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ホエイルホエル  作者: たろ
二幕

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PW02-魔法の世界③



その日の夜にカイとアオはフォレス王国に訪れていた。

 長谷川の行動は早く、小型のジェット機と高速艇を直ぐに手配したのには驚かされた。


国境など気にせず最短ルートで移動した。


 幸いにもフォレス王国の沿岸警備はおざなりで、簡単に侵入する事ができた。

 フォレス王国は海路を使った物流や貿易はない。

港町といっても小舟で近海の漁に出かける程度だった。

 警備も、港に停泊している釣り船を守る意味合いが大きく、海から攻め込まれる事は、初めから想定していないのだ。


この国の文化レベルは中世のヨーロッパ程度だ。


 その分、魔法の発展がなされている為、生活に不便はない。

現代科学の役割を魔法が補っている。

それだけ魔法が日常に根付いた世界だった。



 事前の打ち合わせで、カイは「記憶喪失のところをアオに保護された。」と言う事にした。

その方が今後、「カイの事を知っている人を見つける」と言う理由で色々と動きやすい。


 元々記憶喪失の人間が、記憶喪失のフリをする事になるとは…


 なんだか可笑しくなり、カイは一人で小さく笑った。

そんなカイをアオは不思議そうに眺めた。



 フォレス王国はフランス語と英語が混ざった様な言語を使う。

 アオはマータルで生まれ育った記憶があるので問題ない。


カイには、記憶がないが、何故か言語が理解できた。


 そう言えば、ゲンとスーパーに行った時も、外国人に話しかけられた。

何語かわからなかったが、自然と理解できたし、その国の言葉を話せた。


「覚えてないだけで海外で暮らしていた事があるのだろう。」程度に考えていたのだが、そういう事でも無いかもしれない。



 リアス式海岸のマータルに近い入江から、坂道を上り丘にでる。

この浜はアオが子供の頃に遊んだ秘密の場所だ。


丘を少し歩くとアオの家が見えた。


 アリオエの家は畜産農家で、海を望む丘の上に牧場がある。


ドアをノックすると、すぐにアオの両親が扉をあけた。

帰りの遅い娘が心配で、気にかけていたらしい。


「こんな遅くまで何してたの?」


アオの頬に母親が優しく手をやる。

 背がすらりと高く、黒い髪を頭の後ろで丸く束ねている。口角の上がった口元はアオそっくりだった。


「そちらさんは?」


アオの父は、更に背が高い。

 アオの目元は父親譲りなのだろう。緑がった瞳はアオにそっくりだった。


 夜遅く、娘に連れられてきた見ず知らずの男。

しかも記憶喪失だという。

 怪しくない筈ないのだが、アオの両親は優しく向かい入れた。

 人が良い事もあるが、アリオエを信用しているのだろう。

 カイの少年に近い容姿も、警戒心を緩めるのに少しは役立ったかもしれない。


アオの母は日本人の様な出たちで、父は欧米系だった。


 フォレス王国は、国の成り立ちから多様な人種が暮らしている。

 かつてこのこの大陸には幾つもの民族が、それぞれの小さな国を持ち暮らしていた。


 南の端の小国の王、ロッゾ帝国の初代皇帝、マハール・ロッゾが皇帝を名乗り、周辺国家を侵略していった。

 国や村を追われた人々は南の森に逃げ込み、そこでをお越し、防衛の為の軍を設立した。

 防衛軍はロッゾと勇敢に渡りあい、遂には進行を食い止めた。

 防衛軍のリーダーが、村長となり、村は街へ、街は国へと発展していった。

それが今のフォレス王国である。



「お腹減ってない?

何か準備するわね。」


アオのは母は、カイを気遣い優しく声をかけた。


「ママ、私も手伝う。」


 そう言うとアオとアオの母は、キッチンへと消えていった。


 アオの父は、カイのためにリビングにある三人掛けの木製のベンチにクッションを敷き詰めてくれている。


「暖炉を消すと、夜はまだ冷える事があるからなぁ。

ブラケット置いとくから、先に使いなさい。」


 アオの父は自室からから大判のブラケットを持って来てくれた。



 暫くすると、目の前に塩漬け豚肉入りの蕪と人参のスープがおかれた。


 野菜の甘みと塩漬けの豚から出る旨みが溶けあっている。

シンプルだが、だからこそホッとする味だった。


「何も覚えてないの…

それは、さぞ心細いわね。」


「何か、手が掛かりが見つかるまで、ここに居てくれて良いから。」


 スープを飲むカイに、アオの両親は優しく声をかける。

アオを見ると少し困った様に笑っている。

人の良い両親を騙すのが心苦しい様だ。


 スープを飲み終えるまで、4人は他愛のない話をした。

だんだんとスープを飲むペースは遅くなった。


 スープを飲み終わると、カイはアオの父が用意してくれた寝床に横になった。


 ベンチベッドの寝心地は、お世辞にも良いものでは無かったが、カイはその夜とても深く眠りについた。


久しぶりにゲンの夢をみた。




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