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ホエイルホエル  作者: たろ


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3/13

CofU(PW-0)


「なるほど。つまりそこは、節足動物たちが、砂の下に住まう世界だったということですね。」


黒いスーツの男は一人たたずみ喋っている。

彼の周りには白い砂丘が広がっている。

姿勢の良いスーツ男は白髪の混じったグレーの髪をツーブロックにし、ポマードで7対3の割合で整えている。

スーツはきれいにクリーニングされ、シャツも糊付けけされていた。

胸ポケットにはネクタイと同じペイズリー柄のチーフが差し込まれており、履いている革靴もきれいに磨き上げられている。

とても砂丘の中にいるには、似つかわしくない風貌だ。


「松竹梅の活動はいつもユニークですね」


男は腰の後ろで手を組み、小さく肩を揺らしながら笑った。


「この1ヵ月の活動報告は以上になります。

砂漠の下で見つけた節足動物の種類は126種類ですが、今後調査を続けることで、さらに数は増えると思われます。」


どこからともなく、女性の声が聞こえる。

その声は少し反響していた。


「わかりました。引き続き調査を続けてください。

節足動物たちの体液から取れた成分で、新薬が開発できそうだと言うのは本当ですか?

Dr.ユウ」



「はい。まだ研究段階ではありますが、節足動物たちのタンパク構成が、今まで確認したことない構成になっています。細胞分裂の増殖を抑える効果が期待でき、悪性新生物に対しての何かしらのアプローチに役立つと考えています。」


スーツの男は顎髭を触りながら満足そうに頷いた。


「ではいつものように活動報告と研究結果をデータにまとめて送ってください。

そうそう、松竹梅のお三方には、『活躍を期待している』と言っていたとお伝えください。」


「かしこまりました。長谷川室長。

…ただ、あの方達は自分たちを松竹梅と纏めて呼ばれる事を嫌っておられます。

今度お会いになる時はその呼び方は控えてあげて下さい。

それでは、失礼いたします。」



1秒ほどすると、男の周りにあった砂丘は、上の方から消えて行き、机や椅子が置かれているオフィスが現れた。

長谷川と呼ばれた男は、テーブルの上に置かれている。直径3センチ薄さ5ミリほどの銀色の円盤にある中心のボタンに指を当て、電源を切る。


世界管理機構・調査室室長


それが長谷川の肩書きだ。



机の後ろの壁は一面ガラス張りになっており白く濁っている。

その前に立つと長谷川はガラスを指先でトントンと軽く2回たたいた。

するとしか濁っていたガラスは透明になり外の景色が現れた。


高層ビルの40階にあたるその部屋から、長谷川は街を見わたす。


20年前、PW-03が同期した。

はるかに進んだ科学技術を有していたその世界の技術を取り入れ、世界は更に発展した。


眼科に広がるその景色は、長谷川が子供の頃アニメで見たような近未来都市そのものだった。

スカイツリーよりも高いビルが立ち並び。その隙間を払うようにして道路が張り巡らされている。

道路を走る。車にはタイヤがない。エンジンで動く車はもうほとんど見られず、今はリニアモーターでで動く車が主流である。


空飛ぶ鯨が現れて、30年。

初めて鯨が鳴いてから、27年。


数年に一度しかなか泣かなかった鯨は、最近だんだんと鳴くペースを早めている。


長谷川は目線を上にあげた。

空には半透明の鯨が泳いでいる。


27年前、鯨が鳴いたその日、世界はそのあり方をかえた。

もう一つの世界パラレルワールド【PW】がこの世界にあらわれた。

過去の選択、分岐点、その先を進んだ別の世界。

この世界と幾重にも重なり、隔絶された世界。

本来は交わる事の無い世界が交わり、同期した。


地球の大きさは変わらないのに世界の広さは拡張されていく。世界が同化していく事に世界は拡張されていく。

物理学者曰く四次元の歪みに起因しているらしい。


では、同期された世界に生きていた人々はどうなるのか…


世界は一つに集約を始めている。


「モビーディックは世界をどこ導こうとしているのか…」


長谷川は目を見開いた。鯨がその口ゆっくりと開け始めている。


「バカな…早すぎる」


ブォオオオオッオオオオオオオオ


鯨が二十四度目の鳴き声をあげた。




角笛にも似た鳴き声が、世界中に響き渡って行く。






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