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ホエイルホエル  作者: たろ
幕間

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U of U-博士


「やぁ、来たか。」


 白衣を着たメガネ姿の女性が回転椅子を180度回転させて振り返った。

 一昔前資料や論文、書籍でごった返していたであろう研究室は、実験道具以外は何も無い。

 米噛(こめかみ)に貼られた小さなチップのおかげで、資料の閲覧から、情報の検索、文章の作成までを行える。

 米噛(こめかみ)にはられた小さなチップは脳の電気信号を読み取り、データ化し、クラウドへと保存する。

 クラウドから検索したデータは電気信号に変え脳に直接送り、脳の視覚野や言語聴覚野、海馬などを刺激し、直接情報が流し込まれる。


『視る』『聴く』と言う概念が変容しつつあった。


 それでもアナログな長谷川は[FSS]フォログラムスピーカーシステムを愛用していた。


やはり、直接見て聞く事が大切に思える。


 長谷川は「まだ、順応出来ている方だ」と自負している。

 ここ三十年での、世界の目まぐるしい変貌から振り落とされていないだけでも十分だろう。

 PW03、科学が異常に発達した世界『マキナ』が拡張されてから、中心世界(センター オブ ユニバース)は目まぐるしい発展を、現在進行形で遂げている。

『マキナ』の技術は素晴らしかったが、慢性的なエネルギー不足に悩まされていた。テクノロジーを動かす動力が足りていなかった。ところが中心世界(センター オブ ユニバース)で、『鬼結晶』と出会う事で、その問題は簡単に解決された。


それぞれの文化が混ざり、世界の進化が加速していった。


「私から言わせると、今更そんなに慌てている方がどうかしている。

私は、(かね)てより、問題提起をして来たんだがね」


女性はメガネの両端を親指と中指で持ち上げながら、長谷川に皮肉をぶつける。


「そうですね。仰る通りです。

ですので、ご教示頂きたい。

博士。

これから、何が予測され、どう行動すべきかを」


長谷川はなるべく落ち着いて話す様に努めたつもりだったが、その言葉には焦りが滲み出いる。


「なんとも傲慢な話だ。

世界管理機構は私の論文が世に出ない様に圧力をかけたのに、今度は手の平を返して助言を請うのかい?」


「その事については申し訳なく思います。

ですが、あの論文が世にでれば、世界が混乱するのは目に見えていました。

悪戯に、世界に恐怖を与える事は避けたかった。」


「その結果が、これかい。

人類は準備する間もなく、脅威に晒される訳だ。

君たちの、その傲慢のせいでね」


長谷川は反論しようとしたが、口を閉じた。

ここで彼女と言い争っても仕方がない。


「そう言わず、力になってくれませんか」


長谷川の後ろからカイが現れた。

博士と呼ばれる女性、態度を緩める。


「カイ君が言うなら仕方ない。

世界管理機構への協力もやぶさかでは無いよ。」


「ありがとう」と伝えるカイに、博士は「どういたしまして」と微笑んだ後、「ただし」と眉をひそめて長谷川をみた。


「世界管理機構が握り潰した、私の論文を然るべき形で発表するならね」


「仕方ないですね」


長谷川は「まず、謝罪させて下さい」と博士に頭をさげた。


「エヴァ博士。」


長谷川は更に深く頭を下げる。


「アナタの論文は我々が責任を持って、公表いたします。

ですので、どうか私達に力をお貸しください」

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