シミターの刃に纏わせるイメージを繰り返す。
もっと……
まだ足りない……
圧縮を繰り返す為に魔力を込める。
限界まで研ぎ澄ます。
もっと……
もっと……
「次元断空」
カイの一閃が暗闇を切り裂いた。




