永遠少年⑪
『拡張』と『同期』が、今、世界のトレンドになっている。
ソラが起こした「同級生放火事件」、その他にも同期した人間が、魔法を使い起こした事件が数件おこった。
ジパングは規模が小さく秘匿できたが、今回はそうも行かなかった。
SNS上で拡散し、魔法は中心世界(センター オブ ユニバース)中に知れ渡った。
世界管理機構により、魔法により危害を加えた人間は拘束された。
警察・検察と連携しての超法規的措置である。
同期した人間は欧米に多く、その次に東南アジアが多かった。
カイとアオは一度帰還し、世界管理機構を訪れていた。
ソラ、雫、ペタ、そして鎧塚については既にBeeで報告していたが、改めて長谷川に詳細を説明した。
今回の鎧塚の行動は明らかに常軌を逸している。
「そうですか……」
長谷川はブラックコーヒーを飲みながら、言葉を切った。
何か考えをまとめているのだろう。
カイとアオは長谷川の言葉を黙って待つ。
アオは、フォレスの両親と中心世界の両親に、自身が同期者である事を打ち明けた。
どちらの親も動揺しており、まだ話を飲み込めて居ないとの事だった。特にフォレスにいるアリオエの両親は自身の娘が消えた方である事にかなり思い悩んでいるらしい。
アオにはフォレスで過ごした記憶がある。フォレスの両親との絆も間違いなく本物だ。
しかし、それでも、飲み込めない痼りの様な物が在るのは否め無かった。時間が解決するのか、言葉を尽くせば良いのか、何が正解かは分からない。
カイには。ただ見守るしかできない。
アオは「だいじょうぶ。」と気丈に振る舞っている。
カイには「これ以上踏み込んでほしく無い」と言う意思表示に感じられた。
いずれ、頼りたいと思ってくれたその時は全力を尽くそう。
「鎧塚に関しては、実は、もう私では手の届かない所にあるんですよ……」
唐突に長谷川が語り出した。
「これは、私見もはいっているのでここだけの話に留めて置いてください。」
カイとアオは頷く。
「そもそも、この世界管理機構について、少しお話ししなければなりません。」
確かに、世界管理機構と言う組織について疑問に思った事は何度かあった。
その財力や影響力は出来たばかりの組織ではあり得ないのではないか。
「お二人は都市伝説はすきですか?
『信じるか信じないかは、アナタ次第です』みたいなヤツです。
よく陰謀論などで取り上げられる、秘密結社については?」
「私、そう言うのは全然」
「オレもあまり詳しくは……」
「そうですか。
簡単に言えば『世界には裏で世界を操る組織が存在する』と言うやつです。
イルミナティ、テンプル騎士団、フリーメイソン……
少しは聞いた事があるんじゃないですか?
モナリザに隠された暗号を解き明かす小説が、映画化されて大ヒットした事もありましたね。
そうそう、あの映画の主役、トム・ハンクスでは無く、原作者はハリソン・フォードをイメージしていたらしいですよ。
私は小説の方が好きですが、映画の方が入り易いかもしれませんね……」
長谷川は雑談を交えながら、場を和ませようとしている。と言うよりは、本題に入る事を躊躇っているかのように見えた。
「つまり、それなんです」
長谷川はコーヒーを一口飲む。
「世界管理機構の前身は、その秘密結社なんですよ」
「各国が国境を超えて、一つの組織を立ち上げる。
幾ら非常事態とは言え、パワーバランスや利権が絡む中で、まずそんな事は有り得ない。
誤解のない様にお伝えしますが、私はそちら側ではありません。
あくまでも中央省庁所属の官僚です。
設立にあたり派遣されたに過ぎません。」
今度はコーヒーの香りだけを吸い込んだ。
「しかし、鎧塚は違います。
当初、彼の素性は掴めませんでした。
公安関係かとも思いましたが、それにしては素性が知れない。
慎重に調査を進める必要がありました……」
「しかし、今回、鎧塚は自ら大きく行動にでた。
それにより、色々な情報が明るみに出てきました。
彼が秘密結社所属の人間である事が判明したのです。」
長谷川は鎧塚の敬称をなくした事で、長谷川と鎧塚の間に、明確な線を引いた。
『八咫烏』それが、鎧塚の所属する組織の名前だった。




