PW02-魔法の世界⓮
ロッズの兵達が国境に沿って列をな成している。
兵達は全員、揃いの銀色の甲冑を身につけていた。
詰所にいたフォレス王国の兵士は、ロッズの突如の行動に慌てて伝令を出すが、王都に情報が届くには、どんなに早馬を走らせても3日はかかるだろう。
ロッズ兵は号令と共に右手を国境の壁に当てる。
「かかれっ!」
列の後ろに位置する馬に乗った隊長の号令と共に、兵たちは風魔法を行使する。
勇壮とそびえ立っていたその壁はボロボロと崩れさった。
「おぉ!」と兵士達から感嘆の声があがる。
今まで二つの国を分けていた壁が、こんなにもあっさりと崩れる様を見れば、そうもなるだろう。
「こいつら頭悪いよな。
ちょっと考えれば分かるじゃん。」
驚いている兵達を見て、ソラは馬鹿にした様に笑いながら、隣にいる東洋人の女性に同意をもとめた。
「仕方ありません。
科学と言った概念が無いのです。
何をどうすれば…と言った事はそこまで深く考える事は無かったのですから。
貴方もそうだったでしょ?」
背の高い黒髪の女性は、艶やかな声でソラに諭す様に答える。
確かに、こちらでの記憶ではそんな事気にした事もなかった。
魔法は使えるから使っていただけだった。
「偉そうに、指図すんじゃねぇよ。ババァ」
ソラの態度に「ハァ…」と呆れた様にそため息をつき、肩にかかった長い黒髪を直す。
この女の、いかにも「私は全て分かっています。」みたいな態度が気に入らない。
「ソラ!莉里さんにそんな口のききかたするんじゃ無い!」
そうだ…コイツも居たな。
うんざりした顔でソラは後ろを振り返る。
ソフトモヒカンの男が腕を組んでいる。
ソラより2歳ほど年上なので、やたら馴れ馴れしく接してくる。
この男はいかにもスポーツマンと言った雰囲気だ。それもまた、ソラは気に入らなかった。
鎧塚と皇帝の城に攻め入った後、この二人と合流した。折角、皇帝を言う事を聞かせられる様にしたのに、鎧塚は別件とかで帰ってしまった。
リセでの鎧塚との出会いから、ソラは鎧塚に心酔している。
リセでの一件の直ぐ後、ソラと鎧塚はロッズ帝国に向かった。
大火傷を負った筈の鎧塚は小一時間程姿が見えなかったが、戻ってくると火傷が無くなっていた。
あの人なら何か特別な事があっても不思議じゃない。
そんな特別な人に選ばれて、ボクはココに来たんだ。
莉里は自分と会う前から鎧塚さんと知り合いだった様だが、ロッズに一緒に来る様に言われたのはボクだ。
やはり、ボクこそが特別だ。
そう言えば、船のライトをみて「人魂だっ!」と騒いでいたフォレス人には笑った。
あんなマヌケのある国だ。
直ぐにでも、カタをつけられるだろう。
「全体!隊列を組み直し、前進っ!」
隊長の号令と共に、兵たちは国境を越え、フォレス王国へと侵入していく。
詰所に駐在していたフォレスの兵はロッズに捕縛された。
「騒がれても面倒だ。やっとけ。」
上官らしい兵が命令をし、ロッズ兵はロングソードを振り上げた。
バリバリバリ……!
振り上げたロングソードの切先に突如、落雷が避雷する。雷はロングソードからロッズ兵の身体を貫いた。
しかし、空は雲一つない快晴だ。
雷に打たれロッズ兵は、膝をつき倒れた。
その隙を見て、囚われたフォレスの駐在兵は何とか逃げ出す。
「敵襲!」
体調の号令と共に、兵達は密集隊型を整えた。
兵達に緊張が走る。
雷の魔法など、大魔法だ。かなり高位の魔法使いが現れたに違いない。
「フゥドル・ガッビア!」
空から声が聞こえ、兵士たちの周りに『雷の檻」が現れた。
「なんだ!これは!」
兵士が檻から出ようと檻に触ると、また激しい雷鳴と共に兵士は倒れた。
檻は変わらずに兵士たちを閉じ込めている。
ソラは声のした方を見上げる。
二つの物体が浮かんでいる。
逆光に目が慣れ始めると、それが箒に乗った人である事がわかった。
箒の一つには黒ずくめの老婆。もう一つにはソラと同じくらいの男と女が乗っている。
男は箒から飛び降りた。
地面につく前に風魔法で落下の速度を緩める。
声の感じから、雷の魔法をつかったのはコイツだろう。
この男の雰囲気は、自分たちのソレに似ている。
多分、コイツも同期した人間だ。
自分の特別がどんどん薄れて行く気がして、ソラは苛立った。
「ンだ!テメェ!邪魔してんじゃねぇ!」
ソラは怒鳴るが、目の前の男は返事をしない。
辺りを見回りし、状況を冷静に判断しようと情報を集めている様だ。
「無視してんじゃねぇよ!」
ソラの苛立ちは増すばかりだ。
本当に、どいつもコイツも気に食わない。




