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ホエイルホエル  作者: たろ
二幕

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永遠少年⑦


ジパングから日本に帰ると、季節はもう秋になっていた。


日本に帰るなり、カイは鎧塚に面会を求めた。


 今回の件で、鎧塚に問いたださないといけない事が幾つもある。


 世界管理機構のオフィスは、国会議事堂のすぐ近くに立つ30階建ての建物だ。


ビル一棟全てが世界管理機構の所有だった。



カイは1階の受付で、鎧塚に会いたい旨を伝えた。


 ここには定期検診で何度も訪れている。

受付にいる職員も見知った顔だ。


 取り継いでもらうまでの間、エントランスのソファで待つ。

 道路に面した一面はガラス張りになっており、外の景色が見えた。

 エントランスは、落ち着いたモダン調で統一されている。

 カイが今座っているソファも、ル・コルビジェのLCチェアシリーズで一脚、百数十万はくだらない。


流石、複数の国家が共同で設立した機関だ。

財源もそれなりに有るのだろう。


カイへの待遇も厚遇されている。


 東京での生活にかかる費用は全額、世界管理機構持ちで、今回のジパング訪問の報酬は、月給と別に2000万円支給されるとの事だった。


大金ではあるが、命をかけるには安い額にも思える。


 そういえば、吉本は医療機関メーカーの営業を辞めて世界管理機構に就職する事になったそうだ。

 ジパングへの定期的な長期出張はあるものの、給料は今の二倍程。

万が一死亡しても遺族年金が支給され、家族の生活は保証されるのだと言う。


転職先には申し分ないのだろう。


 30分程経った頃、エントランス現れたのは鎧塚ではなく、長谷川だった。


「伺いましたよ。

カイ君、大活躍でしたね。」


長谷川は笑顔でカイの肩をポンポンと叩く。


 唐沢から報告が上がっているのだろう。

長谷川はジパングでの出来事を把握していた。


「申し訳ない。

鎧塚室長は今、長期出張中で、会う事が出来ないんだ。

代わりに私が、要件を伺いますよ。」


カイは15階にある長谷川のオフィスに通された。


 いつも定期検診で訪れる検査用のフロアは10階なので、それより上の階へ訪れるのは初めてだった。


 いつもはエレベーターにかざすカードキーを受付で受け取けとっていたが、長谷川のオフィスのある15階に行くには更に指紋認証が必要なのだそうだ。


長谷川のオフィスは12畳ほどの個室だった。


こちらも落ち着いた黒系統で統一されている。


 長谷川はオフィス内に置かれたドイツ製のコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。

 ゴボッという後、機械からシュコーと言う音ともに蒸気が噴き出て、黒に近い深い茶色の液体がカップに注がれる。


深い苦味と少しの酸味、最後にほのかに甘味がのこった。


 多分、美味しい部類なのだが、出来れば砂糖とミルクを入れたい。

 長谷川は「コーヒーはブラックで楽しんでください」と、どちらも出してはくれなかった。

趣味嗜好の押し付けもどうかと思う。


 長谷川は20代前半に見えるが、個人のオフィスを割り振られている所をみると、エリートの部類なのだろう。


長谷川はコーヒーを飲み、満足そうに頷いた。


この癖を見るたびに、鎧塚の部下なのだな。と思う。


 コーヒーを飲みながら「ジパングはどうでしたか?」と聞いてくるので、カイはジパングでのあらましを話す事にした。


 将軍の前で披露した剣技は、ジパングの誰もが目指す、奥義の領域だった。


刀が主軸を成す世界で、それは何よりも尊まれた。


 将軍や大老など一部の侍達には、カイたちが外の世界から来た事は唐沢から説明された。

 自衛隊との一件があり、初めは警戒されたものの、カイの剣術に惚れ込んだ将軍の一声で話はまとまった。


 カイと吉本、山田も途中から合流し、鬼狩りも数ヶ月の間に幾度か行った。


 そう言えば、二回目の鬼狩りの時だったか、唐沢から「断空をなるべく使わないで欲しい」と指示があった。

「奥義を安売りしてる様に見える。」と言う事だった。


 特に反論もなかったので従う事にしたが、あれは何だったのだろう。


 それでも、カイの剣技は他の侍たちより洗練されていたので、同行した侍からは、よく手合わせをせがまれた。


 4ヶ月ほど経った頃、世界管理機構の意向で、カイたちは日本へ帰還する事が決まった。


 鬼を絶滅させてしまうとジパングの生態系が壊れる可能性があるため、そこまで積極的には行わない方針が打ち出されたそうだ。


 カイと吉本は日本に戻る事になり、山田は暫くジパングの高嶺家で過ごす事になった。


山田はジパング駐在の扱いになるそうだ。


 将軍は別れを惜しみ、いつでも自由な訪問をしてないと、特別手形を発行してくれた。


ジパングでの活動は上々だった。


 あらかたジパングでの活動を伝えた後、カイは話を核心へ移した。

『鬼来香』あれを唐沢に持した鎧塚の意図は何だったのか。


しかも唐沢を騙してまで。


長谷川は黙り少し思案した後、ポツリと呟く。


「…レセプター?」


カイにはその言葉の意味は分からなかった。



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