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ホエイルホエル  作者: たろ
二幕

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PW02-魔法の世界⑪


 見知らぬ場所に連れてこられた上、家主不在で放置されてしまい、カイとアオは手持ち無沙汰になった。


「どうしようか…?」アオが困った顔で笑いかける。

部屋を見渡す。

 床や棚には荷物が溢れているが、整理されている様子はない。

出した物が、そのまま放り出されている様だった。

 大釜の周りに長テーブルがあり、その上に数冊の開いた本と、何かの材料がおかれているが、それ以外は片付けても問題無さそうだ。


「取り敢えず、掃除でもしようか。このままじゃ座る場所も無いし。」


 二人は「入るな」と言われた部屋と、魔女の寝室以外の整頓をはじめた。

本棚は元々タイトル順に並んでいたらしく、本の収める場所は難しくなかった。


「そうだ。折角だから、練習してみない?」


「何を?」


「風魔法で、空を飛べたじゃない?

部屋の荷物も風魔法で移動させるの。

ほら、よく映画とかでヒューって荷物が元の場所に戻るじゃ無い?

アレ、やってみようよ!」


アオは思いの外この状況を楽しんでいる様だ。


 カイには記憶がないが、この世界の住人にとって森の魔女は憧れに近い存在らしかった。

その一人に出会えたのだ。

 アリオエとしての記憶が、アオの気持ちを高揚させているのかもしれない。


 二人は風魔法でで本棚へと本をもどし、荷物を部屋の隅へまとめていく。

 2時間程すると「私、もう限界!」とアオが尻餅をついた。

魔力が底をついたようだ。

 部屋もほとんど片付いたので休憩を取ることにした。

床に座ると、ベタッとした感触がある。次は拭き掃除が必要だ。


 少し休んだ後、水を溜められるバケツが無いかとアオが奥の部屋を探しにいった。


「カイ!ちょっと来て!」


 アオの大きな声に何事かと思い駆けつけると、アオは猫足のバスタブを前に目を輝かしている。


「見て!

このお風呂!カワイイッ!」


 バスタブは他の汚れた部屋とは違い、別世界からやってきた様にキレイだった。


ここのところ、碌に湯船にもつかれていない。


「掃除が終わったら、入らせてもらおうか?

半分はここの掃除で汚れたみたいなもんだしね。」


 カイの提案に、アオは素早く首を縦に何度も振る。

お風呂に入らない事はこの年頃の女性には、やはり堪えるようだ。


 程よいバケツとモップがみつかったので、床を掃除する。


水はすぐに汚れるので何回も窓から森にまいた。

その度に水魔法でバケツを満たす。

汲みに行かなくても良いのは楽だった。


 昼過ぎにはそれなりにキレイになったが、魔女は起きてくる気配はない。


「どうしようか?お風呂、勝手にかりちゃおうか?」


二人は汗と埃でかなり汚れている。



 普段なら、人の家の風呂を勝手に借りるのには抵抗があるが、ここまで汚れてしまうと、倫理観はどこかへ隠れてしまう。

「ちょっとぐらい、いい…よね?」とアオは同意した。


 カイが譲ってくれたので、アオが先にお風呂に入る事になった。


お湯の準備はカイがしてくれた。

 水魔法で湯船にみずをはり、火魔法で熱を加えてお湯にかえる。


「ちょっと熱めにしといたから、熱かったら水たして」と事もなさげに言うが、昨夜からカイはずっと魔法を使っているのに魔力が切れた様子もない。

どれだけの魔力量があるのだろうか…


 マータルを出てから、足手纏いとは言わないが、役に立ったかと言うとそうでも無い。


「もっと頑張らないと!」



 アオはお湯を手ですくい、バシャッと顔にたたきつける。


このままでは何の為に、ここまでついて来たのかわからない。


 鯨が鳴いたあの日、アリオエの記憶が流れ込んできて、自分が魔法が使える事に驚いたし、ワクワクした。


 ずっと子供の頃から、自分のいる場所が他にある様な気がしていた。


思春期のソレと言われればそうなのだが…


 明確に何ができる訳でも、したい訳でも無く、特に無理をせず、かといってサボリすぎず、頑張れる範囲で頑張って来た。

 このまま自分は、葵としてもアリオエとしても、何んて事の無い、特別では無い人生を終えるのだと、何処かで諦めていた。

 そんな自分が、世界管理機構に関わって、こんな冒険するなんて思ってもみなかった。


……そう言えば、何故カイは長谷川さんと知り合いだったのだろう?

今度、カイに聞いてみようかな……


 ここまで来た動機は、不純かもしれない。

カイを一人にしたくなかったし、離れたく無かった。


これが恋心なのかは分からない。

多分そうなのだと思う。


 雅がカイからピアスを貰ったのを見て、胸のあたりがキュッとした。

 雅への誕生日プレゼントが特別じゃなくなる様に、自分にもプレゼントをねだった。無理矢理言わせたけれど、プレゼントをくれると言ってくれた事が嬉しかった。


いつからだっけ…

カイの事を意識し出したのは…


たぶん、明確なタイミングは無い…


 あの少年の様な明るさの奥に、時折り見せる寂しさが、どこかとても儚げに見えたからだ…




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