永遠少年⑧
鎧塚について調査すると長谷川に約束させ、カイはビルを後にした。
カイは、世界管理機構に世話になる事をやめようかとも思ったが、長谷川から「大学を卒業するまでは居てはどうか。」と説得された。
少し迷ったが、そうする事にした。
入学して早々、半年の休学だ。前期の単位は絶望的で卒業には少なくても五年はかかる。
バイトをしながら大学に通うのは中々大変そうだ。
ジパングでの「危険手当て」とでも思っておこう。
スマホが鳴った。
久しぶりに感じる電気的な振動に、少し驚く。
電話は宏美からだった。
「おっ!やっとでよったよ!
連絡して全然繋がらんし、どないしたんよ!」
しまった。
ジパングでは通信機器が使用できなかった。
ゲンが心配しない様にと、世界管理機構に偽装工作として定期的にメールを入れてもらっていたが、宏美の事は失念していた。
「悪い!ちょっと色々あったんだ。」
言い訳を考えるが、あまり良い案が浮かばない。
しどろもどろ会話していると、何故か最終的に「大阪で飯食うぞ」と言う事になった。
三日後の土曜日、カイは大阪で久しぶりに宏美と会っていた。
お好み焼きを食べながら、互いの近況を報告し合う。
とは言え、ジパングへ行った事を言える訳もなく、この三日間で考えぬいた言い訳を披露する。
「へぇー。
山岳の救助の長期バイトとかあるんやなぁ。
そやたしよぉ、そこでスマホ無くして連絡とれやんとか、アホらよ?」
宏美はカイの作り話を、呆れる程すんなりと受け入れた。
あまりにも疑わない宏美をみて「お前がアホやよ」と心の中で呟く。
まぁ、鬼狩りで山の中を駆け回ったのだ。
あながち嘘では無い……と思う。
宏美は体育大学で剣道に励み、体は一回り程大きくなっていた。
もう高校の制服を着ても似合わないだろう。
それに比べてカイは、未だどこと無く、少年の面影を残していた。
制服を着て高校生の中に混じったら、誰も気が付かないだろう。
「カイさぁ、アポトキ…何たらって薬でも飲んでんの?」
少し大阪弁に染まり始めた口調で、宏美は笑いながらカイをイジる。
昔、宏美に勧められて読んだ探偵漫画[作者曰く恋愛漫画]を思い出した。
「いゃ!誰が少年探偵だ!」
カイがツッコミ、二人は笑いあった。
高校生の頃、他に何人かの友人も交え、こんな風に良くふざけあった。
あの頃のノリに直ぐにもどれる。
改めて思う。良い友達だ。
お好み焼きをたらふく食べ、カラオケに行って夜通し歌った。
明け方カラオケを出て、始発まで時間があったので、宏美と二人で牛丼を食べた。
宏美が朝から特盛を頼むので、カイもそれに倣って特盛りを注文したが、半分ほど食べたところで後悔した。
大阪駅の御堂筋口の改札で「またな」と別れる。
「また明日」と言いかけて、咳払いをして飲み込んだ。
カイは鈍行を乗り継いで、東京まで帰る事にした。
およそ9時間から10時間の道程だ。
なんと無く、時間をたっぷり掛けて帰りたかった。




