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ホエイルホエル  作者: たろ
二幕

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37/62

PW02-魔法の世界⓭



ヒヤリとした汗が頬を伝う。

喉が乾いてうまく唾を飲み込めない。


ロッズ帝国の帝王となったのは16歳の時だ。


 若王として侮られるぬよう、対立するものは全て薙ぎ払った。

血肉を分けた親兄弟であろうと、容赦などしなかった。


それが、どうだ。


今、目の前に立つ少年を恐れている。


 少年の足下に横たわる宰相に目をやる。

既に事切れていた。

少年が通った道に兵士たちの屍が転がっている。


 突如現れた少年が、何かをしたのは間違いない。

しかし、それが何かわからなかった。

魔法には間違いないが、それを形容する言葉を知らない。


「ンだよ。帝王とか言う割にビビってんじゃん。」


少年は宰相の顔を踏みつける。


「こらこら…

亡くなられた方に失礼な事をする物じゃないですよ。」


 通路の奥から、木の靴底を鳴らして、男が現れた。

少年は男に嗜められ、足を退ける。


 もしかしたら今来た男を味方にできれば、状況がかわるかもしれない。


「わかった!お前達が何者かは知らないが…

どうだ、(ちん)の側へこぬか!?

厚遇は約束する!」


「『世界の半分をやろう』ってか?

使い古されたネタこすってンじゃねぇよ!」


男は少年の肩に手をおく。


「そう言う言葉、違いは好きじゃありません。」


 穏やかな口調だが、威圧感がある。

少年はビクッとし「わか…り…ました。」と応じる。

やはり、この男が力関係が上の様だ。


「どうだ!本当に帝国の半分を任せても良い!」


 ここで命を落とすより、そちらの方が余程良い。

やらなければならぬ事が、まだまだ在るのだ。

何としても生き延びねばならない。


「いぇね、皇帝陛下におかれましては、その様に小さく纏まっていただきたくない。」


この男は何を言っているのだろうか。


男は満足そうに頷くき、また話し出す。


「陛下、是非この大陸を総てください。

初代皇帝の再来と称される陛下には、是非覇道を歩んでいただきたい。」


 こんなにも乱暴に侵入し、自分の命など直ぐにでも取れる状況から、予想外の提案だ。

思考が追いつかない。


「この子の他にも、数名、陛下のお力になれる者を手配いたします。

この大陸を、手中へ収めて下さい。」



「それで、其方は何を望むのだ…?」


 交渉などではなく、この男の事が全く理解ができず、気がつけば質問をしていた。

 この状況で自分が答えるべきは、是が非かだ。

それ以外の答えが愚行である事を、皇帝として君臨してきた自分は知っている。


「それは事を成してからお願いする事にします。」


男は笑う。


 底の見えないこの男に、従う以外の選択肢は無かった。


「わかった。其方の言う通りにしよう。」


男はまた満足そうに笑い頷く。


「良かった。

良い関係が築けそうですね。」


男は近づき、右手を差し出す。

相手から敬服以外の挨拶など、今までした事が無い。


 今まで必死で守っていた物を、こんなに簡単に手放せる自分に少なからず驚く。

少しの躊躇いも今些事だ。


男の手を取る。

この男の笑みは、貼り付けた様な仮面の様な印象をうける。

その下にあるモノを、敢えて知る必要はないだろう。



「私は鎧塚と申します。

陛下、以後よろしくお願いいたします。」


「ほら、君も自己紹介なさい。」


鎧塚は振り返り、少年に促した。


「ソラだ。」と、吐き捨てるように言い放つ。




自分もソラと同じ頃に皇帝になった。

 あの頃、膝をつかせた大人達はこんな気持ちだったのだろうか

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