二人の天才
前回のあらすじ
・問いに正解したと思ったら襲われた
・某修行僧みたいなゴリラ
side.ケート
さっき放った『プチファイア』は、多数の魔法を一発に凝縮して放ったもの。
ゆえに、一番最初の火魔法だといえど、威力はなかなかにえげつないモノになっていたはず。
それが……たった一発の魔法に打ち負けた。
「やっぱり【ゴリラの枷】は、ただの重しってわけじゃ無さそうだにゃー」
釣りゴリラの時に、セツナが気配察知に失敗していたのも含めて考えると……重量的な意味での重しだけじゃなく、ステータス自体が下げられてると思った方が良いかもしれない。
ゲーム内では、完全にマスクデータになってるけど、データとして存在している以上、スキルという形で制限を掛けることも可能なはず。
「ま、要は……魔法の威力が落とされちゃってるってことだにゃー」
そう結論つけてしまえば、考えるのは単純なこと。
相手の魔法の弱点を突くか、無理矢理貫くか、だ。
「僧ゴリは火を噴いてくるわけだし、順当に対処するなら【水魔法】なんだけど……威力減衰の状態だと、蒸発させられて終了な可能性もなきにしもあらず、にゃ」
そうなると、手はおのずと決まってくる。
ま、天才の実力……見せてやろうかにゃー。
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side.セツナ
近づくほどに激しくなる猛攻を、弾き、叩き、落とし、払い……正面で対処すること早数分。
ケートはまだかなー?
さすがに疲れてきちゃったんだけど。
『“――――よもや、これほど粘るとは”』
「まあねー。本音を言えば、もっと暴れたいけど……体が追いついてこないんだよねー」
頭は動くし、僧ゴリの動きに対して“どう動けばいいか”は分かる。
でも、そのイメージに体が追い付いてこない。
まるで、意識と身体の間に、なにかひとつ余計なものが挟まってるような……そんな感じだ。
いつもだったらこの程度、受けたり弾いたり払ったりすることもなく、スッと入ってしまえるのに、今はその少しがめちゃくちゃ遠い。
余裕で払えるタイミングで動かした手が、ヒットする直前でようやく間に合うのだ。
あー、もー、一秒だけでも隙間ができればー。
『“――どうやら汝を倒すには、手が足りぬようだ”』
「両手両足の四つくらいなら、見えなくても読めるからねー」
『“ならば、手を増やすとしよう――”』
言うが早いか、両手両足以外の場所から妙な気配を感じ、左腕を振るうと……その腕は虚空でナニかを弾いた。
『“――ほう、我が『見えざるゴリラの手』を防ぐか”』
「いやいや、不可視の腕はちょーっと卑怯じゃない?」
『“勝利のため、持つ力を十全に使うことは、なにも間違いではない”』
「まあそうなんだけどさー」
やっぱり修行僧っていうより、破壊僧だなー。
というか、【見切り】をつけといたらよかったかも。
レベルアップの良い機会になりそうだし。
「まーでも、一本増えた程度なら問題ないねー」
『“案ずるな。我が腕は百八まであるゆえな”』
「それはちょっと……卑怯じゃない?」
『“御仏は全てを許してくださる。もちろん、汝らの罪でさえも。ゆえに――ここで潰えるがよい。『見えざる全てのゴリラの手』”』
なにも見えないのに、四方八方から明確な殺意が突き刺さる。
うーわー、これは卑怯が過ぎるー。
「ところがどっこい、ケートちゃんでっす! 『ロックショット』超連打ァァァァアアァァァ!」
『“ヌゥッ!? まさか、全ての腕を破壊するとは……”』
しかしそんな危機を、空気を読まないケートが横から割り込んで全部をぶっ壊した!
僧ゴリにちょっと同情しそうだけど……ケートだしねー。
「そしてその隙に……『剛脚』震、『双撞掌』!」
『“ヌオォ!?”』
「顔の横、失礼しまーす、にゃ。一点集中『ロックショット』!」
あぶなっ!?
私の顔ギリギリを通さないでくれる!?
『“グヌヌ……! 調子に乗るなよ、キサマラァ! 『ゴリファイア』!”』
「げっ、待避待避ー」
「天才にまかせんしゃい! 即席一発、ぶっつけ本番魔法連結! 『メテオスマッシャー』!」
『“貴様の魔法など、我が技の敵では、”』
勝ち誇った僧ゴリとケートの間で、ゴリラ型の火の玉と、炎を纏った岩が激突!
なんか、どこかのハリウ○ド映画みたいだねー。
「どっせーい!」
『“な、なにィ!? 我が『ゴリファイア』が打ち負けただと!?”』
僧ゴリの顔が、驚きと驚愕の色に染まる。
まあ、さっきは簡単に打ち勝ってたからねー。
「セツナー、やっちゃってー!」
「はーい」
私のやる気のない声に僧ゴリが反応する……よりも早く、私は『剛脚』で地面を蹴り、飛ぶように間合いを詰める。
そして、僧ゴリの横をすり抜けつつ、刃を閃かせた。
「我流――『刹霞斬』」
『“グッ……見事、なり……”』
地面へと落ちた僧ゴリの言葉を背中で聞きながら、私はただ静かに刃を仕舞う。
怒りや憎しみ、ムカつきとか、殴りたい気持ちとかそういったものを全て終わらせるように、ただ静かに終った。
「……うん。また、つまらぬものを斬ってしまったねー」
「冗談通じない石頭ゴリラだったからにゃー。つまんないゴリラだったけど、良い相手だったぜ」
「だねー」
思ったように斬れないし、取り繕うなら無手の方が良いんだけど……。
それでも、やっぱり私には、刀が一番しっくりくるかな。
なんてことを思いつつ、にししと笑うケートに呆れながら、私は刀の柄頭を撫でた。
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名前:セツナ
所持金:99,920リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム(使用不可):ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』(所持スキル:【切断Lv.3】【刺突Lv.3】【神速Lv.2】【蠍蟲拳Lv.3】)
装着スキル:【ゴリラ語理解】【ゴリラの枷(現在7枠)】【八極拳Lv.6】【蹴撃Lv.12】
未装着スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】
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名前:ケート
装着スキル:【ゴリラ語理解】【ゴリラの枷(現在7枠)】【火魔法】【土魔法】
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