永遠少年⑭
長谷川の長い長い独白の後、カイとアオは帰路についた。
カイは、半分は世界管理機構に所属している様なものだが、あくまでも今までは協力しているだけで、一定の距離は保って来たつもりだ。
しかし、今回の長谷川の申し出を受ければ、良くも悪くもどっぷりと世界管理機構に浸かる事になる。
いっその事、今までの事は知らないフリをして、普通に暮らしていこうか……
しかし、カイにはそれが出来ない予感があった。
アオはどうするのだろう。
カイとしては、これ以上危険な事に関わってほしくは無いが、既に同期してしまったアオもまた、普通の日常は送れないのかも知れない。
「カイ…先輩」
不意にアオに呼ばれて。顔を上げた。
知らない間に考え込んで、下を向いていた様だ。
「どうしたの?
急に、また『先輩』呼びとか」
「だって、向こうじゃ先輩って呼ぶのは不自然だったけど……
こっちじゃ、一応、先輩後輩な訳で……」
「いいよ、今更。
カイって呼んでくれる方が気楽だし」
「そう?じゃぁ、こっちでもカイってよぼぉっと」
なんだか嬉しそうにしているアオを見て、カイは少し安心した。
『同期』した事を、どちらの両親にも打ち明けてから、アオはどこか浮かない顔をしている事が多かったが、今は心から笑っている様にみえる。
明日からは日常に戻り、大学に通う事になる。
およそ一カ月程通えなかった分は、また論文で補填する事になるだろう。
アオにその事を告げると口をへの字に曲げていた。
雅は二人が同期したタイミングで一緒にいた。
世間には『同期』の事は知れ渡っているし、吉本から直接何か聞いているかもしれない。
そうなると、カイの事も吉本の口から告げられているだろうか。
吉本の性格上、それは考えにくかったが、無いとも限らない。
一応、説明できる様にしておこう。
「カイ、何か食べて帰らない?
久々にお醤油の味がたべたい」
「いいね、腹も減ったし……何がいい?」
「焼き鳥!」
即答した所を見ると、はじめから決めていたのだろう。
時刻は18時を過ぎている。赤坂なら何処かしらの居酒屋が空いているだろう。
「居酒屋でいいか?
でも、アオはまだ20歳なってないから、ソフトドリンクな。」
「フォレスなら、16歳から飲んでもいいのに」
アオは口を尖らせる。
「11月になったらな」
「わかった」と言うアオの顔はもう笑っている。
ころころと変わる表情もアオの魅力の一つだろう。
居酒屋は既に賑わっていたが、席は未だ空いていた。休日前なら予約無しでは入らないだろう。
カイはビール、アオはジンジャーエールを頼んだ。
アオに申し訳ないので、ソフトドリンクをとも思ったが、焼き鳥の香ばしい匂いに負けてしまった。
取り敢えず『焼き鳥5本盛り合わせ』と『焼きおにぎり』と『梅水晶』をアオが頼んだ。
梅水晶とはなかなか渋い。
焼き鳥は、モモ、ねぎま、鶏皮、軟骨、ハツが盛られていた。
特にモモは絶品で、大ぶりに斬られたモモ肉が炭火でやかれ、醤油ベースのタレが焦げて香ばしい香りを漂わせ、外はカリっと焼かれ、炭火中に旨みが閉じ込められて、食欲を刺激する。噛んだ瞬間にジュワッと旨みがあふれた。
焼きおにぎりは定番の醤油と、変わり種こ味噌ダレとの2種類で一皿だ。ご飯に胡麻がまぜられており、また違った香ばしさがある。
「うーっ!美味しい!
やっぱり日本人にはお醤油よね!」
アオは満足そうに焼き鶏をほうばる。
実は、カイにはあまり懐かしいと言う感覚は無いのだが、話は合わせておく。
ビールとあう事は間違いない。
「そういえば……」
アオは鞄から一冊の本をとりだした。
魔女からもらった本だ。
タイトルは無く、黒い革の背表紙で製本されている。
パラパラとめくるが、何も書かれていない白いページが続くだけだった。
「カイの方はどう?」
「オレのも、まだ白いままだ」
素材集めの報酬としてもらった魔女の本。
「その本は、必要な時に読めるようになるのさ」と魔女は「ヒヒヒ」と笑っていた。
ビールを片手に白いページをペラペラとめくる。
ふと思う、これって……詐欺の手口じゃないか




