PW02-魔法の世界④
日の出と共に起き、カイはアオの父の手伝いをした。
牛や馬にエサをやりブラシをかける。
鶏の卵を集めた。
家畜達は、カイの知っている牛や馬よりも、一回り体格が大きかった。
種類が違うのかもしれない。
朝食は、先程とった鶏の卵で作った目玉焼きとライ麦のパン、ホットミルクを用意してくれた。
パンの上には少し溶けたチーズが乗っている。
ホットミルクに蜂蜜が入っていて、朝の労働疲れを癒してくれた。
朝食を食べ終わると、カイとアオは町へでかけた。
「カイの事を知っている人を探す。」と言う建前だ。
フォレス王国に訪れた目的は、消えた人や、変わった出来事が起きていないか、そんな噂を探す為だ。
アオの他にも同期している人がいるかも知れない。
アリオエは葵と同期したタイミングで、やはり消えていた。
その事を確認し、アリオエの両親に、アオが無事である事を早めに知らせておく。と言う目的も、旅路を急いだ理由の一つだ。
農場から20分程歩くと、土の農道から整備された石畳の道に出た。
石畳は日本の道路とは比べられない程ガタガタだが、それでも農道よりは数段ましだった。
雨の日に荷馬車のタイヤを取られる事もない。
建物や道路などのインフラは、基本的に人の手で造られていた。
日常生活程度の魔法は皆が使えるが、大規模な魔法となると、限られた者しか使えない。
街には屋台が出ていた。
朝取れたばかりの、野菜や魚を売る店が並ぶ。
屋台は基本的にその日取れたものを売り、店舗を構えるのは少し高級な嗜好品の様だった。
村の殆どは木造の二階建てだが、三階建ての大きな建物があった。
『宿屋』だ。
一階は食堂になっていて、二階と三階が宿屋になっている。
一階の食堂で昼食をとる事にした。
情報が集まるなら宿屋だろう。
魚を仕入れにくる業者が、常に数組は泊まっている。
業者は大体が二人一組だ。
一人が馬車を運転し、一人は魚が腐らないために、魔法で氷をだす。
マータルから次の大きな街『ウドノ』は2日ほどの距離だが、この組み合わせで行動する事で、痛む事なく流通する。
食堂は案の定、そこそこ賑わっている。
この国の主食はパンかパスタだ。
カイは魚介とチーズのパスタを頼んだ。
フィットチーネの様な幅広な麺に、魚介から出た旨みをチーズが絡める。
チーズはクセが少なく、モッツァレラに近かった。
胡椒がピリッとアクセントになっている。
「うまっ…!」
「でしょお!美味しいでしょ!」
嬉しそうにアオが笑う。
彼女が満足気な理由は、この店に卸している乳製品がアオの家で作られた物だからだ。
アオは、薄く伸ばしたパスタとチーズ、ミートソースが何層になったミルフィーユ仕立てのラザニアを食べている。
「カイ…
あの、良かったら…シェアしようよ。
そっちも美味しいそうだから…」
アオが恥ずかしそうに提案して来た。
食いしん坊に見られるのが恥ずかしいのだろうか…
カイもアオのラザニアがを食べてみたかったので、ちょうど良かった。
「いいよ?
そっちも美味しそうだし」
カイは食べかけのパスタの皿をを差し出した。
「おや?アオちゃん。デートかい?」
お店のおばさんが揶揄ったきた。
こう言う絡みは否定すると余計に揶揄われそうなので、取り敢えず微笑んでおく。
「あら!ホントにデートだったかい!
お邪魔しちゃ悪いね!」
カイの微笑みを肯定に受け取ったらしい。
「ち…違うよ!デートじゃないからね!」
顔を赤らめて否定するアオを、叔母さんはニコニコしながら眺め「あの小さかったアオちゃんがねー」と感慨深そうに店の奥へ消えていった。
「もぅ!おばさんったら…」
顔を赤らめて、カイから受け取ったパスタを食べている。
アオは大人びた雰囲気だが、誰とでも分け隔て無く接する人当たりの良さがある。
デートに誘われる事も多いだろう。
慣れているかと思っていたが、この手の話は苦手な様だ。
カイもラザニアをほうばった。
ミートソースのコクをチーズが更に深め、トマトの酸味が後味をスッキリとさせたいた。
食べ応えがあるのに、くどく無く、どれだけでも食べらそうだ。
カイは、料理に持っていかれそうになる意識を外にむける。
本来の目的は情報集取だ。
大体の客は、他愛のない話をしている。
窓際に座る、四十代前半と後半の二人の男の会話が耳にとまった。
「寝ぼけてたんだろ?
海に人魂が出たなんて!
そんなのあるわけ無いだろ?」
「いや本当に見たんだよ!
真っ暗な海の上をスーッと飛んでいったんだ!
海の上をさ!
そのままロッゾの方に消えてったんだよ!」
鼻先の赤い男は、興奮して唾を飛ばしながら話している。
「お前、酒の飲み過ぎだ。」
もう一人が嗜めた。
「そんな事ねぇよ!
最近、おかしな事が続いてるじゃねぇか!
ウドノの街でも、急に人が消えたらしいしよ…
こりゃよ、地獄の門が開いてんだよ!」




