火を噴いて、手足が伸びる
前回のあらすじ
・崖の上のゴリラ
・ゴリラが脳内で話しかけてきた
『“――人の子よ。汝らは何を越えて此処に来た”』
三度目の挑戦に、僧ゴリは変わらず同じ問いを投げてくる。
何度問われても、この威圧感あるテレパシーには慣れそうにないなー。
「人間ってのは、そんな簡単に今までを越えられるものじゃないにゃ。引きずって、立ち止まって、振り返って、そうしてなんとかその場を後にする。それを繰り返して、私は今ここにいるんだぜ」
『“――いまだ何も越えていないと、それが答えか”』
「そもそも、越える必要なんてないしねー。旅は道連れって言うし」
「だにゃー。辛いこととか、悲しいこととか……そういうものも、そのまま辛いことや悲しいことでいいのにゃ。変わることは勇気がいるし大事だけど、変わらないことが決して悪なわけじゃない」
私とケートの関係だって、変わったことと変わらないことがあって、きっとお互いにそれが良くて、一緒にいる。
この先変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。
でも、変わったからって、何かを越えたわけじゃないから。
『“――なるほど。答えない、それが汝らの答えか”』
「正確には、“それを答えられる人間なんていない”にゃ」
『“――面白い。よもや私が、新しき価値観と出会うことになるとは。……どうやら汝らは、この先へと進むに値するもののようだ”』
お、話が早い?
もしかして戦わないとか……?
えー、あの僧ゴリには落とし穴スポーンの借りを返したいんだけどなー。
『“次の島への扉を開く……前に、汝らには我が弟子を一人再起不能にされた借りを返さねばならない”』
「……弟子かにゃー?」
「そんなのいたっけ?」
『修行のため、この崖を登っていた者だ。よもや忘れたわけではあるまい』
あー、あのゴリラかー。
驚いて落ちていったわけだし、私達が直接手を下したってわけじゃないんだけども。
でも、行き場を無くしかけてたやる気が、ニートにならないのは大歓迎だー!
「……無言で笑うのはやめるにゃ。鬼が裸足で逃げ出すにゃ」
「えー。普通の女子高生だよー?」
「黙らっしゃい、この悪鬼羅刹」
むう。
黙れと言われたので黙って口を尖らせると、少し離れた位置に浮いていた僧ゴリが、わなわなと震え始めた。
どしたの?
同じ姿勢だから、足でも痺れた?
『“――ただのニンゲンではないと思っていたが、悪鬼であったか。ならば我も全力を以て臨まねばなるまい!”』
「……あちらさん、本気にしちゃってるよー? どうすんの?」
「いにゃー、軽いジョークのつもりだったんだけどにゃー。まーじで冗談が通じないタイプだにゃー」
「そんなの見た目からして分かってることじゃん?」
さっきもそれで、落とし穴からのウォータースライダースポーンだったわけだし。
……思い出したら、またしてもムカムカがふつふつしてきたぞー。
「ま、こっちもあっちもやる気みたいだし、ちょうど良いんじゃにゃいかにゃー? てなわけで……一極集中『フレアバーン』」
『“――ヌゥッ!?”』
まるで睨み合うように殺意を滾らせていた僧ゴリ……を嘲笑うかのように地面から立った火柱。
赤を越えて青へ、そして白い光になった炎は、数メートル離れているはずの私のところにまで、その熱を感じさせた。
うん、これもう原型とどめてないんじゃないかなー?
「ふんっ、正義は必ず勝つ、にゃ!」
「どうみても最悪の作戦でしょ、これ」
「今の時代は、スマートさが大事だぜ。余計なことに余計なコストを払わないようにするのさ」
「ケートの顔で言われると、絶妙にイラッとするなー」
「どゆことにゃ!?」
どうもこうも、そのままだと思う。
というか炎は弱まってきたけど、中の僧ゴリから全然気配を感じないんだよねー。
死んじゃったのかなー、私まだ一発も殴ってないんだけど。
「むしろ、あれで生きてた方がおかし――ッ!」
余裕そうににゃはにゃは言ってたケートの目の前で、伸びてきた手を叩き落とす。
「どうやら、おかしいゴリラみたいだねー」
「だ、だにゃ。助かったぜー」
『“――無の概念を持つ我にとって、先ほどの炎など児戯に過ぎぬ。よもや、あの程度で我を下したと思ってはおるまいな?”』
「だってさ、ケート」
「ふっふっふ、売られた喧嘩は買うのが、淑女の定めなんだぜー。指先ひとつでダウンさせてやるにゃ」
どこの世紀末淑女よ、それ。
でも、あの一撃で死んでくれなくて良かったー。
「とりあえず、次は私の番ね?」
「えー、仕方ないにゃー」
言いながら一歩後ろに退がるケートに笑いつつ、「それじゃ、いってくるー」と、まるで散歩にでも出掛けるような軽さで踏み込んで――
「――『剛脚』」
『“ヌゥッ!?”』
宙に浮く僧ゴリの頭めがけて、軽く一発蹴り込む。
良い感じに打てたと思うんだけど……手応え的にはガードされた感じだなー。
感触が鉄みたいだったし。
『“――――ゴリファイア”』
「にゃッ、『アースウォール』!」
なんてことを考えながら、私が体勢を戻している内にも状況は動き、お返しとばかりに口から打ち出されたゴリラ型の火の球を、ケートが魔法で防いでくれる。
宙に浮いて、手足が伸びて、火を噴く修行僧……ある意味想像通りの攻撃だなー。
「まだまだ行くぜー、一点突破『プチファイア』!」
守りから即座に攻めに転じるケート。
しかし――その炎は、ゴリラ型の火の球によってかき消された。
『“この程度、我がゴリファイアの敵ではない”』
「私の魔法が打ち負けたにゃー!?」
驚きつつも、ケートは飛んできたゴリラ型の火の球を、横に飛ぶようにして避ける。
ふむふむ、見た目重視な感じだけど、威力はめちゃくちゃ高そうだなー。
当たった地面が焦げちゃってるし。
「ケートー。大丈夫ー?」
「ういー。膝すりむいた程度だぜー」
「そっかー」
立ち上がりつつ、ぺしぺしと服の汚れを落とすケートを横目に、私は僧ゴリとの間合いを詰めていく。
とりあえず私がすることは……時間稼ぎかなー?
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名前:セツナ
所持金:99,920リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム(使用不可):ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』(所持スキル:【切断Lv.3】【刺突Lv.3】【神速Lv.2】【蠍蟲拳Lv.3】)
装着スキル:【ゴリラ語理解】【ゴリラの枷(現在7枠)】【八極拳Lv.5】【蹴撃Lv.11】
未装着スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】
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名前:ケート
装着スキル:【ゴリラ語理解】【ゴリラの枷(現在7枠)】【火魔法】【土魔法】
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