永遠少年⑫
「コーヒーが冷めてしまいました。
淹れ直しましょう」
長谷川はカイとアオろカップを回収すると、コーヒーメーカーへと向かった。
「秘密結社って……
こんな事、知っちゃって大丈夫なのかな」
アオの顔に不安の色が滲む。
ガチャンとコーヒーカップが雑におかれる。
「秘密を知ってしまったからには……!」
急に発せられた長谷川の言葉に、アオが身を強張らせる。
フッと長谷川は笑いながら「なんて事は、ありませんよ」と新たに淹れたコーヒーを差し出した。
アオは唇を尖らせた。
揶揄われた事に少し怒っている。
「申し訳ない。
少し空気が重たくなってしまったので、アイスブレイクと思いまして」
長谷川はあまりジョークのセンスはない様だ。
「その『八咫烏』って言うのは、どんな組織なんですか?
三本足の鴉の事ですよね?」
カイは日本の神話にでてくる三本足の鴉、もしくは、サッカー日本代表のキャラクター程度しか、知らなかった。
「古くから日本の政治を裏で操り、暗躍して来た組織と言われています。
その影響力は日本だけに留まらず、他の秘密結社とも結びつきがあるとか……
今更隠す様な事でも無いのでお伝えしますが、世界管理機構には、いくつかの秘密結社所属の人員がいる様です。」
「それ……
そんな、さらっと言っていい事ですか?」
やはりアオは『知ってはいけない領域』に踏み込んでいる気がした。
「大丈夫ですよ。
公然の秘密、と言うやつです。
今回の鎧塚の件で、知る人間が更に増えましたから。
……話をもどしましょうか。
鎧塚は『八咫烏』から何か特別な任務を受けている様です。
そして、他の秘密結社よりも『八咫烏』一歩先んじている。
その証拠に、世界管理機構において、奴は重要なポジションへの昇進が異常に速い。」
「昇進が早いのは、長谷川さんも同じなんじゃ?」
カイは以前唐沢が「年下の上司だ」と愚痴っていた事を思い出した。
「私は、ただ有能なだけですよ」
長谷川は事もなさげに答える。
「任務が何かはわかりませんが、今までの鎧塚の行動は鯨やPWについて、私たちの知らない情報を持っている可能性が示唆されます」
「知らない情報……」
あの謎に包まれた鯨に対して、どうやって情報を知り得るのだろうか。
「鎧塚は『レセプター』の可能性が高いんです」
「レセプター?」
以前にも長谷川はその言葉を呟いている。
「私達は現状を説明する為に、科学者達から幾つもの仮説を集めました。
その中で一つ、この現状を説明出来るものがあります。
私達はその仮説を一つの指針として、行動している訳なんです。
そこで言及されているのが『レセプター』についてです」
長谷川は一呼吸おく。
淹れ直してくれたコーヒーは、また冷めてしまった。
「『レセプター』
それは、別の世界を知る者です」




