PW02-魔法の世界⑱
一連の騒動は何だったのだろうか。
進軍してきたロッズの兵達は、フォレス軍に取り押さえられた。
その数はおよそ200人。
国境を超えて行軍するには余りにも少ない。
捕まったロッズの兵士達は、どこかボンヤリとしている感じがあった。
今回の件で、グリンの魔女が居た事が思わぬ効果を発揮した。
魔女はフォレス王国、ロッズ帝国問わず敬われている。
彼女の発言は、何よりも信頼された。
カイとアオはフォレス王国から見れば怪しまれて当然だった。
なぜあの場に居合わせたのか、微妙な立ち位置だったが、グリンの魔女が身元を保証してくれたおかげで助かった。
国を超えて影響力があるとは、森の魔女はやはり偉大らしい。
魔女の見立では、ロッズの兵士達は何者かに操られていた可能性が高いらしい。
高度な洗脳などでは無いが、思考力を低下させる様な軽い催眠が行われていたのだろうとの事だった。
しかし、上層部の許可なく行軍が行われる事はあり得ない。
最終責任は皇帝にあるのは間違いなかった。
フォレス国王は正式に抗議を行うと共に、戦争の準備を指示している。
間も無く、冷戦は終わり本格的に戦争が始まる事は明らかだった。
ウドノから馬で3時間ほどの所に、犯罪者を収容すること施設があった。
捕まえたロッズ兵200人を収容することはできないので、兵隊長クラスをここで収容し、尋問を始めている。
ソラと雫もここに収容された。
雫は黙って何もはなさい。
ソラは騒ぐだけで有用な発言は得られなかった。
二人のことはフォレス兵に任せ、カイとアオは魔女と共にグリンの森へと戻った。
長谷川からBeeを通じてソラ達の事が知らされ、急いで国境に向かったが、今は魔女に頼まれた仕事を行っている途中だった。
大釜の横には、木の蔦と虹色に光る石がおかれている。
一週間かけて、やっとこの2つを集める事ができた。
後は、月花と大蜥蜴を集めれば、魔女から指定された材料が揃う。
石を触媒にして、木の蔦、月花、大蜥蜴で薬を作るのだそうだ。
蜥蜴が入っているあたりが如何にも魔女行った感じだ。
一週間前、グリンの魔女から提案を受けた。
「私しゃ、薬を作りたいんだが……
材料あつめが、この老体には堪えてね。
材料を集めてくれるなら、この私が魔法を教えてやろう。
どうだい?
森の魔女からの直接指導なんて、そう受けられるもんじゃないよ」
カイにはこの提案の価値があまりわからなかったが、隣で目を輝かしているアオを見ると、なかな破格の条件なのだろう。
朝から夕方にかけて、素材探しをおこない、夕食の後に魔女から魔法についてレクチャーを受けた。
火、水、風、土の魔法をそれぞれ組み合わせる事で起こる現象は多岐にわたった。
面白いのは、そこに科学の知識が役立つ事だ。
カイの使った雷魔法はまさしくそれである。
魔女は化学を『世界の理』と表現していた。
魔法で現象を起こす事ができるこの世界の人々にとって『何故』の追求はそれ程意味を持たなかったのだろう。
だからこそ、魔法が発展したのだとも思う。
魔女は『世界の理』をカイとアオに教えた。
それ以外にも、魔力の効率的な運用法や、精霊との友好関係の作り方など、ありとあらゆる魔法についてを教えてくれた。
それでも一週間では、分厚い本の一、二ページをめくった程度だろう。
まだ『光と闇の精霊』については何一つ教えてもらって居ない。
取り敢えず、カイとアオは大蜥蜴を捕まえに出かけることにした。
月花は満月の夜にしか咲かない。
少なくても後20日は、魔女から魔法を学ぶ事が出来る。




