PW02-魔法の世界⑯
「篠つく雨水」
雫は、また指先をタクトの様に振る。
アオの周りに、激しい雨が降り注いだ。
「アーリア・パラワ!」
アオは自身の頭上に、風の壁を作り出し雨を防ぐ。
「凍てつけ」
激しく降る雨は氷に変わる。
氷は一つ一つが鋭くとがり、アオに降り注いだ。
幾つかの氷の棘が風の壁を突き抜けて、アオの背中に刺さった。
「フェーン!」
アオは痛みに耐えて次の手を打つ。
アオの周りに熱風が巻き上がり、無数の氷の棘を溶かし吹き飛ばした。
「アーリア・クトゥー!」
今度はアオが透明な風の刃を雫に向けて放つ。
大怪我を負わすつもりはない。
威嚇のつもりだが、多少怪我を負わせてしまっても仕方ない。
「砂塵」
砂埃が舞い上がり、風の刃の輪郭を明確にした。
雫は斜め前に膝と体を屈め、風の刃を避ける。
その動きはしなやかだ。
しかし、舞い上がった髪を風の刃がかすめ、雫の黒く長い髪を数箇所きりとった。
「女の髪を切るなんて、同じ女性として、どうなのかしら」
雫の言葉に怒りが宿る。
「水獄」
雫がアオを指差すと、アオを水が取り囲み、水の球体の中に閉じ込めた。
「溺死って、苦しいらしいのよ」
雫は冷たく笑う。
アオが水の球体に閉じ込められた。
カイは横目で確認する。
急いで助けに行かなければいけないが、ペタとソラがそれをさせない。
ソラは、感情に任せて炎を打ち込んでくる。
ソラだけなら容易に対処できるが、問題はペタだ。
ソラのメチャクチャな攻撃に合わせて、カイが避ける先で攻撃を仕掛けてくる。
打撃から関節技を狙ってくる。
その動きが、総合格闘技の技術を駆使しているのは明らかだ。
ペタではなく、同期元の経験だろ。
厄介なのは絡め手だ。
魔法で直接の攻撃はしてこないが、絶妙のタイミングで、風魔法で突風をだしたり、土魔法で地面の起伏をかえたりと、重心をずらしてカイが攻撃に転じにくい状況をつくっている。
「あぁ!もぅ!ダッるっ!!」
自分の攻撃が当たらない事にソラの苛立ちは限界をむかえる。
「バァン!」
ソラがそう言うと、カイの周りに野球ボール程の炎の玉が4つ現れた。
また外したのかと思ったが炎、の玉はカイの顔の近くで燃え続けている。
カイは目眩に襲われて膝をついた。脈拍が早くなっている。
「炎って酸素使って燃えてんだよ。
人はさぁ、酸素無いと生きられないんだぜ?」
ソラはニタニタと笑っている。
炎の玉は直接的な攻撃でなく、酸欠を起こす為だった。
ソラも絡め手を持っていた。
少しソラの事を甘くみて、油断してしまった。
「死ねよ!」
ソラが大振りの蹴りがカイを直撃した
……かと思ったが、悲鳴を上げたのはソラだった。
膝から下が捻じれつま先は外側に向いている。
あまりの痛みにソラはその場に崩れ、転がる。
「いってぇぇえ!
何で!?なんだっ!」
転がるソラを尻目にカイは悠然と立ち上がった。
酸欠には少し焦ったが、タネさえ分かれば対処は簡単だ。
風魔法で酸素を送り込めばイイ。
油断して、不用意に入れて来た蹴りを受け、足首を両手で固定し、自身の身体ごと勢いよく捻る。
側複靱帯と、前十字靭帯か後十字靭帯のどちらか、もしくはその両方が切れただろう。
痛みと、物理的にも、立ち上がる事は困難だろう。
カイはソラから素早く飛び退くと、アオの方をみた。
急いで助けなくては……
ところが、カイの目に映ったのは、雫を組み伏せている、アオの姿だった。




