PW02-魔法の世界⑳
銀の盃は白に変わり、中には澄んだ液体が月の光に照らされている。
月の光の当たり方で、見える色をかえていた。
盃の底に七色の石だけだが残っている。
意識を取り戻した魔女は「成功だ」と喜びの声をあげた。
液体を一滴もこぼさぬ様に、慎重に瓶へと移し替え、コルク栓で蓋をした。
瓶の中でも、その液体は不思議な輝きをはなっている。
「アオ、顔赤いけど……
まだ、魔力使いすぎて辛い?」
「だ……大丈夫」
別の理由だとは言えるわけも無く、アオは顔を背けた。
その様子をみて、魔女は「ヒヒヒ」と笑う。
「さてと……」
魔女は立ち上がろうとして、少しよろめいた。
まだ魔力が戻りきっていないらしい。
立ち上がると、魔女はカイとアオの方を向き頭を下げた。
「アンタ達のおかげで、やっと悲願が叶った。
礼を言わしておくれ」
魔女は「ありがとう」と言いながら、更に頭を下げる。
「そんな!お礼言われる事なんて、何も!」
アオが慌てて両手を振り否定する。
確かに苦労はしたが、魔女からも教えをうけている。
等価交換は成立しているから、お礼の分は貰いすぎだ。
「そうだね。
なかなか大変だったし、その薬を何に使うのか、教えてくれたら、それでいいかな。」
カイは、別にそれほど知りたい訳ではない。
断られても受けいられてもいい提案をした。
魔女がキョトンとした顔でカイを見ている。
「アンタ……コレが薬だって、何で知ってるんだい」
カイも指摘されて初めて気がつく。
何故あの液体を、薬だとおもったのだろうか。
直感と言えばそうなのだが、カイは液体が薬だと確信していた。
「まぁ、いいさ。
アンタが変なのは、はじめっからだね」
アオがフフッと笑う。
「ほら、早く来な」
魔女がフワッと浮き、ウッドハウスのテラスに降り立つ。
「この薬が何か知りたいんだろ?
今から見せてやるよ」
そう言うと魔女は家の中へ入って行った。
カオとアオは急いで後を追いかけた。
家の中に入ると、魔女は扉の前に立っていた。
出会った最初の日、「絶対に開けるな」と釘をさされた、あの部屋だ。
魔女がゆっくりと扉を開ける。
少女がベッドに眠っている。
キングサイズのベッドには天蓋がついており、フレームはモチノキでつくられていた。
天蓋から垂れ下がるカーテンも白く、レースのフリルで飾られている。
広いベッドの真ん中で、5歳か6歳の少女が寝ている。
まるで血が通っていない様な白い肌だ。
「……えっと」
アオが恐る恐る口を開く
「心配ないさ。
寝ているだけだからね」
魔女は言葉の先を察して答える。
アオはホッと胸をなでおす。
ベッドの上の少女は、死んでると言われても、寝ていると言われても、どちらも信じられた。
「私の孫だ」
魔女はベッドのハジに座り、優しく少女の頭をなでる。
魔女のその瞳は、今まで見たことがない慈しみであふれていた。本当に孫なのかと疑う余地が、どこにもなかった。
魔女は片手で少女を抱き起こし、先程できたばかりの薬を、瓶から少女の口に流し込む。
白かった少女の肌はみるみる赤みを帯びてくる。
寝息も、ほとんどしているかわからない程度だったものが、今はハッキリと聞き取れた。
少女がうっすらと目を開ける。
「お……ばぁ……ちゃん」
小さなか細い声で、自分を呼んでくれた孫の姿をみて、魔女は人目を憚らずに泣き崩れた。




